テスラモデルY・ダイキャストフロントコンストラクション修理事例
テスラはEVとASV(自動運転)だけの戦略だと思いがちだが、実のところもう一つのプロダクション(量産)技術として、耐規模ダイキャスト成型部品を使うということが知られてきて来ており、従前のブログ記事でも取り上げている。
この大規模ダイキャスト部品の使用は、最初の使用者はモデルYのリヤコンストラクションから導入し始めた様だが、既にモデルYではフロントコンストラクションにも取り入れられている。将来的な構想としては、車両のセンターキャビン部まで含め、車両1台丸ごとダイキャストの方向を目指している様だ。
この大物ダイキャスト製品を作るダイキャストマシンはイタリアのIDRAというメーカーのものの様だが、モデルYの前後コンストラクションでも8千トンクラスのダイキャストマシンが使用されている様だ。
このダイキャストマシンの8千とかいう値は、金型(ダイ)は固定型と可動型の2つを強く付き合わせる加圧力を示すものだ。つまり、加圧力が高いマシンほど、より大きな面積のダイを使用することができる。おそらく、このモデルY用の8千トンクラスで、縦横2m程度のダイ締め力を持つのだろうと思う。
ダイキャストでは、このダイを加圧密着した状態で、その間に形成される空間(キャビティと呼ぶ)にキャステングする溶湯(アルミ)をプランジャーという高圧注入機で一気に押し込むことで、極めて短時間での鋳造ができる。つまり、時間当りのラニングタイムが圧縮されることにより、ダイを作るコストは要するが、数を作るマスプロダクションではコストを大幅に圧縮できると云うことになる。
だだし、鉄の鋳造品でもそうだが、プレス成型品なら衝突などによるエネルギー吸収で、曲げとか座屈という変形となり、その程度によればフレーム修正機で修正する余地もあるのだが、ダイキャスト(鋳造も同じ)では、割れとかクラックが入ることで修正できる余地は極端に少なくなるのだろう。
今回Youtubeで見つけたモデルYのフロント損傷の例だが、フロントダイキャスト先端部のおそらく左右フロントフェンダーサイドサポートBKTが付く部分のダイキャストリブが割損していると云うもので、その割損残部も残っており、これを仮固定しつつ、TIG溶接で接合していると云うものだ。この部位は、大して大きな強度部位でもなく、見栄えは悪くなるかもしれないが、残骸がなければ、適当な板厚のアルミ板をボルトナットで固定しても修理はできそうにも感じられる。ただし。今回のTIG溶接での修理も含め、車両メーカーとしては、正規の修理としては認めないという姿勢になるのだろうと予想できる。しかし、たったこれだけのダイキャストの一部割損で、フロントコンストラクションを交換するとなると、ほとんど現実に修理が費用的に成立しない状態になってしまうとも思える。
また、今回の場合は、比較的強度の要求が低い部位だから、この様な修理をしても、さほど問題にはならないだろうが、これがフロントタイヤに大入力をうけ、サスペンションアームの付くピボット部位とか、サイドフレームに大きくクラックが入っている様な場合は、溶接修理で復元下としても、到底強度の保障はできかねるだろう。
現在のところ、ボデー骨格にこの様な大規模大型のダイキャスト部品を使い出したのはテスラだけだが、今後のASVでのレベル4以上で自動運転範囲が広がると共に、スタビリティがどうの、ハンドリングがどうのという車両への要求は低下しつつ、車両メーカーはひたすらASVなどの電子装置へのコストは注ぎ込むが、ボデーを如何に安く作るかという方向に進むことは十分予見できると感じるところだ。
動画切り取り解説
①モデルYダイキャストフロントコンストラクション
②割損部の反対側 アルミプレス成型のフェンダーBKTが付く基の部位
③割損部仮止め
④TIG溶接途上
オリジナル動画 Youtube
Tesla Model Y GIGACast Repair
519Kustomz 2023/01/02
https://www.youtube.com/watch?v=09AyyT8N4FY&list=LL&index=3&t=79s
