整備白書R3年より その3 指定工場の適合標章発行の注意
今回は今年3月に発刊されたR3年整備白書を見ていて、拙人なりにこれは要注意として指定工場の適合標章の発行について注意点を記してみたい。
1.特定整備の内容再確認
特定整備制度はR2年4月1日より施行された制度だ。これは、道路運送車両法(第49条第2項)の規定を以下の様に変更している。
旧分解整備規定
原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置又は連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造であつて国土交通省令(※)で定めるもの
⬇
(新)特定整備規定
原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置又は自動運行装置(第四十一条第二項に規定する自動運行装置をいう。)を取り外して行う自動車の整備又は改造その他のこれらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造であつて国土交通省令(※)で定めるもの ※道路運送車両法施行規則第3条において規定
(特定整備の定義)
第三条 法第四十九条第二項の特定整備とは、第一号から第七号までのいずれかに該当するもの(以下「分解整備」という。)又は第八号若しくは第九号に該当するもの(以下「電子制御装置整備」という。)をいう。
一~七 (略)
八 次に掲げるもの(以下「運行補助装置」という。)の取り外し、取付位置若しく取付角度の変更又は機能の調整を行う自動車の整備又は改造(かじ取り装置又は制動装置の作動に影響を及ぼすおそれがあるものに限り、次号に掲げるものを除く。)
イ 自動車の運行時の状態及び前方の状況を検知するためのセンサー
ロ イに規定するセンサーから送信された情報を処理するための電子計算機
ハ イに規定するセンサーが取り付けられた自動車の車体前部又は窓ガラス
九 自動運行装置を取り外して行う自動車の整備又は改造その他の当該自動運行装置の作動に影響を及ぼすおそれがある自動車の整備又は改造
ここで、判ることは、従来分解整備とは、該当カ所を取外したり、すなわち分解することが条件だったが、特定整備では「これらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造」ということで、必ずしも分解でなく取付位置や角度や機能の調整を含むものと拡大されている。
なお、国交省では既に従来の「分解整備事業」という名称を「特定整備事業」と、事実上特定整備を行う前提で呼称を変更している。つまり、特定整備は、本事業を継続するには、新たな取得要件をパスして取得するのが当たり前の制度となっている。なお、国交省の説明は混乱する部分もあるが、特定整備=電子整備装置整備と考えれば良い。
さらに新「特定整備」呼ばれる場合、新たに認証が必要となる作業(電子制御装置整備)のみでなく、現在の分解整備も含む。
地方運輸局長の認証は
(1)分解整備のみを行うパターン
(2)電子制御装置整備のみを行うパターン
(3)分解整備及び電子制御装置整備の両方を行うパターン の3パターンを想定
2.経過猶予措置
改正法施行の際、現に電子制御装置整備に相当する事業を経営している整備事業者において
は、施行日から起算して4年を経過する日(R6年4月1日)までの間は、認証を受けるための準備期間として、引き続き、当該事業を経営することができるとしている。
3.点検基準の見直し
OBD検査の対象外としている大型特殊自動車、被牽引自動車、二輪自動車を除いた自動車の定期点検基準の点検項目について、「OBD(車載式故障診断装置)の診断の結果」を追加し、1年ごとに点検することを義務付け。
➀特定整備・点検の対象となる警告灯
点検は原動機、制動装置、アンチロックブレーキシステムの警告灯、エアバッグ(かじ取り装置並びに車枠及び車体に備えるものに限る。)、衝突被害軽減制動制御装置、自動命令型操舵機能及び自動運行装置に係る識別表示(道路運送車両法の保安基準に適合しないおそれがあるものとして警報するものに限る。)
②点検の実施方法
• イグニッション電源をオンにした状態で診断の対象となる識別表示が点灯することを確認し、原動機を始動させる。そして、診断の対象となる識別表示が点灯または点滅し続けていないかを目視により点検する。(ただし自動車メーカー等の作成するユーザーマニュアル等により点検を行うこととされている場合には、その方法により点検します。)
③整備の実施方法
• 点検の対象となる識別表示が点灯または点滅し続けている場合は、スキャンツール等を使用してその原因となる故障箇所を特定し、少なくとも整備作業が適切に完了しなくなるおそれがある作業については、自動車メーカー等の作成する整備要領書に基づいて整備を行う。
点検基準の改正により、指定工場における保安基準適合証の交付にも影響がでることから、点検基準の施行は、特定整備制度の施行から1年半後の令和3年10月1日に施行追加した点検項目を点検整備した際、どのようにして点検整備記録簿に記載するのかについては、「自動車の点検及び整備に関する手引」に記載
