クルマ関係の論評は、異論を感じることが正直多く、なるべく読まない様にはしているのだが、読んで大きな異論を生じたからには黙って折れない性格だからして、異論を表明するために書き留める。
この論者(吉川氏)は、純正ホイールはそれ程軽いものでなく、その理由として2つあるとし、ロードノイズの悪化と乗り心地の悪化だとしている。その理由として共振周波数云々を根拠としている訳ですが、大きな異論として感じざるを得ない。
確かに、純正ホイールが重いという傾向があるのは確かかもしれぬ。しかし、それは強度上の安全率を十分取ると云うのが理由だろうと思えている。その上で、その重いホイールとタイヤなどのバネ下重量とマッチングするバネ定数とかダンパー減衰力、ホイールトラベルなどのチューニングを行っていると判断している。
そもそも論を記せば、慣性の法則からも、バネ下が軽いほど、タイヤやホイールを含めたバネ下系は路面の凹凸に対しての追従性が上がり、端的に云えばロードホールディングが良いサスペンションになることは確かだろう。それにマッチングする先に述べたバネ下重量とマッチングするバネ定数とかダンパー減衰力、ホイールトラベルなどのチューニングを施せば、共振周波数などという問題はあったにしても、あくまで副次的な理由となり、無視しうるものだろうと思える。
もし、論者が述べる様に共振周波数からのロードノイズだとか乗り心地を向上させたいなら、バネ上の重郎増しを行い、もってその共振周波数を上げた方が余程効果があると考えるのが一般的な考え方だろうと思える。
論者は日産自動車で11年、操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当と記してありますが、ホントだろうかと疑念が湧いてくる論評と私は判断する。
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ばね下の軽量化は、クルマに悪影響って本当?
更新日:2020.01.09 新車・自動車ニュースのWEBマガジン CarMe[カーミー]
ばね下の軽量化を”正義”と考えている方は多くいます。昔から、「ばね下1kgの軽量化はばね上○kgの軽量化に相当する」などと言われてチューニングに励んできたのですが、じつはばね下の軽量化にはデメリットもあるのです。そこで今回は、ばね下の軽量化によるメリットとデメリットについて紹介します。文・吉川賢一
クルマの軽量化は、加速や燃費性能、ハンドリングの向上といったさまざまな面にメリットがあるのは間違いありません。そのため、低燃費を競う乗用車から、速さを求めるレーシングカーまで、どのメーカーも車両の軽量化に取り組んでいます。
車体剛性を落とさずに質量を減らすため、アルミを使った骨格構造を採用したり(新型NSXやアウディ、ジャガー等)、ルーフやエンジンフードの素材をカーボン(BMWやメルセデス等)にしたりと、ときにはコストをかけてでも質量を削ろうと、エンジニアたちは日々検討をしています。
なかでも「ばね下の質量」は、ないがしろにはできない要素です。”ばね下”とは、サスペンションがストロークする際に動く部分を指し、タイヤ、ホイール、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、ハブベアリングに、サスペンションアームやブレーキ配管の一部も含みます。その重さは、一般的なタイヤとホイールで、1組あたりおおよそ15kgほど(※225/55R17 スカイラインの場合)になります。
そのバネ下の軽量化でもっとも手軽な方法は、軽量なホイールに交換することです。そうすることで、1輪あたり約1〜2kgは削ることができるため、その効果はとても大きいものとなります。それならば、最初からメーカーが軽量なホイールにすればよいのでは?と思いますよね。
ところが、純正ホイールを持ったことがある方はご存知かもしれませんが、純正ホイールでそれほど軽いものはありません。なぜホイールを軽量化しないのでしょうか?
ホイールが単純に軽量化できない理由
メーカーが軽量なホイールを使わない理由は、大きく分けて2つあります。
まずひとつが、ロードノイズの悪化です。軽量ホイールに交換すると、路面からの衝撃や振動を減衰・吸収する性能が低下します。技術的には「ホイールの軽量化によって、ばね下の共振周波数が上がり、防振領域での振動遮断性が落ちる」といいます。
ロードノイズの改善には共振周波数を下げることが有効で、ばね下質量を重たく、かつタイヤの縦方向のばね定数を下げて柔らかくすることで一定の効果がみられます。
つまりホイール質量の軽量化は、ロードノイズ増大の原因になってしまいます。
もうひとつは、乗り心地の悪化です。それまで重たいホイールでタイヤをたわませて吸収していた路面の凹凸を、ホイールが軽くなることで拾いやすくなってしまいます。サスペンションが路面の凹凸を拾いやすくなると、ボディへ伝わる振動が増え、乗員の感じる乗り心地が悪化します。
それを避けるには、タイヤの縦ばね定数を低減したり、スプリングレートやショックアブソーバーの減衰特性などを見直すのですが、そうすると今度はハンドリングに悪影響が出てしまいます。
また、スプリングやショックアブソーバーの設定を変更すると、前述した共振周波数の観点からも余計な振動を伝達することになり、不快な乗り心地になります。
タイヤ&ホイールのインチアップをした際に乗り心地を維持するには、インチアップでタイヤの縦バネが硬くなったぶんだけホイール重量を増やす、そして固有振動数を揃える、というのがセオリー。乗り心地重視の高級車の大径ホイールが重たいのは、そういった理由があります。
軽量ホイールによって、加速性能やブレーキ性能が向上することは、直感的におわかりになるかもしれません。でもじつは、ロードノイズや乗り心地といった”快適性”を損なう可能性があるのです。
極端なばね下の軽量化をすると、クルマの性能バランスを崩すことになります。ホイール選びは、慎重にすることをおすすめします。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。
この論者(吉川氏)は、純正ホイールはそれ程軽いものでなく、その理由として2つあるとし、ロードノイズの悪化と乗り心地の悪化だとしている。その理由として共振周波数云々を根拠としている訳ですが、大きな異論として感じざるを得ない。
確かに、純正ホイールが重いという傾向があるのは確かかもしれぬ。しかし、それは強度上の安全率を十分取ると云うのが理由だろうと思えている。その上で、その重いホイールとタイヤなどのバネ下重量とマッチングするバネ定数とかダンパー減衰力、ホイールトラベルなどのチューニングを行っていると判断している。
そもそも論を記せば、慣性の法則からも、バネ下が軽いほど、タイヤやホイールを含めたバネ下系は路面の凹凸に対しての追従性が上がり、端的に云えばロードホールディングが良いサスペンションになることは確かだろう。それにマッチングする先に述べたバネ下重量とマッチングするバネ定数とかダンパー減衰力、ホイールトラベルなどのチューニングを施せば、共振周波数などという問題はあったにしても、あくまで副次的な理由となり、無視しうるものだろうと思える。
もし、論者が述べる様に共振周波数からのロードノイズだとか乗り心地を向上させたいなら、バネ上の重郎増しを行い、もってその共振周波数を上げた方が余程効果があると考えるのが一般的な考え方だろうと思える。
論者は日産自動車で11年、操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当と記してありますが、ホントだろうかと疑念が湧いてくる論評と私は判断する。
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ばね下の軽量化は、クルマに悪影響って本当?
