私の思いと技術的覚え書き

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R56前期バルブタイミングの狂い多発のこと

2017-03-11 | BMWミニ
 この問題は過去に何度か記してきた。これは、BMWミニ(R56系)の前期型(N14およびN12エンジン)で多発している問題であり、クーパーS(N14)の一部車体番号のみ、メーカーサービスキャンペーンとして対応している。しかし、それ以外のN14エンジンやターボなしN12エンジンでも多く見られる現象だ。

 現象は、ある瞬間(エンジン始動のクランキング時や加速からの反転減速時など)を切っ掛けにして、エンジンストールするか、エンジンが不調になり、以後は始動不能もしくは始動はしても低速不良となる現象を生じるものであり、原因はバルブタイミングの大幅な狂い、もしくはタイミングチェーンがスプロッケットから外れているというものだ。

 類似の問題は、過去のタイミングベルト方式で、稀に生じることがあった記憶がある。しかし、チェーン方式で張り不良(もしくはチェーン伸び)によるガラ音が生じるのは判るが、それが高じてスプロケットとチェーンのコマズレまでを起こすというものは、あまり経験したことはなかった。しかし、R56前期のN14およびN12は、直接現認したものだけでも10例はあり、潜在的には相当多くの故障が生じていることが伺われる。しかも、サービスキャンペーンで対応する車体番号の事例では、チェーンを張るテンショナーのスプリング加圧力が低いものだった様だが、正規の加圧力のテンショナー付き車でも生じているし、チェーン機構の配置など設計的な要因に記するのだろうと想像している。そして、ここまで多発すれば、国産車であればユーザーの情報や相談から、国土交通省がメーカーに問診しリコールとして対応ということになると思うのだが、輸入車の場合はメーカー直とはならず、インポーターたる日本法人を経由してメーカー間接的に伝わるという具合で、リコールされぬまま、ユーザーは数十万の費用を投じて直すか乗り替えを行っているのだろう。なお、同現象は走行距離が過走行だから生じるものではないし、ディーラーが説明するオイルメンテ不良によるスラッジの多さとも無関係に生じるものである。

 さて、本件エンジンのバルブタイミングの点検について記してみる。従来だと、No1シリンダー圧縮上死点で行うのが一般的セオリーだったが、このクルマ(BMW)は異なる。1番から4番までのシリンダーが水平位置(TDCから90°ズレた位置)において、クランク後部のサービスホールにクランクロックピンを挿入することで行う。具体的は、1、2番シリンダーに同一長の割り箸を入れておき、頭が揃う位置とし、そこからゆっくり前後回転させてクランクロックピンを勘合させる。なお、4サイクルだから2回転に一度の燃焼だから、IN、EXのカムシャフト軸上のメーカー記号の打刻がエンジン上方にあるかを確認する。ない場合は、クランクロックを外しクランクを360°廻して、カムシャフト上の打刻文字を上にし、再度ロックピンを挿入する。

 このクランクロック位置にて、IN、EX各カムシャフト後部の二面幅がエンジンブロック垂直であればバルブタイミングはOKとなる。バルタイの狂ったクルマは、正規の位置を0°として。-30°程度(飛び越しているので遅れる)以上も狂っていることも珍しくない。IN、EX共狂いが生じているクルマもあるが、どちらかと言えばIN側の狂いが大きめの場合が多いだろう。

 このエンジンはエンジン上部から、クランクスプロッケットや樹脂製のチェーンガイド、テンショナなどすべて取替が行える。スプロッケット固定ボルトを弛め、カム後部の二面幅27mmのナット部を廻し、正規の位置にカムタイミング合わせる。テンショナは当然正規の取り付け状態とする。

その他
 このクルマ(最近は限らずかもしれぬが・・・)は、クランクプーリー、クランクスプロッケット、カムのスプロッケットはキー勘合でなく、ボルトによる締め付け力だけで位置が固定されている。従って、クランクプーリーオイルシールからオイル漏れで「シール交換なんて楽なもん」よと、クランクロックもしないでプーリーセットボルトをインパクトで弛めた瞬間、バルブタイミングはズレる。そして、「あれーエンジン掛かりが悪くなったがどうしてかなー?」と悩んでる整備屋さんもいるんじゃないかと思う。




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