5/7発生の札幌市白石区で午前7:30頃生じた、幹線広路(片側2車線)走行車(フーガ)と狭路より進入車(プロボックス)の出合い頭事故の事故報道動画(下記Youtube)より、種々の事柄を読み取って、解析の真似事らしき分析を試みた。事故現場の計測や該当車両の立会まで行えれば、さらに精度は高まると思えるが、Net情報の分析だけでもこの程度のことは判るということを紹介がてら書き留めてみたい。
1.事前提示データ
①事故日時 2021/5/7 AM7:30頃 晴天
②事故場所は札幌市白石区 道道(片側2車線)の走行車(フーガ)と狭路(一時停止規制あり)より進入車(プロボックス)の出合い頭事故。なお、事故現場交差点からフーガの走行路方面は、河川の橋梁中央部を頂点として盛り上がっており(該当交差路から橋中央部まで160m)、このため狭路進入車の右方向の見通しは160m程度に制限され良いとはいえない。
③広路進行車(フーガ)の車両重量:1,690-1,800kg、狭路進入車(プロボックス)の車両重量:1,030kg - 1,120kg。
2.近くのドライブレコーダー画像からの事故状況
事故現場の当該交差路の反対側から停止していた車両のドライブレコーダーの動画が公開されている。ただし、画面左側が建物の影になり、衝突後のプロボックスは一度画面の外に出てしまう。その後再びプロボックスは画面に現れるのだが、激しい動きがあったであろうことを伺わせる。一方、フーガの方は、衝突時に右廻りに90度程向きを変え、そのまま横向きにドリフトして停止するまで他物には衝突していないことが明確に読み取れる。
なお、ドライブレコーダーも含め一般の動画撮影機器では、秒間の画面コマ数(フレーム)が50とか60という(つまり60fpsとか表現)される程度だが、事故で双方車両が接触し運動量の交換を行っている時間は0.1とか0.2秒と云われている短時間だから、細かい動きは明確には写し撮ることは不可能となる。ちなみに衝突実験装置で使用される高速度カメラでは、5000fps程度が使用されているが、そのため露光不足を補うために、極めて高い照明光源下で撮影が可能となっている。
ここでは、上記ドライブレコーダーの動画から、有意のフレームを切り取り並べ、その解説を以下に記してみる。
①狭路車進入のプロボックスが該当交差路に進入開始。
②衝突直前のフレーム。プロボックスの左前輪が左に切れている様に見える。危険を感じ、回避しようとしたのか。
③衝突中らしいが、ブレが激しく明確ではない。なお、プロボックスの進入発進からここまで、経過時間は2.4秒程と計測した。
④フーガが右廻りにスピンしつつプロボックスから離れて行く。
⑤フーガは右廻りのスピンを強くしつつさらに離れて行く。プロボックスの一部が見えているが、どの部位か不明。
⑥フーガはほぼ90度横向きになってタイヤから白煙を出しつつ滑走している。プロボックスは画面外に出て見えない。
⑦ヒョコと云う感じでプロボックスが前後逆向きになって現れ停止する。進入時からここまで経過時間は5.6秒と計測した。フーガは未だ滑走中だ。
⑧フーガは、横向きになって大きく弧を描く様に滑走していたがここで停止した。衝突からフーガ停止まで、計画時間は4.4秒と計測した。
3.それぞれの車両の損傷状況
プロボックス(6枚)とフーガ(1枚)のそれぞれの写真を示す。
①プロボックス
プロボックスは右側面を中心に大破しているが、前部ボデーには目立った損傷は見られない。ただし、右前輪ホイールは強く変形すると共に、前部視で右前輪は大きくネガティブキャンバー状態である。なお、右側面はセンターピラーから後部が強く押し潰されている。また、右後輪はスピンドル部で折損し、ドラム付きタイヤホイールは脱落している。
ここで、最初に疑問に思ったのが後部視で、バックドア開口部がルーフ中央部付近を上に、フロア付近を下に、左右リヤフェンダーを内側に、変形させているところに注目した。この様な前部損傷形態で呼ばれるM型損傷の変形が、例えどのように強く右側面から与えられても生じるものではないだろうと云うことだ。また、開口部のルーフ中央部の盛り上がりカ所を観察すると、直接痕らしき変形が判る。これらのことから、プロボックスは二次衝突として、電柱に逆突する動きを生じていたと判断した。なお、あくまで推定だが、この後部M型損傷を生じる有効衝突速度は20km/h程度はあったと思える。なお、プロボックスの2枚目の写真に右端に電柱が写っているが、その根元にプロボックスに装着されていたとおぼしきルーフボックスが見える。この電柱に、後退状態で二次衝突したものと判じる。
②フーガ