更新日:2020.01.09 新車・自動車ニュースのWEBマガジン CarMe[カーミー]
ばね下の軽量化を”正義”と考えている方は多くいます。昔から、「ばね下1kgの軽量化はばね上○kgの軽量化に相当する」などと言われてチューニングに励んできたのですが、じつはばね下の軽量化にはデメリットもあるのです。そこで今回は、ばね下の軽量化によるメリットとデメリットについて紹介します。文・吉川賢一
クルマの軽量化は、加速や燃費性能、ハンドリングの向上といったさまざまな面にメリットがあるのは間違いありません。そのため、低燃費を競う乗用車から、速さを求めるレーシングカーまで、どのメーカーも車両の軽量化に取り組んでいます。
車体剛性を落とさずに質量を減らすため、アルミを使った骨格構造を採用したり(新型NSXやアウディ、ジャガー等)、ルーフやエンジンフードの素材をカーボン(BMWやメルセデス等)にしたりと、ときにはコストをかけてでも質量を削ろうと、エンジニアたちは日々検討をしています。
なかでも「ばね下の質量」は、ないがしろにはできない要素です。”ばね下”とは、サスペンションがストロークする際に動く部分を指し、タイヤ、ホイール、ブレーキキャリパー、ブレーキローター、ハブベアリングに、サスペンションアームやブレーキ配管の一部も含みます。その重さは、一般的なタイヤとホイールで、1組あたりおおよそ15kgほど(※225/55R17 スカイラインの場合)になります。
そのバネ下の軽量化でもっとも手軽な方法は、軽量なホイールに交換することです。そうすることで、1輪あたり約1〜2kgは削ることができるため、その効果はとても大きいものとなります。それならば、最初からメーカーが軽量なホイールにすればよいのでは?と思いますよね。
ところが、純正ホイールを持ったことがある方はご存知かもしれませんが、純正ホイールでそれほど軽いものはありません。なぜホイールを軽量化しないのでしょうか?
ホイールが単純に軽量化できない理由
メーカーが軽量なホイールを使わない理由は、大きく分けて2つあります。
まずひとつが、ロードノイズの悪化です。軽量ホイールに交換すると、路面からの衝撃や振動を減衰・吸収する性能が低下します。技術的には「ホイールの軽量化によって、ばね下の共振周波数が上がり、防振領域での振動遮断性が落ちる」といいます。
ロードノイズの改善には共振周波数を下げることが有効で、ばね下質量を重たく、かつタイヤの縦方向のばね定数を下げて柔らかくすることで一定の効果がみられます。
つまりホイール質量の軽量化は、ロードノイズ増大の原因になってしまいます。
もうひとつは、乗り心地の悪化です。それまで重たいホイールでタイヤをたわませて吸収していた路面の凹凸を、ホイールが軽くなることで拾いやすくなってしまいます。サスペンションが路面の凹凸を拾いやすくなると、ボディへ伝わる振動が増え、乗員の感じる乗り心地が悪化します。
それを避けるには、タイヤの縦ばね定数を低減したり、スプリングレートやショックアブソーバーの減衰特性などを見直すのですが、そうすると今度はハンドリングに悪影響が出てしまいます。
また、スプリングやショックアブソーバーの設定を変更すると、前述した共振周波数の観点からも余計な振動を伝達することになり、不快な乗り心地になります。
タイヤ&ホイールのインチアップをした際に乗り心地を維持するには、インチアップでタイヤの縦バネが硬くなったぶんだけホイール重量を増やす、そして固有振動数を揃える、というのがセオリー。乗り心地重視の高級車の大径ホイールが重たいのは、そういった理由があります。
軽量ホイールによって、加速性能やブレーキ性能が向上することは、直感的におわかりになるかもしれません。でもじつは、ロードノイズや乗り心地といった”快適性”を損なう可能性があるのです。
極端なばね下の軽量化をすると、クルマの性能バランスを崩すことになります。ホイール選びは、慎重にすることをおすすめします。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。