私の思いと技術的覚え書き

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一世代で消えたメカニカルデザイン・ゴルフ5ドアパネルのこと

2020-07-26 | 車両修理関連
 メーカーはモデルチェンジを繰り返すが、一世代限りで消えたメカニカルデザインというのがある。こういうのは、端的に失敗だったと云えるものだろう。そんな意味を込めて、ゴルフ5(2003-2009)で取り入れたドア構造の何処がどの様に失敗だったか書き留めてみたい。

 ゴルフ5では写真1の様な状態にすることができる。すなわち、ドアアウタースキンパネルだけを取り外すことができるのだ。

 つまり、ドアインナーパネルとアウタースキンパネルは、ボルトで固定されている。実車では、写真2の様のドア後部であれば、填め込み樹脂カバーを外すと、取り付けボルト頭が表れる。

 この構造だが、ドア内部の整備性は非常に良いと云える。しかし、メーカーでメカニカルデザインを試行する場合、整備性をないがしろにする訳にはいかぬが、プライオリティ(優先順位)としては後位になるだろう。第一義に求めるのは生産コストであって、これは部品点数だとか組付け工数ということになるだろう。そういう意味で、この構造を知った時、アホなことやるメーカーだと呆れていたが、案の定のこと次のモデルでは踏襲されなかった。

 もう少し、今回の構造を掘り下げて説明してみると、写真3の右側がゴルフ5のドアアウタースキンとドアインナーパネルの取付概念図だ。ドアインナーとアウタースキンはボルト(スクリュー)で固定されるが、これはアウタースキンにボルトの受け手となる樹脂製のリテーナーを接着して成立させている。従って、部品としては、リテーナーとかスクリューといった個別部品のコストが増大する。また、アウタースキンとドアインナーの位置関係は、隣接パネルのチリ(隙間)に直接関係してくるので、非常にシビアな寸法精度が要求される。この位置合わせはメーカーでは、ジグを使用して行っているのだろうが、接着剤の硬化時間も含め、ボルトの締め付けなど確実の増加するだろう。

 写真3左側が一般的なドアのスタースキンとインナーの組付け構造となる。これは図の様にアウタースキンの端部を折り返して、インナーの折り目に巻き込む様なプレス加工(これをヘミング処理と呼ぶ)を行っている。なお、近年の車両では、このヘミングプレス処理時に、シーリング材を巻き込む様に塗布することで防錆性能を向上させているメーカーが増えている。ちなみに、このシーラー処理をプレキュアタイプと呼ぶ。プレは事前の、キュアは乾燥硬化で、通常のシーラー処理は、下塗り塗装乾燥後(アフターキュア)に行うが、下塗り(EDコート)前に行うことを指している。

 実際、Netでゴルフ5系で寒冷地車など、ドアの防錆面で劣ることが表れている記事も見られる。




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