私の思いと技術的覚え書き

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ヒューズのこと

2009-01-08 | 車両修理関連

 今回はクルマの電気回路にも使用されている、ヒューズについて記してみます。

 ヒューズとは、電気回路に何らかの異常が生じて過電流が流れた場合、配線の過熱からの焼損や車両火災に至るのを防止するために設けられるものです。

 建屋なんかでは、1箇所のメインヒューズに対し、回路別にサーキットブレーカーという遮断器を設けています。クルマの場合では、電気回路別に専用ヒューズが使用され、パワーウインドウモーター等、拘束時に比較的大電流が流れる回路で、希にサーキットブレーカーが使用される場合があります。このサーキットブレーカーというには、いわゆるバイメタルを使用した断続回路で、過電流でバイメタルが変位して接点が開放し電流が遮断されるもので、建屋等と同様に手動で復帰させる必要があるものと、自動で復帰するものとがあります。

 さて、本論のクルマ用のヒューズですが、クルマの進歩に従いヒューズも変化して来ました。昔の欧州車なんかのヒューズを見ますと、白い碍子にヒューズの容量別に細いハンダ線が露出していて、両端が円錐形に尖っていて、両端を端子で挟み込むタイプのものです。正直云って、このタイプのヒューズボックスを見ると、接触不良が起きやすそうなエンジニアリングだなあと感じてしまいます。

 実際、ヒュースボックスというのは、多数の端子が接触し合っていますから、それら端子間で接触抵抗が生じますと、そこにいわゆるジュール熱が生じることによって、ヒューズボックスが溶損するなんていうトFusesラブルは時々あったものです。

 国産車では、従来は細いガラス管の中に規定 電流容量のハンダ線が通ったガラス管式のヒューズが長年使用されて来ました。しかし、最近は国産車もしくは輸入車を問わずに、プラスチック製で端子を差し込む方式のブレード(歯)式というヒューズが一般化したと思います。また、同様のブレード式でも、ヒューズのサイズがより小型化されて来ています。なお、、ブレード式は容量毎に色別されていて判り易い面もありますが、抜いてみないと切れているかどうか判らないという欠点を持っています。

 ところで、私がクルマを乗り始めた頃はガラス管タイプのヒューズでしたが、当初はヒューズが一直線になっていたものでした。ところが、このストレートなヒューズというのは、使用される電気回路が規定電流を上回らなくても、ある程度の時間を経過すると切れてしまうという、一種の寿命を持ったものだったのです。このヒューズの寿命切断ですが、本当に目を近づけて見なければ判らない様な、極狭い間隔での切断なのです。この切断理由は、ヒューズ内を電流が流れると僅かな抵抗ですがジュール熱を発し膨張します。そして、電流が切れると冷めて収縮すると云うことを繰り返し、いわゆる熱疲労による破断という訳です。そんな、直線形状のガラス管ヒューズの欠点も、ヒューズの形状をS字型に変更することにより解消された訳です。このヒューズ線のS字形状化は、現在のブレード型ヒューズでも引き続き採用され続けています。

 最後に、ヒューズは回路に規定以上の電流が流れることを遮断し、車両火災を防止するためにあるのですが、現在起きている車両火災の中には、電気系統の原因もある程度あると云われています。それは、電気回路を素人細工で改造し、ヒューズを入れていなかった等と云う拙劣なものもあります。しかし、その様な改造もなされておらず、電気系を原因として車両火災に至っている例もあるのです。その一例とは、次の様なものです。

 ある電気回路のワイヤリングハーネスが車体のボデーのエッジ部分等と、車両の走行時の振動で繰り返し擦れ合い、配線被覆が摩耗し、パチパチと火花を出す様になります。バシッとボデーと短絡すれば、直ちにヒューズが飛ぶわけですが、パチパチと軽く極短時間のショートが継続されると、ヒューズは飛ばず、その内に配線被覆(PVC樹脂が多い)が燃え出すという訳です。




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