4.電子制御装置整備の認証のない指定自動車整備工場の業務可能範囲
・保安基準適合証の交付をするには、点検基準に従って点検・整備を行った上で、保安基準適合性の確認を行う制度となっている(道路運送車両法第94条の5)。
・このため、新点検基準が施行になると、原則として、電子制御装置整備に係る特定整備の認証を受けていない場合は、保安基準適合証を交付することはできない。
・ただし、電子制御装置整備に該当する装置を備え付けていない自動車については、当面の間、保安基準適合証の交付が可能。
<電子制御装置整備に該当する装置を備え付けている自動車についての保適証交付の可否 >
※経過措置(R6年4月1日)までに特定整備認証を取得していない指定工場にあっては、電子制御装置装備該当車にあっては、適合証交付は不可となるのは当然となる。また、新点検基準施行R3年10月1日以降の電子制御装置装備該当車も、既に保安基準適合標章の交付は不可である。
なお、特定整備(電子制御装置整備車)の認証がない等で、電子製後装置の認証工場へ外注することは可となる。
5.特定整備の普及状況
R3年整備白書には、R3年6月現在の特定整備(電子制御装置整備)の認証取得状況が、認証工場(指定工場外)と指定工場で集計されているが、それぞれ特定整備認証取得率は28%、36%となっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/78/e5ed5a4b66a9fbfb4d163d9eac8fb406.jpg)
6.指定工場での留意点
経過措置終了のR6年4月1日までは、未だ猶予があるとはいえ、特に指定工場において、通常の継続検査ではOBD車検の実施日と同一のR6年10月1日まで問題がないかの様に理解している事業者もいるのかもしれない。
しかし、一時抹消していたりして、中古車新規で再登録しようと再登録書類に保安基準適合標章を添えて提出した場合、既にR3年10月1日以降となるため、特定認証未取得の指定工場では適合標章の発行は法令違反となる点に留意が必要だろう。
その車両が、いわゆる先に述べた電子制御装置装備車(衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置付き車)の場合を前提としてだ。このことは、該当工場が無意識の中で、何らかの監査を受けて発覚すれば、適合証の発行不適当と云うことで罰則を受けてしまう危険があると思える。
#特定整備=電子制御装置整備車 #保安基準適合標章発行は既に特定整備認証がないと法令違反
今回は今年3月に発刊されたR3年整備白書を見ていて、拙人なりにこれは要注意として指定工場の適合標章の発行について注意点を記してみたい。
1.特定整備の内容再確認
特定整備制度はR2年4月1日より施行された制度だ。これは、道路運送車両法(第49条第2項)の規定を以下の様に変更している。
旧分解整備規定
原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置又は連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造であつて国土交通省令(※)で定めるもの
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(新)特定整備規定
原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置又は自動運行装置(第四十一条第二項に規定する自動運行装置をいう。)を取り外して行う自動車の整備又は改造その他のこれらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造であつて国土交通省令(※)で定めるもの ※道路運送車両法施行規則第3条において規定
(特定整備の定義)
第三条 法第四十九条第二項の特定整備とは、第一号から第七号までのいずれかに該当するもの(以下「分解整備」という。)又は第八号若しくは第九号に該当するもの(以下「電子制御装置整備」という。)をいう。
一~七 (略)
八 次に掲げるもの(以下「運行補助装置」という。)の取り外し、取付位置若しく取付角度の変更又は機能の調整を行う自動車の整備又は改造(かじ取り装置又は制動装置の作動に影響を及ぼすおそれがあるものに限り、次号に掲げるものを除く。)
イ 自動車の運行時の状態及び前方の状況を検知するためのセンサー
ロ イに規定するセンサーから送信された情報を処理するための電子計算機
ハ イに規定するセンサーが取り付けられた自動車の車体前部又は窓ガラス
九 自動運行装置を取り外して行う自動車の整備又は改造その他の当該自動運行装置の作動に影響を及ぼすおそれがある自動車の整備又は改造
ここで、判ることは、従来分解整備とは、該当カ所を取外したり、すなわち分解することが条件だったが、特定整備では「これらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造」ということで、必ずしも分解でなく取付位置や角度や機能の調整を含むものと拡大されている。
