前にも記したホンダの技術者である「中村良夫」氏は、ホンダ退職後も在職中の人脈を生かし、ジャーナリストとして深くレース活動にも関わり続け、数々のエッセイを残しておられます。モーターファン(三栄書房の月刊誌でしたが惜しくも廃刊)で、「くるまよこんにちは」等のコラムを長く書き続けてきました。そんな、中村良夫氏のコラムを改めて読んで、中村氏の本田宗一郎氏(以下宗一郎氏と記す)の回想記を見ました。
中村氏も、宗一郎氏を人生で強烈なインパクを与えてくれた3人の内の一人だと記します。宗一郎氏と直接触れあった数々の方々が、宗一郎氏は社長でありオヤジであると記しています。そして、宗一郎氏から。怒鳴り叱られたり、ある時は殴られたりしたことを記しています。中村氏も宗一郎氏から「おまえなんかオランち(会社のこと)にゃいらねぇや、トットと辞めてしまえ!」(浜松弁ですかね?)と怒鳴りつけられたと記しています。しかし、それから2時間もして宗一郎氏に会うと、本人(中村氏)は、どうしようかと思い避けようとしたが、宗一郎氏は先程のことは意も掛けておらず「おい、あのバルブ径はどうだった?」等とおっしゃったと。
さて、この様な部下を、怒鳴りつけ、辞めてしまえと吠え、時には殴り付ける様な経営者が、何で「オヤジ」と慕われるのか。私毎ですが、私の約50年の人生を振りかえって、やはり「オヤジ」であったと感じる上司の方が2名がおられます。その私の経験から云えば、「オヤジ」と慕うこれらの方々には、怒鳴り付けられまではしませんでしたが、自らの心に強烈に響く「お叱かりを受けた」ことが回想されます。そして、単に叱られるのとは裏腹に、私を「人間として信用してくれ」仕事をまかせてくれました。また、その心根に人としての「真の優しさ」が伝わって来ました。もっといえば、どうにもならない悩みを聞いてくれ、決して解決策までは見出すまでは至りませんが「その悩みを一緒に悩んでくれ、その気持を幾らかでも共有」して戴いた」こともあると感じました。この私にとっての「オヤジ」も、既に一人は冥界に旅立たれ、もう一人の方もリタイアして相当な月日が流れました。今後残された私の人生で、「オヤジ」と感じられる方に出会えるか、はなはだ難しいことだと感じます。
ところで、私が触れあう企業経営者やリーダー達の方々のことを記してみます。まず、大企業の経営者や高名なリーダーの方達のことすが、先日も記しましたが「言行不一致」の方々や、リーダーとして責務を放棄した「無責任」な方々が目に付きます。
また、日頃の業務で触れあう「中小零細」企業の経営者やリーダー達のことをですが、大企業に劣らず私にインパクトを与えてくれる経営者の方々がいらっしゃいます。一方、個人事業主であるからと云う宿命はあるのですが、多く見られる経営者像として、決して部下に「権限委譲」せず、すべてを自らが仕切ろうとする経営者が多く見られます。部下を信じず、真の人間同士として認め合わない方々です。これでは、企業としての発展はないし、この様な経営者は、人を使わず一人で業務を進めるべき方だと感じます。こんなことを記しながら、私が経営者やリーダーになったら、後者のタイプとなると思いますが。生意気を記しました。