テスラはEVとASV(自動運転)だけの戦略だと思いがちだが、実のところもう一つのプロダクション(量産)技術として、耐規模ダイキャスト成型部品を使うということが知られてきて来ており、従前のブログ記事でも取り上げている。
この大規模ダイキャスト部品の使用は、最初の使用者はモデルYのリヤコンストラクションから導入し始めた様だが、既にモデルYではフロントコンストラクションにも取り入れられている。将来的な構想としては、車両のセンターキャビン部まで含め、車両1台丸ごとダイキャストの方向を目指している様だ。
この大物ダイキャスト製品を作るダイキャストマシンはイタリアのIDRAというメーカーのものの様だが、モデルYの前後コンストラクションでも8千トンクラスのダイキャストマシンが使用されている様だ。
このダイキャストマシンの8千とかいう値は、金型(ダイ)は固定型と可動型の2つを強く付き合わせる加圧力を示すものだ。つまり、加圧力が高いマシンほど、より大きな面積のダイを使用することができる。おそらく、このモデルY用の8千トンクラスで、縦横2m程度のダイ締め力を持つのだろうと思う。
ダイキャストでは、このダイを加圧密着した状態で、その間に形成される空間(キャビティと呼ぶ)にキャステングする溶湯(アルミ)をプランジャーという高圧注入機で一気に押し込むことで、極めて短時間での鋳造ができる。つまり、時間当りのラニングタイムが圧縮されることにより、ダイを作るコストは要するが、数を作るマスプロダクションではコストを大幅に圧縮できると云うことになる。
だだし、鉄の鋳造品でもそうだが、プレス成型品なら衝突などによるエネルギー吸収で、曲げとか座屈という変形となり、その程度によればフレーム修正機で修正する余地もあるのだが、ダイキャスト(鋳造も同じ)では、割れとかクラックが入ることで修正できる余地は極端に少なくなるのだろう。
今回Youtubeで見つけたモデルYのフロント損傷の例だが、フロントダイキャスト先端部のおそらく左右フロントフェンダーサイドサポートBKTが付く部分のダイキャストリブが割損していると云うもので、その割損残部も残っており、これを仮固定しつつ、TIG溶接で接合していると云うものだ。この部位は、大して大きな強度部位でもなく、見栄えは悪くなるかもしれないが、残骸がなければ、適当な板厚のアルミ板をボルトナットで固定しても修理はできそうにも感じられる。ただし。今回のTIG溶接での修理も含め、車両メーカーとしては、正規の修理としては認めないという姿勢になるのだろうと予想できる。しかし、たったこれだけのダイキャストの一部割損で、フロントコンストラクションを交換するとなると、ほとんど現実に修理が費用的に成立しない状態になってしまうとも思える。
また、今回の場合は、比較的強度の要求が低い部位だから、この様な修理をしても、さほど問題にはならないだろうが、これがフロントタイヤに大入力をうけ、サスペンションアームの付くピボット部位とか、サイドフレームに大きくクラックが入っている様な場合は、溶接修理で復元下としても、到底強度の保障はできかねるだろう。
現在のところ、ボデー骨格にこの様な大規模大型のダイキャスト部品を使い出したのはテスラだけだが、今後のASVでのレベル4以上で自動運転範囲が広がると共に、スタビリティがどうの、ハンドリングがどうのという車両への要求は低下しつつ、車両メーカーはひたすらASVなどの電子装置へのコストは注ぎ込むが、ボデーを如何に安く作るかという方向に進むことは十分予見できると感じるところだ。
動画切り取り解説
①モデルYダイキャストフロントコンストラクション
②割損部の反対側 アルミプレス成型のフェンダーBKTが付く基の部位
③割損部仮止め
④TIG溶接途上
オリジナル動画 Youtube
Tesla Model Y GIGACast Repair
519Kustomz 2023/01/02
https://www.youtube.com/watch?v=09AyyT8N4FY&list=LL&index=3&t=79s