なお、国交省では既に従来の「分解整備事業」という名称を「特定整備事業」と、事実上特定整備を行う前提で呼称を変更している。つまり、特定整備は、本事業を継続するには、新たな取得要件をパスして取得するのが当たり前の制度となっている。なお、国交省の説明は混乱する部分もあるが、特定整備=電子整備装置整備と考えれば良い。
さらに新「特定整備」呼ばれる場合、新たに認証が必要となる作業(電子制御装置整備)のみでなく、現在の分解整備も含む。
地方運輸局長の認証は
(1)分解整備のみを行うパターン
(2)電子制御装置整備のみを行うパターン
(3)分解整備及び電子制御装置整備の両方を行うパターン の3パターンを想定
2.経過猶予措置
改正法施行の際、現に電子制御装置整備に相当する事業を経営している整備事業者において
は、施行日から起算して4年を経過する日(R6年4月1日)までの間は、認証を受けるための準備期間として、引き続き、当該事業を経営することができるとしている。
3.点検基準の見直し
OBD検査の対象外としている大型特殊自動車、被牽引自動車、二輪自動車を除いた自動車の定期点検基準の点検項目について、「OBD(車載式故障診断装置)の診断の結果」を追加し、1年ごとに点検することを義務付け。
➀特定整備・点検の対象となる警告灯
点検は原動機、制動装置、アンチロックブレーキシステムの警告灯、エアバッグ(かじ取り装置並びに車枠及び車体に備えるものに限る。)、衝突被害軽減制動制御装置、自動命令型操舵機能及び自動運行装置に係る識別表示(道路運送車両法の保安基準に適合しないおそれがあるものとして警報するものに限る。)
②点検の実施方法
• イグニッション電源をオンにした状態で診断の対象となる識別表示が点灯することを確認し、原動機を始動させる。そして、診断の対象となる識別表示が点灯または点滅し続けていないかを目視により点検する。(ただし自動車メーカー等の作成するユーザーマニュアル等により点検を行うこととされている場合には、その方法により点検します。)
③整備の実施方法
• 点検の対象となる識別表示が点灯または点滅し続けている場合は、スキャンツール等を使用してその原因となる故障箇所を特定し、少なくとも整備作業が適切に完了しなくなるおそれがある作業については、自動車メーカー等の作成する整備要領書に基づいて整備を行う。
点検基準の改正により、指定工場における保安基準適合証の交付にも影響がでることから、点検基準の施行は、特定整備制度の施行から1年半後の令和3年10月1日に施行追加した点検項目を点検整備した際、どのようにして点検整備記録簿に記載するのかについては、「自動車の点検及び整備に関する手引」に記載
4.電子制御装置整備の認証のない指定自動車整備工場の業務可能範囲
・保安基準適合証の交付をするには、点検基準に従って点検・整備を行った上で、保安基準適合性の確認を行う制度となっている(道路運送車両法第94条の5)。
・このため、新点検基準が施行になると、原則として、電子制御装置整備に係る特定整備の認証を受けていない場合は、保安基準適合証を交付することはできない。
・ただし、電子制御装置整備に該当する装置を備え付けていない自動車については、当面の間、保安基準適合証の交付が可能。
<電子制御装置整備に該当する装置を備え付けている自動車についての保適証交付の可否 >
※経過措置(R6年4月1日)までに特定整備認証を取得していない指定工場にあっては、電子制御装置装備該当車にあっては、適合証交付は不可となるのは当然となる。また、新点検基準施行R3年10月1日以降の電子制御装置装備該当車も、既に保安基準適合標章の交付は不可である。
なお、特定整備(電子制御装置整備車)の認証がない等で、電子製後装置の認証工場へ外注することは可となる。
5.特定整備の普及状況
R3年整備白書には、R3年6月現在の特定整備(電子制御装置整備)の認証取得状況が、認証工場(指定工場外)と指定工場で集計されているが、それぞれ特定整備認証取得率は28%、36%となっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/78/e5ed5a4b66a9fbfb4d163d9eac8fb406.jpg)
6.指定工場での留意点
経過措置終了のR6年4月1日までは、未だ猶予があるとはいえ、特に指定工場において、通常の継続検査ではOBD車検の実施日と同一のR6年10月1日まで問題がないかの様に理解している事業者もいるのかもしれない。
しかし、一時抹消していたりして、中古車新規で再登録しようと再登録書類に保安基準適合標章を添えて提出した場合、既にR3年10月1日以降となるため、特定認証未取得の指定工場では適合標章の発行は法令違反となる点に留意が必要だろう。
その車両が、いわゆる先に述べた電子制御装置装備車(衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置付き車)の場合を前提としてだ。このことは、該当工場が無意識の中で、何らかの監査を受けて発覚すれば、適合証の発行不適当と云うことで罰則を受けてしまう危険があると思える。
#特定整備=電子制御装置整備車 #保安基準適合標章発行は既に特定整備認証がないと法令違反