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凄まじいボデー変形量・果たして衝突速度は?

2021-04-28 | 事故と事件
 写真は今から20年ほど前に他の車両の調査で立ち寄った修理工場兼レッカー業の車両置場にて、目にして驚き観察した大変形した事故車両だ。

 車両は2代目レジェンド(KA9)だと後部のエンブレムなどから判じたが、正にリジットバリア(固定壁)へのフルラップ(前面全体)衝突した状態だ。

 この様な車体変形量と有効衝突速度には、車両毎のバラツキはあるものの、ある程度の相関関係があることが知られている。ここで、有効衝突速度と記したのは、対相手物の重量により同じ衝突速度でも、衝突後の速度変化は異なることから、有効衝突速度という云い方をする。つまり、もっと噛み砕いて述べれば、例えば車両の形を模したダンボールで作ったダミー(重量10kg以下)とぶつかった場合と、頑丈な固定壁相当(重量は無限大と等価)では、まったく同一の速度でぶつかっても、衝突後の速度変化はまるで異なることが直感的にも判るだろう。先に記した10kg以下のダンボールだとすれば幾ら大きくても、跳ね飛ばすだけで、ほとんど速度変化しないと云うことだ。

 この有効衝突速度は、例えば同重量の車両正面衝突も対バリヤでも等価となる理屈となる。有効衝突速度のことを、対バリヤ換算速度という云い方をするのも、この理由から来ている。

 このことは、正面衝突(正確には1次元衝突)を考える場合、自車より軽いクルマとの場合は有利になり、自車より重いクルマの場合は不利に働くと云うことになる。自車より重いクルマとして、1トンの車重の自車が、相手が20トンの大型トラックと正面衝突した場合、例えば左方向へ向かっていた自車は、大型トラックに押し返されて右方向へ移動することにまでなる訳で、自車の衝突後の速度は、左方向を+と仮定すれば、右方向はーとなり、この+-の加算速度が衝突後の速度と、固定壁に衝突する場合より高くなる場合すらある。

 今回のレジェンドは、計測した訳ではないが、目視で全長が1mは短くなっている様にも見受けられる。また、車両の上部などを中心に考えると、1.5mくらいの変形を生じていると考えることもできる。

 ここで、ある資料(https://alfs-inc.com/ziko/koutu19.htm)によれば、正面衝突(=対バリア)を前提とすると、Xf=0.0076Ve(Xf:変形量、Ve:有効衝突速度)という近似式がある。この式に、車体変形量が1mと1.5mの場合をそれぞれ当てはめて見ると、Veはそれぞれ131km/h、197km/hとなる。幾ら何でも、197km/hは車両の限界性能を上廻るとも思えるが、少ない1m変形の場合の131km/hはあり得そうに思える。

 このクルマで、スピードメーター指針が110km/h付近を指していることだが、1974(昭和49)年から車両の保安基準(第46条第2項)として義務付けられたもので、日本で生産され国内で使用する車両について、普通乗用車で車速が100km/h(実速度では約105km/h)、軽自動車で80km/h(同:約85km/h)で設定され、速度超過をドライバーへ警告するために装着されていた。(俗に云うキンコンチャイム音)

 同保安基準は1986(昭和61)年3月に、この第46条第2項は項目そのものが削除された。だから、KA9だとキンコンチャイムは付いていないのかもしれないが、ワイヤーケーブル機械式スピードメーター内部の設計が旧型流用で。
105km/h位置で、スイッチ接点が作用することにより、メーター指針が戻らなくなる現象が生じているのかもしれない。

 なお、もし、私がこの車両の損害調査を担当したとしたら、損害額は一目で全損と判じられるが、もっと重大なことを主因に置いた事故現場貯砂などを継続したことだろう。すなわち、130km/hを越えるかもしれない速度で、現車を見た限りステアリングもほぼ直視位置であることも含め、自殺という疑念が拭えないと云うことだ。対物保険など他人への賠償保険はともかく、自殺(つまり恋いとなると、車両保険、搭乗者場外保険、当時はなかったが現在だと人身賠償保険など、自らを保護する目的の保険は免責となるからだ。









【写真の観察説明】
01 車両後方から見てレジェンド(KA9型)と判る写真。 左右ともRrフェンダーまでが変形している。

02 左前方から見ると車種は判別困難なほどの大きな潰れ量だ。

03 右前方より見た写真だが、やはり潰れ量が大き過ぎて車種は判らない程だ。 車両前部の潰れが平面的であり、垂直なコンクリート壁へほぼ垂直に衝突したものと想定される変形だ。まるでフルラップバリヤテストの超高速版と云えるだろう。

04 左真横より見た写真。恐ろしい程車両の前部が潰れているのが判る。おそらく車両全長で1m以上は縮んでいるのではないのかとも想像される。 左右の潰れ量を観察すると、どちらも極めて大きな潰れ量だが、左側の方が若干大きい様にも観察される。

05 右横より見た写真。前方入力で、Rrドアまでが後方へ大きく移動しているのが観察される。

06 先の写真より近づいて写した写真。Frピラー、Frドア、センターピラーが波及損傷で後退している。それに伴い、ルーフの大変形やサイドシル部分も大きく変形しているのが観察される。右Frドアのアウターパネルが剥がされているが、たぶん乗員救出活動の際にドアをこじ開けたときのものだと想定される。

07 運転席ドアより内部を覗いた状態。ステアリングホイールは、救出時に外されたのだと想定される、ここまで運転席が圧縮されては幾らエアバックが作動しても効果は得られないだろう。

08 スピードメーター部のアップ写真。指針は110km/h近くを指していたが、衝突速度はおそらく、それ以上であったものと想像される。

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