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ルポルタージュ・損害調査員 その22【飛び石損害】

2022-08-04 | コラム
ルポルタージュ・損害調査員 その22【飛び石損害】
 このリポルタージュシリーズは、損害調査員といてある意味真価を生み出せたという事案を記して来たのだが、今回はまったく価値を生み出せず、当の調査員としては忸怩たくる思いを味あわされたという事案を記してみたい。

 この案件は保険会社で呼ぶとことの「飛び石損害」に類するものなのだ。飛び石損害というのは、多くの場合の事故で、車両保険が対象となり、どこからから飛来した飛来物による損害というのが一般的だろう。ところが、これは対物での飛び石損害なのである。

 ここまで読んでくれて、対物の飛び石損害とは、よくぞその加害者を特定できたと云うことを考えられるだろう。私自身も従前飛び石損害でフロントウインドガラスのを運転中に「ビシッ」と小石が当り割れる損害を二度経験しているが、その加害相手車は特定できなかった。
 一度は高速道路上であったが、前方に至近に加害者らしき車両も見えず、もしかしたあ対向車線の車両が落下させたもしくは跳ね飛ばした小石が当たったのではないかと想像している。
 二度目は交差点で右折レーンにて停車中のことであった、対向直進車が結構な高速ですれ違った直後に、ビシッと音がして、フロントガラスの損傷を認識したといういうものだ。これなどは、おそらくその対向車が原因者なのだろうが、Uターンして追い掛けて捕まえて損害賠償を請求できるかと想定してみれば、もしもその原因が路面に落ちていた小石を跳ね飛ばして加害したとすれば、不可抗力として損害賠償は問えないという問題になるだろうことが想定できる。

 ここで云いたいのは、およそ飛び石損害とは、車両保険の場合が多く、対物損害としてもあり得るが、その犯人を特定することが極めて難しく、また特定できたとしても路面に散在する小石を跳ね飛ばしたとなると、どこまでその違法行為を立証できるのかという問題を内在しているだろうことを意識せざるを得ないことだ。

 ところで、今回記すのは、対物損害における大規模な飛び石損害の事例なのである。

➀事故受付状況
 事故日は2003年頃、横浜界隈の首都高速道路を事故現場とし、契約車両は水道配管業を業とする2トンダンプが契約車両であった。都内での水道本管の取替工事を行い、取替の済の古い水道配管を荷台に何本も積み、該当高速道を走行中に、インター手前付近でやおらベンツ(Sクラス220)に追い越され、前方に入り込んで停止しろととの合図をなされたという。そして、該当ベンツから降りてきた数名が、「あんたのクルマから飛び散った小石が俺の車の全体に当たり相当なキズが生じているはずだ」との云い分を申し述べられたという。そして、相手から、この場で「社長に連絡しろ」と云う言葉を聞き、不承不承社長に連絡したという。電話に出た社長は、「修理工場に入れるので弁償してくれるのだな?」と確認を求めて来たという。当然社長は、「そのために保険も入っているので、弁償させてもらう」と答えざるを得なかったという。

②相手車の損害確認
 事故から程なく入庫した修理工場に対し、速やかな立会調査を実施したのだが、ボンネットとかフロントウンドのキズは判らないでもないが、ルーフ、リヤウインド、トランク、左右側面ドアなど、それらのキズもその時生じたキズだと車両所有者は申し述べていると云う。俄には信じがたい損傷状態であった。

③契約車両の確認と当事者および社長からの聴取
 契約者の車両をは土中から掘り出された大径水道管を裸で荷台に積載しているもので、高速走行中にその幾らかが後方へ離脱して飛び散ったことも想定できるが、該当ベンツを包み込むまでの飛散を生じ得るものかかなり疑問を生じるものだった。それと、事故発生時運転中および助手席に搭乗していた従業員からは、相手が普通の会社員とは違い、かなりの威圧を感じるもの云いだったこと、事故現場の至近に別の高級車が停止しており、あたかも現場の様子を監視している様子を感じ無言の圧力を利欲感じたことを申し述べたのであった。

④そもそも飛び石損害の軌跡はどう飛ぶか
 航続走行中に離脱した飛び石は、その速度で後方に飛ぶと思いがちだが、よくよく思考して見ればそういうことはあり得ないことが判る。つまり、今回の場合で土管に付着していた小石が離脱したとしれば、その瞬間は小石自体も自動車と同一速度での前方への速度成分を持っており、そこから離脱することで、急激な空気抵抗を受けて、速度が減じて行き、放物線を描いて離脱位置から早々長い間空中を浮遊することなく路面に落下し、その後数度のバウンスを繰り返して止まると考えるべきだろう。

 なお、飛び石の中には、タイヤと路面の間で弾くなり跳ね飛ばす様な飛び石もあり得るが、この場合は飛び石の初速度は高くなるが多数が一時に飛来することはあり得ない。

 なお、併せて、日頃交友関係のある他損保アジャスターのマネージャー職から徴収しつつ、類似の事故があること、その犯行グループとして川崎の某組織の関与が疑義としてあることなどを把握した。

 ここまでの事故状況および契約者からの聴取を当時の損害調査課のK課長に説明し、あまりにも疑わしいということを訴えた訳だが、「証明しようがないでしょう」に一言が返事には驚愕したものだった。私も20数年損保に所属したが、ここまでの疑義事故を、証明しようがないの一言をうそぶく人物に巡り会ったのは初めてだ。やる気になれば該当警察署に相談し、場合によっては事故の実況見分を再度行いなどやる気になれば幾らでもある訳だが、983が怖いのか、査定正義の心がないのか、おそらく両方が主因だと思うのだが、こういう総合職査定マンがいることに慄然としたしたものだった。


#思い出すだに悔しい疑義飛び石損害


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