私の思いと技術的覚え書き

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VANOSトラブル・・・その原因探究

2016-10-22 | 車両修理関連
 VANOSとはBMW社で呼べれるエンジン吸排気バルブ可変位相機構のことで、トヨタのVVTと同様の機構であることは知識のある方ならご存じのところだろう。この様な機構は、BMWやトヨタに限らず、現代のツインカム4弁エンジンであれば、ほとんど一般化したとも感じるまでに普及している。これにより、本来DOHCが持っていた高速高出力に加え、中低速トルクの増加やアイドルの低回転安定化等、広いパワーバンドを生み出せるから、デジタルクルマでは極一般化しているメカだ。

 さて、今回経験したクルマ、BMW116i車(型式:GH-UF16)は、エンジン始動不良、そして始動しても低速回転のバラツキやアイドルの不安定等を生じているというものだった。いわゆるタイミングベルト方式のカムシャフト駆動では、稀に歯付きベルトのコマを乗り越えるジャンピングからバルブタイミングが狂うことにより、先の不具合と類似の現象が生じることが知られている。しかし、今回のクルマはベルトでなくチェーン駆動だし、そういうことは考え難いなと思いつつ原因を探ったのだ。なお、チェーン駆動でも、コマの飛び越えは現実として生じる場合があり、例えばBMWミニ・R56の前期型エンジンでは多発する欠陥エンジンであり、今まで何度現実を見知りつつ、修正してきたか判らない程多いのである。

 今回の不具合は、バルブの可変位相機構(VANOS)を駆動する油圧ソレノイドを外して点検してみると、ソレノイド流路に設けられた網目に多量の異物(オイルスラッジ)がこびり付いているのが確認されたのだ。つまりオイルの流量不足により、位相角に狂いが生じたと判断された。なお、このクルマのヘッドカバーを開けて眺めると、多量のオイルスラッジが堆積しており、オイル交換の大幅な遅延にその原因があったことが推察できる。ただ、幸いに感じたのは各カム山にキズ付きや摩耗も観察されず、綺麗な状態であり、完全回復とまでは行かなくても、ある程度の希望は持てそうだと判断されたことだ。

 そこで、できる範囲でスラッジの除去(ヘッド上面とカバー内面程度の範囲であるが)を行い、エンジンオイルのフラッシングとオイルフィルター交換を複数回実施した。そしてオイルとフィルターの取替を行い、念のため、例のVANOSソレノイドを外した状態でエンジン始動し、オイルを噴き出させることでVANOSオイル流路の洗浄と、当然VANOSソレノイドも洗浄し、組み付けた。

 その結果は、始動性OK、アイドル安定OK、高速回転も問題なし、その他異音も感ぜられず良好な結果となった。ただ、長時間(数時間以上)停止後のエンジン始動時、極短時間(数秒)のガラガラとチェーンの駆動音が生じる。たぶんチェーンが伸びて来ており、テンショナーの油圧が上がるまでの僅かな時間にガラ音を生じているものと思われる。

 今回のトラブルは、バルブ位相可変機構の動作不良であり、いわゆるバルブオーバーラップ(吸排気バルブが同時に開いている状態)が、高回転では広く低回転時は狭くなるべきを、低回転でも高速用のタイミングとなってしまっていたことによると想像されるのだ。

追記
 BMW車ではかなり以前からだったと思うが、適正な純正オイルを使用する前提で、約25千キロ毎(実際にはその間の燃料噴射時間を積算しており変動する)のエンジンオイル交換をインジケーターに表示する。ほんとそんな長いインターバルで大丈夫なのか?と昔の機械屋しては思っているのである。しかも、最近の直噴エンジンは、PMによりエンジンオイルの汚損はディーゼル並みに酷いものであるが、それでも25千インターバルとしているが、ちょっと良識欠けてると感じざるを得ない。


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