私の思いと技術的覚え書き

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国産中型航空機の開発頓挫(MRJ改めスペースジェット)

2021-12-13 | コラム
国産中型航空機の開発頓挫(MRJ改めスペースジェット)
 これは、純国産中型ジェット旅客機の開発が三菱重工が中心になって、2008年以来進められており、初飛行を2015年に果たし、軍用機等ではこれで国内の型式証明(TC)を取得できれば既に運行できるのだが、世界に売り込む民間旅客機となると米FAAの型式認証が必須の条件になる。

 ということで、試作機4機ほどを2016年から米国に持ち込み連日FAAの型式認証への挑戦が始まるが、まず機体コックピットから最後尾まで貫通するワイヤリング(配線束)の貫通経路を機内での爆発事故での生存性要件から全面変更するなど、合計900もの設計変更がなされ、その改修機体ができるまで、まず3年の遅延を要した。その後も、新型コロナの世界的蔓延などもあり、テストスケジュールも延期されつつ、改修やテスト遅延は開発費をどんどん高めていった。

 そして、2020年5月、世界的なコロナの蔓延は、近未来の航空機需要にも陰りを生んだこともあるのだろう。開発を中止とは明示していないが、大幅な開発体制の縮小(量産型機の生産中止)を明らかにしている。なお、この時点でも当然FAA型式認証は取れていない。

 こうして眺めて見ると、三菱他関わる国内企業は、米国のFAA要件だとかとにかくスキル経験不足が多大にあったことが判る。確かに、今でもボイーイングやエアバスなどから、サプライヤーの供給企業としての実力は認められているのが日本の航空産業だが、自ら航空機を立案設計しつつまとめ上げるというスキルに欠落したものがあったのは大きな要因だろう。端的に云えば、なめていたとしか思えない。

 それと、ウワサでは、自動車などの基幹産業で敗北し、残された米国メインの航空産業を守ろう、自動車の失敗は繰り返さないという米国の心理が深層に存在することはある程度ある様に思える。しかし、そういう問題だけでなく、強い協力を得なければならないボーイングなどに対し、それを取り込むべきロビー活動が十分ではなかったという側面がありそうに思えてならない。なお、そういうものを政治家とか官僚に求めるだけムダと云うもので、これはある意味人垂らしの才ある強力な人物と、開発費とは別途となる必用経費としての金を用意していなかったというくそ真面目な進め方にそもそも大きな抜けがあった様に想像できるが如何だろうか。

 このことは、昨日記した「トヨトミの野望」で、当時のサラリーマン社長たる奥田碩が、北米での残された高付加価値なクルマ市場としてピックアップトラックでの米国工場立ち上げに際し、天賦の才ある男を送り込み、潤沢な活動資金を与えることで、米国のナショナリズム精神の発露を未然に摘み取っていたというところに感心するところだ。これは正に、諜報の上を行く思想操作と云えるべき思想だろう。つまり、敗戦後の日本は現在まで、さんざん米国からこれをやられ続けている訳だが、その逆を指揮できる大物がいないというのが日本の致命的な欠陥の様に思える。しかし、日本の歴史を考えてみれば、そういう人物はほとんど思い当たらないので、そこが日本人たる最大ウィークポイントなのかもしれない。



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