フーガの損傷写真は右斜め前からの1枚だけだ。JNCAPのオフセット衝突試験(40%、55km/h)と比べると、やや小さい損傷程度の様に感じられる。
4.事故現場と主要な距離
①報道が伝える事故形態。
②現場付近の上空からの写真(GoogleMAPより)
③同じくGoogleMAPにて東川下バス停付近(フーガの最終停止地点)から事故交差路方向を見る。該当交差路から先の橋は盛り上がっており見通しは悪い。
④報道動画などより読み取った距離関係をアバウトであるが示す。
5.考察
事故状況を、あくまで想像できあるが時系列で書き表してみると以下の様なものではないだろうか。
①プロボックスは左右の安全確認をしたが、当該交差路を右に転蛇しつつ、センターライン付近まで進行したところで、右方向から進行するフーガと衝突した。なお、プロボックスの当該交差路進入から衝突まで、およそ0.2Gの通常の緩やかな発進加速だとすれば、その時間が2.4秒だから、速度は17km/h程であったと推定できる。
②プロボックスとフーガの衝突瞬間の相対角は30度程であった様に動画の動きから捕捉できる。そして、プロボックスは左廻り、フーガは右廻りに姿勢を変異しつつ、プロボックスの右側面を右フロントドアから右リヤフェンダーに掛けて滑りつつ、最終的に相対角を90度程度にして、両車は離れて行く。
③この時点ではフーガの速度は不明だが、最終停止位置でのフーガの損傷状態から、JNCAPオフセット試験の変形よりやや小さめの変形であることを鑑みて20%分を減じた44km/hがフーガの有効衝突速度だろうと見積もった。
④フーガの衝突前速度を検討してみたい。
まず、フーガの衝突後の滑走距離はアバウトながら70mとすれば、ブレーキを掛けていようといないとに関わらず、横滑りしているので、摩擦係数は最大値も0.8を採用すれば、衝突後の初速は110km/hと算出される。一方、動画から衝突後から停止するまでの時間を4.4秒で摩擦係数を0.8を適用して算出すると124km/hとなる。
これは衝突によって運動力を減じられた値であるから、先に推定した有効衝突速度44km/hを加算すると、154km/hもしくは168km/hというとんでもない速度が想定される。
なお、該当車はエアバッグECUに内蔵されたEDR機能を持っているから、衝突前5秒間の速度の変化が記録されているだろう。プロボックスが交差路進入後2.4秒後に衝突しているが、それを認知しブレーキを踏むまで0.75秒程度の反応遅れ時間(空走距離)があるから、衝突までの有効となった制動時間は1.7秒程度しかないが、幾らかは減じたと想定できるが、これも含めEDR記録で明確になるのだろう。
⑤プロボックスの衝突後速度と乗員1名死亡の件
プロボックスは先に記した様に推定17km/hまで加速したところでフーガの衝突を受けることになった。これが1次元衝突(双方の車両が一直線上衝突)であれば、運動量保存則から比較的容易に推定できるのだが、本件は2次元衝突であり難しさがありそうだ。そこで、プロボックスが当該交差路へ進入してから衝突するまで2.4秒、さらに画面で消えてから再び現れ停止するまで5.6秒の計測データから、衝突後に停止するまでの時間を3.2秒となることから、これを基に検討してみた。
この時のプロボックスの正確な車両運動は確認できないが、急激に何回転もするスピン運動したのかもしれない。また、この運動中はブレーキを掛けることは困難であり、かつ振り回される中で、車体の接地力が弱まった状態になった可能性も想像できる。とすると、減速Gも相当弱く働いたものと想像するのが妥当に思える。なお、衝突後の途上では電柱に有効衝突速度20km/h程度で逆突する事象も生じている。
と仮定すると、減速Gを全制動の20%程度となる0.2Gを当てはめ、総滑走距離30mとし電柱への衝突を20km/hとすると辻褄が合う様だ。
プロボックスの乗員1名が気の毒に亡くなったと云うことだが、助手席に搭乗していたと報道されていた。この事故では、一次衝突では右側面の事故であり、乗員は右方向に反力を受けるから、ドアガラスに頭部を打ち付けたとは考え難い。該当車はエアバッグが装備されているものの、ドライバー用だけで、サイドエアバッグの装備はない様だ。普通に考えると、本件事故で一番死亡しそうな乗員着座位置は、運転席もしくは後席の右側に座っていた場合だろう。ちょっと不自然に感じる事態だが、助手席でシートベルトをしておらず、室内物や乗員同士で当たり、不幸な事態が生じたのかもしれない。
