私の思いと技術的覚え書き

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ロック・ツウ・ロックのうんちく

2011-12-17 | 技術系情報
 ロック・ツウ・ロックとは、ステアリングの片側一杯から反対側一杯までの、ステアリングホイールの回転数を云います。先日感激して見た映画グラン・プリでは、1960年代のF1マシンは、ヘアピンカーブで180度程度までを切っていましたから、ロック・ツウ・ロックは、約360度、つまり1回転となるでしょう。
 市販乗用車のロック・ツウ・ロックは、経験上2.5回転ぐらい(900度)が標準的かと思います。片側ロックまでステアリングを切った場合の外側前輪の切れ角は30度+αぐらいですから、市販車のステアリングのオーバーオールギヤ比は15:1程度と云うことになります。
 先の60年代F1では、6:1程度なのでしょう。近年のF1では、ダウンフォースの増大などによるステアリング操作負荷の増大などもあり、電動パワーアシストの付属が常識化している様ですので、ロック・ツウ・ロックは、もっと小さくなっていると想像します。
 ところで、ロック・ツウ・ロックのど真ん中が直進位置となるステアリングセンターとなりますが、直進走行する場合でも、各種事由によりセンターが狂う場合があります。例えば、路面に傾斜が付いた場所だとか、左右輪で走行抵抗が異なる場合などです。また、事故など、何らかの外的影響を受け、前輪のサスペンションもしくはステアリング系アームに変形を生じたり、ホイールベースの左右差が生じたり、稀には後輪にトウ(切れ角)が生じた結果として生じる場合もあるのです。
 ところで、前輪切れ角が同一だとすればホイールベースが長い程、最小回転半径は大きくなりますが、必ずしもホイールベースが長い程最小回転半径が大きいという訳でもありません、すなわち前輪切れ角がクルマによって異なる場合があるのです。一昔前までのFF車では、前輪駆動用の等速(CV)ジョイントの屈曲角制限から、FF車は最小回転半径が大きめという時代がありました。しかし、現在では、FR車に遜色なくなりました。
 また、FR車でも、車幅の大きなクルマと小さなクルマを比べた場合、広いクルマの方が切れ角を大きくし易い点がある様です。これは、前輪を収めるホイールハウスの容積というか、サイドフレームのスパンによって、前輪切れ角が規制されてしまうために起こる現象です。端的な例では、昔のフレーム付きクラウン等では、V8エンジンまでの搭載を考慮したのでしょうか、左右サイドフレーム間を広く設計したフレームと、5ナンバー枠の車幅のため、前輪切れ角が小さく、最小回転半径が一回り以上大きな初代セルシオより大きかった例でも明かです。
 大きな外車が好きな人に言わせると、アメ車とかベンツSクラスは、車体が大きいけどハンドルが切れるから良いねなという言が聞かれますが、この辺りに理由があるのです。



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