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米テキサスでのテスラモデルS運転者不在の死亡事故

2021-04-21 | 事故と事件
 4/17(現地)の夜遅くに、米テキサス州の道路で、カーブで曲がりきれなかったと想像されるテスラ・モデルSが路外の立木に衝突し炎上する事故が生じた。この事故で2名の乗員が死亡したが、驚いたことに、1人は助手席に、もう一人は後部席に乗っていて、運転席は無人だったと報じられていることがある。

 同テスラモデルSはオートパイロットという自動運転システムが搭載された車両だが、メーカーの説明では「すべての道路でオートパイロットが有効な完全自動運転車ではなく、走行中は運転者の監視と適宜の操作が要求されるものである」と公言している。

 自動運転については新しい未だ過渡的な技術で、未だ様々な事態における法整備が整わない状態にある。そんな中、国交省では自動運転のレベルを0~5まで区分している。つまり、0は一切自動運転に関わる機能を持たない従来の車両で、レベルが上がる都度、より高度な道路条件などに対応した自動運転に対応するものとして、最終的にはレベル5で、何ら限定条件なしですべての道路環境に対応できる自動運転が達成できるとしている。

 ここで、レベル2とレベル3の間に、大きなシステム上の差異があることに留意が必要だろう。すなわち、レベル2までは、あくまで運転者の運転操作が前提で、特定の限定操作を自動化した運転支援というべきものだ。それがレベル3となると、ある程度の道路環境等の前提条件はあるものの、運転者主体の運転支援ではなく、システムが主体となり自動運転を可能にするもので、もしシステムが対応不可能な状態に陥ると、システムが運転者の適切な操作を要求すると云うことだ。

 ところで、現状で販売されている最新型新車での自動運転は、何とかレベル3を達成している状態だと判断できるが、極一部はレベル4に近いものも販売開始されつつあると考えてよい様だ。なお、テスラモデルSは、同一モデルでも、適宜のシステムバージョンアップが繰り返され、レベル3相当の自動運転を達成していると考えてよいだろう。

 ところで、先にテスラ社の公言を記したが、あくまでも完全自動運転車ではなく、走行中は運転者の監視と介入を要する場合もあるとしている点が注目点だろう。

 今回の事故を受けて、テスラ社の株価が3.4%程下がったと云うことだが、これは既存大手自動車メーカーが本気でテスラを上廻る自動運転車を開発販売し始めているという世情から、テスラ社の将来性に懸念を生んだという側面も考えられるが、今回事故の影響も無視できないものがあると私見としては考えている。

 つまり、この事故は、ほぼ確実に遺族などが提起する訴訟沙汰になるだろうと云うことが予想されるからである。米国は、日本と異なり、弁護士の数が著しく多く、もしかすると既に、特定の弁護士が遺族に接し、訴訟への導きを得ようと活動し始めているのかもしれないと想像する。

 この事故は、何故運転者が乗車していなかったのかとか、本件事故が自動運転(オートパイロット)中に生じたのかも、未だ不明な点は多い。しかし、路外に飛び出し立木に衝突し発火し、2名死亡という事故を生じたという内容からは、もし自動運転が解除された状態なら、そこまでの速度が出せようもないとも思える。その前提で、テスラ社の公言を前提とすれば、自動運転の許容範囲を超えた場合に、運転者の介入を促す動作を行う訳だが、そもそも運転者不在という運転環境を許すというシステム上の欠陥があったという趣旨での主張を行うことは、私が直ぐ思うくらいだから、米国の知恵者弁護士の中に幾らも表れて当然だろう。

 この件に関連して、別のNet記事だが、以下の様な記述を見つけた。

 [テスラの技術者はオートパイロットの動作中に運転手が注意をそらさないように、ハンドルに手をおいていることを確認したり、運転手が路上に視線を向けているかを確認するセンサーの搭載を検討してきました。しかし2018年、イーロン・マスクは、それをコスト面の理由などから却下したのです。この判断が事故を招いたとは言いませんが、この件に触れないわけにはいかないのでは…。]

 つまり、少なくとも運転席にシステムの許容範囲を超えた場合に、運転者に対する介入を促すのがレベル3とか2の機能だから、そもそも運転席が無人の状態でオートパイロットが運転継続されたことを持って、システム欠陥の主張を行うということは十分考えられ、この訴訟にテスラは負け、大幅なシステムの改善を求められ、その対策費や賠償金などで、経営上の問題に発展することまでを株主の一部は予想したとは、私の個人的感想だ。

 なお、本事故については、NHTSA(米運輸省相当)は、改めて調査を行うと明言しており、この調査結果次第では、テスラ社に対し、リコールなど改善命令が出されることになるかもしれない。もし、そうなると、訴訟の帰結は歴然と決まるといってよいだろう。




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