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【書評】 悪徳弁護士(リアルな弁護士活動の2事例)

2021-06-25 | 論評、書評、映画評など
【書評】 悪徳弁護士(リアルな弁護士活動の2事例)
 この本は、日頃から社会正義はどうあるべきかという大前提と共に弁護士の適正なあり方とはという事に感心を持つ中で、図書館のデータベースを検索中に発見し、借り出した書籍だ。

 本の概要だが、フィクションミステリー小説のごとき内容で、二人の弁護士が登場する。
 一人は悪徳不動産業とヤミ金融業の狭間興産の顧問弁護士の川野という男だ。この川野は、刑事弁護を儲からない仕事とけなし、民事弁護を中心に活動している。もう一人は村上という個人弁護士だが、民事事件より刑事事件の活動に意欲を燃やす弁護士だ。

 物語は、この2人の弁護士が互いに場面を変えながら、映画チックに書き進められているが、なかなか巧い場面構成で、映画化でもされたら面白いものとなりそうだ。

 ところで、作者の山之内幸夫は元山口組の顧問弁護士だったという前歴を持つ弁護士だが、幾つか懲戒処分を受けて、現在(といっても既に10年程前)から、弁護士を廃業しているそうだ。そういう人物が描く物語だけあって、登場人物たる悪役や善人、警察の自供自白至上主義とか検事や判事の物言いにも、いかにも門外漢には真実味を感じる。

 作者はあとがきで、「刑事事件の弁護士が、その依頼人(被告)の無罪を争っている中で、被告の有罪を知ってしまったらどういう葛藤が生じるか。それは、弁護人としての良心と信念が問われる究極の事態になる。」と記しており、それは物語の中で村上弁護士の立場に相当する。

 また、著者は本書のタイトルとなる悪徳弁護士をこう定義している。世間では、法の抜け道を教えたり、悪事を隠蔽したり、法律知識を逆手に取り悪に仕える弁護士をイメージするだろうが、そんなレベルではない。そもそも、依頼人に法的サービスを提供し、その対価を請求している域では。未だ悪徳の域には達しない。人の弱みにつけ込んで、より深い穴に落とし込み、当事者以上の支配者として何もかも根こそぎ奪い取るまでを行うのが悪徳とは云えないと考えている。また、こうも云う。善人か無知な者を手玉に取ってこその悪徳であり、そのために必用なのは弁護士という立場、法律知識、そして資金力である。金を持っていない弁護士は、依頼人を窮地に追い込む構図に落とし込めないから、本当の悪徳にはなれない。また、本当の悪徳は、貧乏人を相手にしないから、一般の方が被害を受けることもない。法的サービスを提供する様な小商いをせず、根こそぎ収奪するテクニックを弄するのが悪徳であり、10年に一回仕事をすれば済むくらいの事件を虎視眈々と狙う。ということで、物語の中で、川野こそ悪徳弁護士の事例だろうと呆れつつ読み進めるが、これでも中級の悪徳だと作者は記している。

追記
 この本で知る闇言葉で「B勘」というのを知る。 「ブラックマネー」のBと、「裏勘定」の勘をもじった名称で、 かぶり屋ともいうそうだ。 不動産業者などと結託して仲介手数料の名目で偽領収書を発行し,不動産業者が架空の経費を計上して脱税するのを手助けする業者のことだそうだ。
 物語の中では、狭間興産が物件価格70億の土地建物を売り手の弱みにつけ込んで買収する際、ダミーとしての自ら作り上げるB勘を間に入れ、40億で買ったことにして、配下の上昇志向だけが頼りの若い子分を、B勘経営者にして、しかも売上40億を持ち逃げして、刑事捜査で不認を貫けば、5年のムショ暮らしで出所後に8千万の礼金を出すと誘う。それが成功すれば、40億の不動産取得税や住民税はチャラになり約15億程が浮いてしまうという算段が紹介されている。

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