私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

ANA・B737アクロバット飛行のこと

2011-09-30 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 数日前の報道でANAの沖縄発羽田便において、B737型機がロール角130度以上で降下角35ド程度で1,900m程急降下する状態に陥ったと報じられていました。原因は、機長がトイレから帰って来て操縦室内に入ろうとした際、扉のロックダイヤルを操作しようとした際、副操縦士が誤ってラダートリムダイヤルを回したために生じたと説明されています。

 飛行機の操縦装置には大して詳しくありませんが、ラダートリムダイアルとはラダー(方向舵)の中立位置を微調整するものであろうかと思います。これを廻せば、ラダーを当てたのと同様になるのでしょう。通常、ラダーは機体にヨー運動を生じさせ方向を決めるものですが、単独で操作するものではありません。機体がヨー運動を生じ進行方とと機首方向のズレが生じれば、左右主翼に生じる揚力に差異が生じ、機体にロール運動を生じます。仮に機体が90度までロールすれば、揚力はゼロにまでなりますから、放物線状の降下を始めることになります。ですから、ラダーで方向変換する場合は、主翼のエルロンとか尾翼のエレベーター、そしてスロットルを適宜操作し、水平面上でスムーズな旋回を行うというのが通常の操縦操作となるのでしょう。

 報道によれば、この状態で最大加速度は2.8G程度が作用し、急降下により速度も通常限界近くまで達したと云うことですが、夜間飛行ということもあったのでしょうが、乗務員(スチュワーデス)が軽い負傷を負った程度で、乗員はほとんどこの異常事態に気づかなかったとのことです。

 事故場所は、静岡県浜松市沖だと云いますから。既に降下をしかけて居たところかもしれませんが、十分な高度があったからこそ、立ち直ることができたのだと思われます。しかし、回避動作が遅れていたり不適切であったとすれば、悲惨な事故となっていたことでしょう。

 以前に安全係数のことを記していますが、クルマ等一般の機械などは、その重要度や危険度なども関連しますが、構造的な許容応力の5~10倍程の安全係数というのが持たされています。しかし、航空・宇宙産業機器は特別で、重力に逆らって空を飛ぶという宿命的な問題の中、安全件数はいいところ2倍程度までの設計となるのだそうです。その代わり、構造物の応力計算を厳格・緻密に行いますし、定期的な検査が頻繁かつ厳しく行われることで、安全を確保しているのです。従って、その運行に当たっては、厳しいG制限とか急降下の際の速度制限が課されているはずと想像されます。今回のB737型が、どの程度の耐Gや最高速度に設計なされているのか知るとことではないですが、おそらく耐G的には5G程度、最高速はマッハ0.95辺りが限界なんだろうと想像してしまいます。



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