私の思いと技術的覚え書き

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ATMの多段化を考える

2011-08-22 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 ATMと云っても銀行の現金自動支払機でなく、クルマのオートマチック・トランスミッションのことです。私がクルマに乗り始めた数十年前には、ATMの採用車は少なく、それも3段変速がいいところ、やっと3速+OD付き(オーバードライブ付き、つまり4速)が生まれた頃でした。それが、今や乗用車のオートマ比率は90%を越えるでしょうし、4速どころか5速が当たり前、最新型では7速とか8速といった多段化が進んでいるようです。

 マニュアルミッションも含め、トランスミッションの多段化は、受け持ち速度領域を重ね合わせる、つまりクロスさせ、加速時に上位段に変速した際のエンジン回転低下を少なくし、加速性を向上させるのが主目的と思います。これは、ATMでも同様ですが、オートマの場合はそれに加え、低段ギヤの減速比を高め、その代わりとしてトルクコンバーターのストールトルク比を低められるメリットがあるのだろうと想像できます。

 ATMに使用されるトルクコンバーターは、流体継手ですが、トルクの変換効果を併せ持ちます。このトルクの変換効果(増大比)は出力軸を固定して入力軸を回転させたとき最大となります。トルクコンバーターの設計によって、ストールトルク比5.0などというものもあり、この場合はトランスミッションが不要にでき、鉄道車両や建設用車両などには採用例がある様です。

 しかし、クルマ様としては、その様な高いストールトルク比のトルクコンバーターが使われることはありません.。これは高いストールトルク比=伝達損失の発生が大であり、ロスとしては油温を上昇させる熱損失となってしまうからです。この様な意味で、ATMの多段化により低速ギヤの減速比を大きくした分、ストールトルク比を低下させ燃費効率の向上を狙っているものと思います。

 もう一つは、ロックアップ領域の拡大にあるのだと想像されます。現在のATMはエンジンと同様にECUで制御されていますが、昔のトランスミッション内での独立した油圧制御時代の末期頃からトルクコンバーターを直結できるロックアップクラッチが採用され初めました。これにより、トルクコンバーターの宿命として存在した伝達ロスを解消できる訳ですが、全ての速度域でロックアップできる訳ではありません。そこで、様々な条件によりロックアップ領域が拡大できる様に制御していますが、多段化により、その余地は拡大すると想像されます。

 なお、レクサスISFに採用された8速ATMでは、1速を除いた全段で全域ロックアップされる様ですが、これは大排気量エンジンとスポーツ指向の車両故に採用されたものでしょう。



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