私の思いと技術的覚え書き

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電気機関車動輪・すぐり入りラバーブッシュ

2020-05-27 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 写真はだいぶ以前に写した電気機関車(たぶんEF65)の動輪部です。
 動輪の右後ろにオレンジの網状ネットが付いている部分が駆動モーターで、むき出しの小径ピニオンが半分程度見えます。このピニオンは、動輪内側に直結した大径スパーギヤーと噛み合っていて、モーター回転を減速して、トルクを増加させて駆動する訳です。これはないねん機関のスターターモーターとフライホイール外周のリングギヤの関係と同じ、極シンプルなものです。

 この写真で注目は、動輪内周部に合計8ケのラバーブッシュが使用されているところです。そして、ラバーブッシュ部を観察すると、すぐりが駆動軸に対しラジアル(放射)方向にセットされていることが判るでしょう。

 この様なラバーブッシュというのは、クルマのサスペンションやエンジンマウントインシュレーターなど、各種使用されています。特にサスペンションのラバーブッシュには、この動輪のブッシュと同様のすぐりを入れたものを見る機会は多くあります。

 このすぐりを入れる目的ですが、すぐりの方向には可動し易くしている訳です。サスペンションですと、タイヤの内外には硬く、すぐりの入った前後には柔らかくという様な工夫を凝らしている訳です。つまり、内外を硬くするのはコーナーリングで踏ん張るキャンバー剛性を高め、前後で柔らかくするのは凹凸路面でのハーシュネスを向上させるのが目的です。

 さて、今回の動輪のブッシュすぐりは何の目的か? 設計者に聞いて確かめた訳ではありませんが、ラジアル方向に柔らかくしていると云うことは、動輪を上下に動き易くしている訳で、設置性を向上させ持って空転を防止したいがためでしょう。なお、電車系の動輪で、この様なブッシュが装着されているのは見たことがありません。

 なお、これはかなり古い、いわゆるタップ制御という変圧トランスから、分岐線を電圧に応じて取り出し、それを大型リレーで切り替えつつ駆動力の調整を運手者が行うものです。現在はVVVFというパワー半導体を利用して、連続可変で電圧と周波数を変えて制御していますし、クルマで云うところの空転を検出して出力制御するトラクションコントロールや、制動時の空転を検出して制動力を制御するABS相当のことが電車でも行われていると聞きます。それでも、高負荷と大出力が要求される、電気機関車では今でも同様ブッシュは使われていそうに思えます。


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