先回、振動のことについて触れましたので、今回はクルマの生じる騒音(ノイズ)と要求レベルなどのことについて、主に「こもり音」のことを思いつくままに記して見ます。
「こもり音」とは、比較的低周波の「ボー」と云う音ですが、この様な低周波の音は指向性が低く、何処で鳴っているか判別しにくいものです。ちょっと脇道に入りますが、オーディオでサブウォーファーという低音専用スピーカーがありますが、この低音が指向性が低いことを利用して設置の自由度を得ています。具体的には、ツイーター(高音用)と離して設置しても問題なく、場合によれば視聴者の後方に設置したとしても、鳴らせば、視聴者にはあたかもツイータ部で低音も鳴っている様に錯覚させてしまいます。
さて、クルマにとっての騒音とは、悪い意味でのノイズと、肯定的な意味でのサウンド(もしくはノート)に分けられると思います。ですから、そのクルマの商品特性に応じて、わざと特定の周波数成分を強調させ、良いサウンド(例えばエキゾーストノート)を目指したクルマというのが生まれるのでしょう。それと、比較的高級車においては、クルマ全般としての騒音レベルも低いことから、個別の騒音についての要求レベルは高いものが要求されることとなります。これは、ほとんど騒音対策が施されていないトラックの様なクルマであれば、特定の速度域で騒音ピークが生じたとしても、特に気にはならないことになりましょう。しかし、十分な騒音対策が施された高級車にあっては、特定の条件で生じる騒音ピークの高まりは、多くの乗員に不快なものとして認識され商品性を低下させることとなります。もう、だいぶ以前ですが、初代セルシオ(UCF11型)に6年程乗っていたことがありました。このクルマの騒音レベルは、当時の市販車として、たぶん世界トップレベルの性能を持っていたと思います。しかし、発進後のエンジン回転で1500rpm前後、速度が20km/h程の緩加速時の条件において、決して大きな音圧ではないものの生じるこもり音になることがありました。発進後に比較的早い加速を行えば、こもり音のピークは一瞬で通り過ぎますから気づきません。しかし、停滞中だとかの条件では緩加速と減速の繰り返しを行うことになりすから、ノイズ発生条件付近の運転が継続されることになり気に掛かってくることになります。この事例でも、クルマ全般の騒音レベルが高ければ気付かない様なレベルの騒音でも、騒音レベルの低いクルマでは気になってしまうという好例だと思います。この事例は、緩加速すなわちスロットルを開いている場合のみ生じますから、たぶん吸気系の脈動による共振周波数のピークが生じていることによる想像されます。エンジン吸気系には、この様な対策としてレゾネーターという一種の共鳴箱が単数もしくは複数以上が設置されるのですが、総ての回転域を網羅できるものではなく、特定の回転域(常用域)の共振周波数成分のみを対象に軽減を図っているものです。
先の様な「こもり音」ですが、現車で異常なレベルにあると判断されても、その対策は甚だ困難なこととなります。それは、それら「こもり音」の多くが、クルマの設計、試作時の問題に帰するものであり、個別の部品を替えて直るというものではない、クルマの仕様といえるものだからです。
「こもり音」の原因ですが、エンジンの吸気脈動、排気脈動、排気管全体の振動、駆動系の捻り振動などに起因するものが多くある様に感じます。また、サスペンションからの入力により、不正路面などで断続的にリヤボデーやフロアー全体が「ボン、ボン」と太鼓を打つ様に響くとい云うものがあります。これは、ドラミングなどと呼ばれ、主にトランクルームがないワゴンタイプのクルマで生じ易いことを記憶しています。ですから、私はワゴンタイプ車が基本的に好きでなかったのですが、最近のワゴン車ではリヤサスだとかリヤフロアー廻りのボデー剛性が向上され、ほぼセダンに遜色がないレベルになって来ている様です。
最後に「こもり音」以外で時々ある、走行速度に比例して増減する「ゴォー」と云う異音のことについて記して見ます。この様な異音は、昔はホイールベアリングに起因するもの、それも前輪よりも後輪用の単列ボールベアリングの耐久性が低く、これが原因となっていた事例が多かったという記憶があります。ところで、昨今の同様の異音ですが、タイヤに起因するものが多くなっている様に思われます。それも、新品近いタイヤでは生じず、5部山程度まで摩耗してきたタイヤで生じることが多い様です。ですから、同様異音が生じたクルマでは、まずタイヤを他のものと替えて走行テストして判断する必用があると云えます。
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