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水素燃焼エンジンのこと

2021-04-22 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 下記に転載した「トヨタが水素エンジンを開発しレースに出場」という内容だが、水素を燃料にすると云うと、燃料電池車(FCV)を連想する訳だが、ここで云うのは、内燃機関でガソリンの代わりに水素(ハイドロジェン)を燃焼させて走行するというものだ。このハイドロジェン内燃機関の研究は、既に40年近く前から各自動車メーカーで技術研究がなされ、特に注目を集めたのがロータリーエンジンとハイドロジェンを組み合わせたものであったという記憶がある。

 と云うこともあり、水素エンジンの可能性に関心を抱き、各種特性をちょっと調べてみた結果を書き留めてみたい。

 図(写真1)に、水素を内燃機関に使用する場合に関わりがありそうな物性をまとめてみた。
 まず、燃料としての熱量を見ると、水素が約142に対してガソリンは45だから、約3倍の熱量を持つから、凄いものだと思うが、これは重量比のことだ。何と云っても、水素は地球上でもっとも体積当たり重量(密度)がもっとも小さな物質である。つまり体積比としての熱量(通常エネルギー密度と呼ぶ)を比べると、大気圧状態では、ガソリンの2900分の1しかない。水素を強力に圧縮し液化すると、エネルギー密度は800倍ほど高まるが、それでもガソリンの4分の1程度しかないのだ。これでも、現在のバッテリーのエネルギー密度よりは、まだましというものなのだが・・・。(写真2参照)

 つまり水素燃焼内燃機関は、エネルギー密度が小さいために、余程巨大な水素燃料タンクを持たない限り、走行可能距離が小さくなることは必然となる。しかも、液化水素でなく高圧水素だとすると、そもそも燃料タンクを大型化する程、その高圧に耐えるためにタンクは巨大化してしまうだろう。また、巨大な水素容量を持つほど、その圧力と相まって万一の危険へのリスクは高まると云えるだろう。

 だいたい、水素が燃料として使われるている代表的なものとして、アポロとかスペースシャトルの宇宙ロケットがあるが、燃料注入は発射の作業の一環として、直前というべき時に行われる。これも、極めて大容量の純水素と純酸素(共に液体)を加圧充填した状態が極めて危険で、その状態での放置をなるべく短時間にして発射するという理由だろう。

 と云うことなのだが、トヨタのレース出場は24hレースと云うことだが、燃料補給の機会がガソリンエンジンより、より多頻度となる不利は承知の上でのことなのだろう。



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トヨタ、水素エンジンを開発。レース参戦
4/22(木) 19:04配信 Impress Watch
 トヨタ自動車は、「水素エンジン」の技術開発を発表した。
 カローラ スポーツをベースとした競技車両に水素エンジンを搭載。5月21日から開催される「スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」に「ORC ROOKIE Racing」の参戦車両として投入する。
 エンジンは総排気量1,618ccの直列3気筒インタークーラーターボで、使用燃料が圧縮気体水素となる。
 トヨタの「MIRAI」などに使用している燃料電池(FC)が、水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生、モーターを駆動させるのに対し、水素エンジンは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させて動力を発生させる。微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時にCO2は発生しない。
 水素エンジンにおける水素の燃焼の速さは、ガソリンよりも速く、応答性が良いという。また、優れた環境性能と同時に、音や振動を含めた「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性があるという。
 今回の水素エンジンには、GRヤリスなど、モータースポーツで鍛えた技術も活用。安全性については、燃料電池車の開発やMIRAIなどで積み重ねてきた技術・ノウハウを活用していく。なお、競技中には福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で製造された水素を使用する。
 トヨタのカーボンニュートラルへの実現に向けた取り組みの一環。FCVなどFC製品の普及による水素活用の促進を目指す取り組みに加え、水素エンジン技術をモータースポーツで鍛えることで、より良い水素社会の実現を目指すという。

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