私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

elk(moose) Test のことから

2017-01-25 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 elk(エルク)とは北欧でのヘラ鹿(英名ではムース:moose)を指すが、これが前方路上を横断しようと表れたのを回避する動作を模擬した車両安定性のテストがある。つまり、一旦、右なり左に転舵し、素早く反対方向に転舵し直すというダブルレーンチェンジ動作となる。

 このテストを知ったのは、1997年のベンツ初のFF車である、初代Aクラス(W168)の登場間もない、同テストでの転倒事故と、全面リコール回収からだった。改修内容は、全社にVSC(4輪個別制御のスタビリティコントロール)装着およびサスペンションのセッティングだった様だ。

 このクルマ、過去に半年程所有し走り廻ったことがあるのだが、印象を一言で言えば「トラックの様な乗り心地」となるだろう。たぶん、当初の設計から、エルクテストでの転倒対策として、相当にバネレートをアップしたのが要因だろう。このクルマ、ドアはかなり下方から開くが、床はドア開口下端から20cmくらい高いのだ。ルーフ高さも高めであるが、床が高いため室内高さが一般セダンと変わらない。しかも、現代国産車で流行の急傾斜平板フロントガラスと太いAピラーで、右前方の死角は大きいというクルマの発祥となったクルマではないかと思っている。

 ロードクリアランスはそのままで、何故床を20cmも上げたのか? 衝突安全だとか説明もあるが、床下にバッテリーを格納したいという思惑があったからだろうと思っている。実際、試作燃料電池車が、少量生産されている。

 しかし、思うのは、現代国産車なら、雑な実験評価しかしてないから判るが、あのベンツがこういう低レベル走行安定性のクルマを作るのかと驚いたものだった。しかし、過去のベンツというクルマに寄せた信頼感とか完成度の高さが、現代へと連綿と引き続き低下する端緒となったクルマというのが私見なのだ。

※写真2は、運転席(右)床下に格納されたバッテリーとヒューズ&リレーブロック。床下空間は広大にがらんどうであり、意味ないパッケージングだ。

追記
 ベンツのFF進出から数年遅れ、BMWも初のFFを開発した。といってもブランドは買い取った「ミニ」であるが、あくまでも設計はBMW流儀である。これも、堅めのサスペンションを持つが、デザインモチーフとしてのミニと、キビキビ動く「ゴーカートカー」としてのミニの走り感から生まれたもの。



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