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5人死傷 白石区の衝突事故 付近のドライブレコーダー映像は…
2021/05/07
https://www.youtube.com/watch?v=cFnZhabydRg
1.事前提示データ
①事故日時 2021/5/7 AM7:30頃 晴天
②事故場所は札幌市白石区 道道(片側2車線)の走行車(フーガ)と狭路(一時停止規制あり)より進入車(プロボックス)の出合い頭事故。なお、事故現場交差点からフーガの走行路方面は、河川の橋梁中央部を頂点として盛り上がっており(該当交差路から橋中央部まで160m)、このため狭路進入車の右方向の見通しは160m程度に制限され良いとはいえない。
③広路進行車(フーガ)の車両重量:1,690-1,800kg、狭路進入車(プロボックス)の車両重量:1,030kg - 1,120kg。
2.近くのドライブレコーダー画像からの事故状況
事故現場の当該交差路の反対側から停止していた車両のドライブレコーダーの動画が公開されている。ただし、画面左側が建物の影になり、衝突後のプロボックスは一度画面の外に出てしまう。その後再びプロボックスは画面に現れるのだが、激しい動きがあったであろうことを伺わせる。一方、フーガの方は、衝突時に右廻りに90度程向きを変え、そのまま横向きにドリフトして停止するまで他物には衝突していないことが明確に読み取れる。
なお、ドライブレコーダーも含め一般の動画撮影機器では、秒間の画面コマ数(フレーム)が50とか60という(つまり60fpsとか表現)される程度だが、事故で双方車両が接触し運動量の交換を行っている時間は0.1とか0.2秒と云われている短時間だから、細かい動きは明確には写し撮ることは不可能となる。ちなみに衝突実験装置で使用される高速度カメラでは、5000fps程度が使用されているが、そのため露光不足を補うために、極めて高い照明光源下で撮影が可能となっている。
ここでは、上記ドライブレコーダーの動画から、有意のフレームを切り取り並べ、その解説を以下に記してみる。
①狭路車進入のプロボックスが該当交差路に進入開始。
②衝突直前のフレーム。プロボックスの左前輪が左に切れている様に見える。危険を感じ、回避しようとしたのか。
③衝突中らしいが、ブレが激しく明確ではない。なお、プロボックスの進入発進からここまで、経過時間は2.4秒程と計測した。
④フーガが右廻りにスピンしつつプロボックスから離れて行く。
⑤フーガは右廻りのスピンを強くしつつさらに離れて行く。プロボックスの一部が見えているが、どの部位か不明。
⑥フーガはほぼ90度横向きになってタイヤから白煙を出しつつ滑走している。プロボックスは画面外に出て見えない。
⑦ヒョコと云う感じでプロボックスが前後逆向きになって現れ停止する。進入時からここまで経過時間は5.6秒と計測した。フーガは未だ滑走中だ。
⑧フーガは、横向きになって大きく弧を描く様に滑走していたがここで停止した。衝突からフーガ停止まで、計画時間は4.4秒と計測した。
3.それぞれの車両の損傷状況
プロボックス(6枚)とフーガ(1枚)のそれぞれの写真を示す。
①プロボックス
プロボックスは右側面を中心に大破しているが、前部ボデーには目立った損傷は見られない。ただし、右前輪ホイールは強く変形すると共に、前部視で右前輪は大きくネガティブキャンバー状態である。なお、右側面はセンターピラーから後部が強く押し潰されている。また、右後輪はスピンドル部で折損し、ドラム付きタイヤホイールは脱落している。
ここで、最初に疑問に思ったのが後部視で、バックドア開口部がルーフ中央部付近を上に、フロア付近を下に、左右リヤフェンダーを内側に、変形させているところに注目した。この様な前部損傷形態で呼ばれるM型損傷の変形が、例えどのように強く右側面から与えられても生じるものではないだろうと云うことだ。また、開口部のルーフ中央部の盛り上がりカ所を観察すると、直接痕らしき変形が判る。これらのことから、プロボックスは二次衝突として、電柱に逆突する動きを生じていたと判断した。なお、あくまで推定だが、この後部M型損傷を生じる有効衝突速度は20km/h程度はあったと思える。なお、プロボックスの2枚目の写真に右端に電柱が写っているが、その根元にプロボックスに装着されていたとおぼしきルーフボックスが見える。この電柱に、後退状態で二次衝突したものと判じる。
②フーガ
フーガの損傷写真は右斜め前からの1枚だけだ。JNCAPのオフセット衝突試験(40%、55km/h)と比べると、やや小さい損傷程度の様に感じられる。
4.事故現場と主要な距離
①報道が伝える事故形態。
