ドライブシャフトとは、相対位置の変化を生じる部分間に動力伝達を行う場合に、利用される部品です。写真はホンダがF1初登場した頃の1500ccF1の後輪ドライブシャフト(レーシングカーではハーフシャフトと呼ばれ る)ですが、十字型スパイダを使用したフックジョイント(カルダンジョイントとも呼ばれる)が使用されています。このフックジョントは、構造が簡単で小型で軽く作れますから、現在でもプロペラシャフトとか、ステアリング系のメインシャフト(ホイールとギヤボックス間)に使用されています。
しかし、フックジョイントは、変位角が大きくなる程、回転角速度の変動(不等速性)を生じてしまうことや、伝達トルクの上限値が小さいという欠点があります。
そんなことから、ステアリング操作で大きな変位角を生じるFF車には、フックジョイントの使用では、大舵角時のスムーズな動力伝達が困難になってしまいます。このため、FF車では、等速ジョイント(CV:コンスタント・ベロシティ)を使用することが大前提となります。
しかし、大昔のFF車で、例えばシトロエン2CVの初期型等では、ダブルカルダンジョイントが使用され、ある程度大舵角時のドライブフィールの悪化を割り切っていたことが想像されます。初のCVジョントとしてバーフィールドジョイントが本格的に採用されたFF量産車は、アレック・イシゴニス設計の初代ミニが最初と聞いています。
また、ドライブシャフトでは、部位にもよりますが、部品相対間の角度だけでなく長さの変位も吸収する必要がある場合があります。従って、FF車の場合は、車輪側はバーフールドショントとして、デフ側はダブルオフセットジョイントとして、伸縮可能な構造のクルマが多い訳です。
ところで、FR車の後輪独立サスペンション車ですが、昔はフックジョントと伸縮可能なボールスプラインが使用されていましたが、最近はFF車と同様のCVジョイントの採用が一般化しました。先の写真のF1レーシングカーでも、現在ではCVジョイント(この場合は軽量な点もあるのかトリポート型が多い様です)の使用が当たり前となっております。
ところで、FF車の欠点の一つとして、かつてはジョント切れ角の制限からハンドル切れ角が大きくなりがちで、最小回転半径が同ホイールベースのFR車より大きくなるという問題があったことが思い出されます。しかし、最新のCVショントの、最大切れ角は50度に達しており、その様な欠点は完全に克服されています。
それと、ハンドル操作に伴う屈曲が多頻度となる外側ジョイントについて、ラバーブーツの疲労耐久性が劣るという問題もありましたが、最新型ではラバーというより樹脂化される等して改善が図られている様です。
CVジョイントの製造メーカーですが、総て元々ベアリングを製造していたメーカーです。これは、ベアリングと同様に、鋼球を使用するという構造故のことなのでしょう。
我が国のベアリングメーカーが世界的に優秀なことは、良く知られたことです。これは、鋼球(ボール)の表面硬化等もあるのでしょうが、真円(球)度の高さに掛かっているのだと思います。この真円度の高さが、低い転がり抵抗や高い耐摩耗耐久性を生み出しているのだと想像されます。