【書評】ブラックボックスの謎/大韓航空機撃墜の真実
図書館を物色して借り出したのが表題の本で、執筆者はイジベスチャ(ロシアの新聞社)でアンドレイ・イーレシュという記者が元本執筆者の様で、もちろん読んだのは日本語翻訳本だ。
大韓航空機撃墜事件は1983年9月1日に発生している。今(2022年)から39年前の事件だから、拙人は未だ20代も中頃だと思うが、事故後程なくして事故があったという報道を聴き、「酷いことしやがる」と思うものの、それ以来大した感心もなく過ごしていた。それが、一体どういう経緯で事件は起こったのだろう、ブラックボックス公開で何が解明されたのかという好奇心から借り出したのだった。
本は読み込むと云うより速読なんて云う次元よりさらに早く、目に付いたところだけを数行づつ読み流すという読み方で、断続的に正味6時間程で読み終わった。正直、原著が悪いのか翻訳者が悪いのか判らないが、言い回しとか表現がどうもぎこちないという感はあれど、ドキュメンタリーとしては、なかなか引き込むものがあると感じた。
本の内容としては、ロシア側の状況などが結構知れて感心する。この本が出版されたのは、ソ連崩壊(1991/12)後のエリツィン時代だから、それ以前のゴルバチョフの進めたペレストロイカ(改革)&グラスノスチ(情報公開)という民主化へ向けた流れの中で、徐々に大韓航空機撃墜の真実が判ってくる経緯が、時代の流れと共に理解できるところは面白い。
それと、ゴルバチョフのことを根っからの民主主義者かと云えば、この本では事故発生時のゴルバチョフは未だ大統領以前だが高位職にあり、撃墜事件の国家としての対外的なスピーチ対応の意見を述べる地位にいたことが判る。そういう中において、ゴルバチョフは、事件を「我々の行動は合法的なものと確信している。なにしろ当該機は領空侵犯を2時間近くも続けたのだから、重大な国際協定違反であり、このことを声明の中ではっきり述べねばならない。この際、黙殺は通用しない。攻勢を掛けねばならない」と、著者はゴルバチョフが攻撃的な姿勢を表していた点は驚きであると記しているが拙人も驚きを思う。
この本を読み、合わせてNetで大韓航空機撃墜事件wikiで事件のあらましをを眺めると、全死亡者269名だが、日本人も28名乗っていたことを認識した。wikiでの説明によれば、この大韓航空機は米アラスカ州アンカレッジから韓国ソウルへ向かう007便(B747型)だが、当時の乗員乗客数は269名だが、内日本人は28名乗っていたと知る。この理由として、大韓航空の運賃が安価なことから日本でも成田経由より、居住地が西日本の方にとって、ソウル経由で日本に帰って来るメリットがあったと記されており納得できる。
それと、当初から何故民間旅客機なのに撃墜までするに至るのかというところだが、どうも本の内容からは、既に領空侵犯を相当許してしまったソ連側の手落ちから、そこに焦りという思いが生じ、司令部から撃墜命令(熱線追尾ミサイルの発射)が下されたというところに驚きを感じた。普通なら、相手の状態を視認しつつ民間旅客機だと知れば、威嚇射撃とか無線での着陸誘導を尽くして、それから従わない場合に、初めて撃墜ということになるのだろう。このことと、大韓航空機が何故正規のルートから5、60kmも西へズレた航路を飛んでいたのかというところが謎なのだが、これについて、米国とか日本の自衛隊とかもモニタリングしていたはずだが、何故警告しなかったという点も謎なのだ。
ただ、大韓航空機とソ連は、この日本海撃墜以前の5年前にも、大韓航空機銃撃事件(1978/4/20)というのが、ソ連の際西側で起きていたことを知る。この事件では、司令部からの撃墜命令に対して、ソ連パイロットは威嚇機銃射撃をしつつミサイル攻撃し、大韓航空機はムルマンスク近くの湖に不時着したという。機体はB707で乗員乗客109名で、死亡2、負傷12とwikiには記されている。この時のソ連の対応は、それなりに冷静さが感じられるのだが、1983年の領空侵犯では、既に大幅な領空侵犯を許してしまったという焦りとか、侵犯機を米軍RC135(米軍4発偵察機)と思い込んだ可能性も高いが、撃墜後ソ連は事故機のブラックボックスとか散乱物や遺体を回収しており、明らかに大韓航空機という認識はしているのだが、先に記したゴルバチョフ発言にある様な強気な態度は崩せないのは、ソ連でなくても国家の威信があれば何処の国でも同じだろう。
最後に翻訳者があとがきに、1992年頃のエリツィン時代のことだからその様な想像になったのだろうが、新生ロシアの民主化により、日本の謎たる野坂参三(初代日本共産党議長)、瀬島龍三(大本営参謀・伊藤忠商事会長)という故人の真実も明るみに出るのだろうと記してある。爾来30年を経るが、未だそういう暴露は成されていない。そして、現在、ロシアはかつての仲間たるウクライナと地獄の戦争を始めたのだが、米国親分の西側一体の包囲網で世界を敵に回した形にセットアップされた様に見える。