②現場付近の上空からの写真(GoogleMAPより)
③同じくGoogleMAPにて東川下バス停付近(フーガの最終停止地点)から事故交差路方向を見る。該当交差路から先の橋は盛り上がっており見通しは悪い。
④報道動画などより読み取った距離関係をアバウトであるが示す。
5.考察
事故状況を、あくまで想像できあるが時系列で書き表してみると以下の様なものではないだろうか。
①プロボックスは左右の安全確認をしたが、当該交差路を右に転蛇しつつ、センターライン付近まで進行したところで、右方向から進行するフーガと衝突した。なお、プロボックスの当該交差路進入から衝突まで、およそ0.2Gの通常の緩やかな発進加速だとすれば、その時間が2.4秒だから、速度は17km/h程であったと推定できる。
②プロボックスとフーガの衝突瞬間の相対角は30度程であった様に動画の動きから捕捉できる。そして、プロボックスは左廻り、フーガは右廻りに姿勢を変異しつつ、プロボックスの右側面を右フロントドアから右リヤフェンダーに掛けて滑りつつ、最終的に相対角を90度程度にして、両車は離れて行く。
③この時点ではフーガの速度は不明だが、最終停止位置でのフーガの損傷状態から、JNCAPオフセット試験の変形よりやや小さめの変形であることを鑑みて20%分を減じた44km/hがフーガの有効衝突速度だろうと見積もった。
④フーガの衝突前速度を検討してみたい。
まず、フーガの衝突後の滑走距離はアバウトながら70mとすれば、ブレーキを掛けていようといないとに関わらず、横滑りしているので、摩擦係数は最大値も0.8を採用すれば、衝突後の初速は110km/hと算出される。一方、動画から衝突後から停止するまでの時間を4.4秒で摩擦係数を0.8を適用して算出すると124km/hとなる。
これは衝突によって運動力を減じられた値であるから、先に推定した有効衝突速度44km/hを加算すると、154km/hもしくは168km/hというとんでもない速度が想定される。
なお、該当車はエアバッグECUに内蔵されたEDR機能を持っているから、衝突前5秒間の速度の変化が記録されているだろう。プロボックスが交差路進入後2.4秒後に衝突しているが、それを認知しブレーキを踏むまで0.75秒程度の反応遅れ時間(空走距離)があるから、衝突までの有効となった制動時間は1.7秒程度しかないが、幾らかは減じたと想定できるが、これも含めEDR記録で明確になるのだろう。
⑤プロボックスの衝突後速度と乗員1名死亡の件
プロボックスは先に記した様に推定17km/hまで加速したところでフーガの衝突を受けることになった。これが1次元衝突(双方の車両が一直線上衝突)であれば、運動量保存則から比較的容易に推定できるのだが、本件は2次元衝突であり難しさがありそうだ。そこで、プロボックスが当該交差路へ進入してから衝突するまで2.4秒、さらに画面で消えてから再び現れ停止するまで5.6秒の計測データから、衝突後に停止するまでの時間を3.2秒となることから、これを基に検討してみた。
この時のプロボックスの正確な車両運動は確認できないが、急激に何回転もするスピン運動したのかもしれない。また、この運動中はブレーキを掛けることは困難であり、かつ振り回される中で、車体の接地力が弱まった状態になった可能性も想像できる。とすると、減速Gも相当弱く働いたものと想像するのが妥当に思える。なお、衝突後の途上では電柱に有効衝突速度20km/h程度で逆突する事象も生じている。
と仮定すると、減速Gを全制動の20%程度となる0.2Gを当てはめ、総滑走距離30mとし電柱への衝突を20km/hとすると辻褄が合う様だ。
プロボックスの乗員1名が気の毒に亡くなったと云うことだが、助手席に搭乗していたと報道されていた。この事故では、一次衝突では右側面の事故であり、乗員は右方向に反力を受けるから、ドアガラスに頭部を打ち付けたとは考え難い。該当車はエアバッグが装備されているものの、ドライバー用だけで、サイドエアバッグの装備はない様だ。普通に考えると、本件事故で一番死亡しそうな乗員着座位置は、運転席もしくは後席の右側に座っていた場合だろう。ちょっと不自然に感じる事態だが、助手席でシートベルトをしておらず、室内物や乗員同士で当たり、不幸な事態が生じたのかもしれない。
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5人死傷 白石区の衝突事故 付近のドライブレコーダー映像は…
2021/05/07
https://www.youtube.com/watch?v=cFnZhabydRg