goo blog サービス終了のお知らせ 

 私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

リコール隠し・トヨタもやっていた(2006年)

2022-01-02 | 事故と事件
リコール隠し・トヨタもやっていた(2006年)
 過去の悪リコール隠しというと、直ぐ思い出されるのが、三菱自なのだが、トヨタでも16年程前に、熊本県警にリコールしなかったとしてトヨタの品質管理部長ら3名を熊本地検に書類送検したという事件があったことを記録しておきたい。

【伝える報道】
熊本県警がトヨタ幹部3人を送検…リコール隠し?
レスポンス 2006年7月11日(火) 23時17分
 熊本県警は11日、2004年8月に菊池市内で発生したRVと乗用車の衝突事故に関連し、トヨタ自動車の品質保証部長ら3人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。部品に不具合が生じてることを知りながら、改善措置を取らずに放置したことが理由だという。

 熊本県警・交通指導課によると、問題の事故は2004年8月12日に発生している。菊池市内の県道を走行していたRV(『ハイラックスサーフ』)が緩やかな左カーブを曲がることをできずに直進。対向車線を進行していた乗用車と正面衝突し、双方のクルマに乗っていた5人が重軽傷を負った。

 逸脱側のRVを運転していた男性は警察の調べに対して「突然ハンドルが切れなくなった」と供述。車両検証を進めたところ、ハンドル操作を前輪に伝達する「リレーロッド」と呼ばれる部品が金属疲労などが原因で破損しており、男性の供述どおりにハンドル操作ができなくなっていたことがわかった。

 この部品については事故から2カ月半後の2004年10月にリコール対象となるが、警察が調べたところ、菊池市での事故が起きる以前に同じ部品を原因としたトラブルが約80件発生していたことが新たに判明した。

 警察では「メーカーが事故が起きる以前からトラブル発生を認識していた可能性が高い」として捜査を続けてきたが、最終的に「重大事故を引き起こす部品トラブルを看過した」と判断。衝突事故の主因は運転者のミスではなく、車両側にあったものと認定し、同社で品質管理部長の職にあった3人を業務上過失傷害容疑で検察庁・熊本地検に書類送検した。

 事情聴取に対し、3人は「重大な事故が起きておらず、早急なリコールの必要性を感じなかった」と供述。菊池市の事故が起きる以前の事故は、駐車場内などいずれも低速走行時であり、重大な危険性の認識が薄かったようだとする。

【元ネタが伝える落ち度】

①経過
 988年12月、リコール対象となった多目的レジャー車(RV)「ハイラックス」フルモデルチェンジ車の生産を開始した。
92~96年、ハイラックスの「かじ取り装置」で5件の不具合が判明した。
95~96年、トヨタが原因を調査したが、いずれも据え切り(停車したままの状態でハンドルをいっぱい切る操作)を繰返すなど、限られた使用状況下で発生おり、駐車場や車庫で停車中に折れていたため、「事故になる危険性はない」と判断し、リコール不要とした。
2004年3月~4月、3件の不具合報告があり、トヨタは停車中より荷重が小さい走行中でも折れる危険性があるとみて再度調査を実施。
04年7月、トヨタがリコールに向けた検討を開始。
04年8月12日、公務員の男性が熊本県菊池市でで93年度製ハイラックスを運転中、リレーロッドが折れハンドル操作が不能となり対向車線にはみ出し、会社員の乗用車と衝突、計5人が重軽傷を負った。
04年10月、トヨタは、1988年12月~1996年5月製造の「ハイラックス」330496台をリコール。不具合の状況「かじ取り装置のリレーロッドの強度が不足しているため、ハンドルの据え切り操作等の操舵力が高くなる使用を頻繁に長期間続けると亀裂が生じるものがある。そのため、そのまましようを続けると亀裂が進行し、最悪の場合、リレーロッドが折損し操舵ができなくなるおそれがある」として、「全車両、リレーロッドを対策品と交換する」改善内容を公開した(図2)。このリコール届出の際「国内の不具合は11件」と国土交通省に説明した。
06年7月11日、熊本県警が「トヨタ自動車が車の欠陥を知りながら8年間もリコールを届け出なかったため交通事故が起きた」として元トヨタ自動車品質部長(当時別会社の役員)、トヨタ自動車リコール監査室長、同社お客様品質部長の3名を業務上過失傷害で熊本地検に書類送検した。

②原因
 1.不具合情報の検討が不十分
トヨタの販売店では様々な不具合情報のうち「テクニカルリーダー」と呼ばれる有資格者が「メーカーに連絡する必要あり」と判断したトラブルについて、発生状況や修理作業の内容を「市場技術速報」として報告する体制をとっている。しかし「速報」からこぼれ落ちた顧客からの苦情や修理情報は直接的にリコールの検討に活かされず、また不具合情報の書類保管期限は5年と短く、96年以前の市場技術情報5件は把握していなかった。
2.仮想演習不足
書類送検された3人は「危険性を知っていたが人身事故が起きていなかったのでリコールしなかった」と述べている。据え切りでダメージを受けたリレーロッドが走行時に折損する危険性があることは、仮想演習すれば容易に明らかになる。また、不具合情報は人身事故の兆候と判断すべきであった。
3.リレーロッドの強度不足
ハイラックスは88年のフルモデルチェンジで前輪にかかる重さが95kg増加したが、従来のリレーロッドを使ったため強度不足となった。

③対策
 トヨタ自動車では、以下の再発防止策を国土交通省に提出した。
1.重要な不具合を専任で処理する社内組織の増強
2.いったんリコールを不要と判断しても、新たな不具合情報が入れば速やかに再検討できるよう、品質情報システムを改善
3.リコール検討会の検討結果の保存期間を10年から20年に延長
4.リコール業務の監査を年1回から当面4回に増加

④余話
 国土交通省によると、リコール放置による業務上過失傷害容疑などによる立件は、99年に滋賀県警が富士重工のレガシィ、02年に熊本県警などが三菱自動車のパジェロ、04年に神奈川県警、山口県警が三菱自動車(三菱ふそうトラック・バスに分社化)の計4件のみで、トヨタ自動車は本件が初めてであった。


【元ネタ記事】(失敗知識データベース)
http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200704.html


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。