私の思いと技術的覚え書き

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B787の開発・度重なる遅延

2010-12-11 | 技術系情報
 従来比で20%の燃費改善を達成するという次世代中型旅客機であるボーイング878の開発遅延がアナウンスされています。今回の開発トラブルは配電盤に出火を生じたとのことで、新たな配電盤に設計変更して対処する様です。
 新型機は機体発表(ロールアウト)から、現在までの遅延アナウンスは数回以上におよび、初号機の納入時期は、当初発表から3年を大幅に超えています。
 同機は胴体主要部などに、従来のアルミニウム合金素材から大幅にカーボン素材に置き換えるなど、非常に先進的な機体構造を持つそうです。しかし、航空機製造に長年の経験を持つボーイング社と云えども、開発には相当に手こずっている様子であることが想像されます。
 ところで、同機のカーボン素材を使用した胴体部品などの一部は、我が国の三菱重工、富士重工、東レなどの企業が納入担当社(サプライヤー)となっています。しかし、現在の様な開発遅延の中で、未だ試作機の数機が作られた程度であり、試作が完了し型式証明が取得されるまでは、量産体制には移行できないことでしょう。こうなると、我が国のサプライヤー各社も、このための設備や人員の配置を含め、当初予定を組み替えなければならず、それなりの影響を受けていると想像します。
 私が想像するには、カーボン素材そのものを製造する東レでは、カーボン素材を編んだシートに半硬化の熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグという状態で素材を納入するのだと思います。ところで、このプリプレグですが、接着剤だとか塗料と同様に使用可使時間(ポットライフ)があり、プリプレグの場合これが低温貯蔵しても意外に短い様です。ですから、過剰な在庫を持つことはできませんが、今回の度重なる混乱の中で、廃棄せざるを得なくなった素材も多いのやもしれません。
 また、遅延の影響をもっとも受けているのは、ロールアウト時に600を大幅に超えたという機体の発注者である各国航空会社でしょう。これら航空会社の中には、発注をキャンセルして他機種に変更したところもある様です。ローンチカスタマー(初号機購入者)であるANAでも、キャンセルはしていませんが、当座の代替機として他機種の購入を手当てしたりしている様です。
 当然、ANAなどの航空会社では、発注契約に沿って、遅延損害金の請求うぃ行うことにはなるのでしょうが、運行戦略などに与える影響のすべてを補填することはできないでしょう。


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