#大韓航空機撃墜事件 #イジベスチャ
図書館を物色して借り出したのが表題の本で、執筆者はイジベスチャ(ロシアの新聞社)でアンドレイ・イーレシュという記者が元本執筆者の様で、もちろん読んだのは日本語翻訳本だ。
大韓航空機撃墜事件は1983年9月1日に発生している。今(2022年)から39年前の事件だから、拙人は未だ20代も中頃だと思うが、事故後程なくして事故があったという報道を聴き、「酷いことしやがる」と思うものの、それ以来大した感心もなく過ごしていた。それが、一体どういう経緯で事件は起こったのだろう、ブラックボックス公開で何が解明されたのかという好奇心から借り出したのだった。
本は読み込むと云うより速読なんて云う次元よりさらに早く、目に付いたところだけを数行づつ読み流すという読み方で、断続的に正味6時間程で読み終わった。正直、原著が悪いのか翻訳者が悪いのか判らないが、言い回しとか表現がどうもぎこちないという感はあれど、ドキュメンタリーとしては、なかなか引き込むものがあると感じた。
本の内容としては、ロシア側の状況などが結構知れて感心する。この本が出版されたのは、ソ連崩壊(1991/12)後のエリツィン時代だから、それ以前のゴルバチョフの進めたペレストロイカ(改革)&グラスノスチ(情報公開)という民主化へ向けた流れの中で、徐々に大韓航空機撃墜の真実が判ってくる経緯が、時代の流れと共に理解できるところは面白い。
それと、ゴルバチョフのことを根っからの民主主義者かと云えば、この本では事故発生時のゴルバチョフは未だ大統領以前だが高位職にあり、撃墜事件の国家としての対外的なスピーチ対応の意見を述べる地位にいたことが判る。そういう中において、ゴルバチョフは、事件を「我々の行動は合法的なものと確信している。なにしろ当該機は領空侵犯を2時間近くも続けたのだから、重大な国際協定違反であり、このことを声明の中ではっきり述べねばならない。この際、黙殺は通用しない。攻勢を掛けねばならない」と、著者はゴルバチョフが攻撃的な姿勢を表していた点は驚きであると記しているが拙人も驚きを思う。
この本を読み、合わせてNetで大韓航空機撃墜事件wikiで事件のあらましをを眺めると、全死亡者269名だが、日本人も28名乗っていたことを認識した。wikiでの説明によれば、この大韓航空機は米アラスカ州アンカレッジから韓国ソウルへ向かう007便(B747型)だが、当時の乗員乗客数は269名だが、内日本人は28名乗っていたと知る。この理由として、大韓航空の運賃が安価なことから日本でも成田経由より、居住地が西日本の方にとって、ソウル経由で日本に帰って来るメリットがあったと記されており納得できる。
それと、当初から何故民間旅客機なのに撃墜までするに至るのかというところだが、どうも本の内容からは、既に領空侵犯を相当許してしまったソ連側の手落ちから、そこに焦りという思いが生じ、司令部から撃墜命令(熱線追尾ミサイルの発射)が下されたというところに驚きを感じた。普通なら、相手の状態を視認しつつ民間旅客機だと知れば、威嚇射撃とか無線での着陸誘導を尽くして、それから従わない場合に、初めて撃墜ということになるのだろう。このことと、大韓航空機が何故正規のルートから5、60kmも西へズレた航路を飛んでいたのかというところが謎なのだが、これについて、米国とか日本の自衛隊とかもモニタリングしていたはずだが、何故警告しなかったという点も謎なのだ。
ただ、大韓航空機とソ連は、この日本海撃墜以前の5年前にも、大韓航空機銃撃事件(1978/4/20)というのが、ソ連の際西側で起きていたことを知る。この事件では、司令部からの撃墜命令に対して、ソ連パイロットは威嚇機銃射撃をしつつミサイル攻撃し、大韓航空機はムルマンスク近くの湖に不時着したという。機体はB707で乗員乗客109名で、死亡2、負傷12とwikiには記されている。この時のソ連の対応は、それなりに冷静さが感じられるのだが、1983年の領空侵犯では、既に大幅な領空侵犯を許してしまったという焦りとか、侵犯機を米軍RC135(米軍4発偵察機)と思い込んだ可能性も高いが、撃墜後ソ連は事故機のブラックボックスとか散乱物や遺体を回収しており、明らかに大韓航空機という認識はしているのだが、先に記したゴルバチョフ発言にある様な強気な態度は崩せないのは、ソ連でなくても国家の威信があれば何処の国でも同じだろう。
最後に翻訳者があとがきに、1992年頃のエリツィン時代のことだからその様な想像になったのだろうが、新生ロシアの民主化により、日本の謎たる野坂参三(初代日本共産党議長)、瀬島龍三(大本営参謀・伊藤忠商事会長)という故人の真実も明るみに出るのだろうと記してある。爾来30年を経るが、未だそういう暴露は成されていない。そして、現在、ロシアはかつての仲間たるウクライナと地獄の戦争を始めたのだが、米国親分の西側一体の包囲網で世界を敵に回した形にセットアップされた様に見える。
#大韓航空機撃墜事件 #イジベスチャ