今、メディアはEVが近未来の主流だと喧伝しているが、俄には信じがたい話しだと思っている。そもそも、EV熱がヒートアップした切っ掛けはテスラへの注目でもないと云うのが私見だ。EV加速への大きな要因は、およそ自動車産業で最大の破廉恥であるVWのディーゼル廃ガス詐欺(つまりディフェードデバイスの実装)というところにあると考えている。それまで。日本に製造コストや純HV(PHVは作れるが所詮モーターを付加しただけの半HV)の製造で大きな遅れを取り、燃費性能で追いつけず、ディーゼルに望みを託していたのが欧州メーカー(実質ドイツメーカー)だったが、ディーゼルの排ガス浄化は極めて難しく、米国輸出で大量販売を目論んだVWは、とうとう禁断の道に踏み込んでしまったのだった。VW以外のダイムラーやBMWでも、ディーゼル拡販には望みを繋いでいたことは確かで、米国での訴追こそなされていないが、このままディーゼルに望みを託すのは無理筋と自覚したのだろう。一転してEVに切り替えたというのが真相だろう。これらドイツメーカーは、日本と同様に大挙して中国に進出しており、そこで中国権力者に今後はEVだとネジを巻いたというところだろう。それが、推定だが現時点での全世界でのEV市場100万台の半数以上が中国だという現状に結び付いている。なお、補足までにガソリン、ディーゼルまで入れた全世界の総市場は1億台弱というところの様だ。
ここで、工学系でない方向けに、EVカーというと、さも先進的で高度な技術力がないと製造できないという思いの方がいたなら、大きな考え違いなので補足しておきたい。そもそも、自動車の歴史を紐解くと、なかなか性能の良い内燃機関が出来ない初期の頃(80年位前)、一時EVカーというのが市場を占有したことがあるのだ。つまりモーターを使って走るだけなら、燃費や廃ガスの高性能ガソリンエンジンを作るより、より低コストで簡易に自動車を作ることが出来るのだ。だたし、内燃機関並みの航続距離だとかを得るには、高性能なバッテリーが多数必要になるなど、EV車のコストはバッテリーのコストが要になる。しかし、スマホやデジカメなど、バッテリー機器で多く経験するように、バッテリーは繰り返し充電による劣化が著しく、カタログスペックの航続距離が得られるのは僅か数年というのが、現状のバッテリーの限界なのだ。そこで、性能をカタログスペックまで回復しようとすると、バッテリーユニットを交換することになるが、スマホやデジカメであれば数千円で単一バッテリーを買えれば済むが、これを何百本も詰め込んだ自動車用バッテリーパックは、100万円オーダーの費用となってしまうのだ。だから、日本でも過去に販売されたEVカーの中古車相場価は、哀れな程の低価格となってしまっているという現状があるのだ。この辺りは、技術革新により現状の最高性能小型バッテリーとしてのリチウムイオンバッテリーに代わる高性能なものが出来れば、様変わりする可能性はあるのかもしれない。しかし、EVの電気も原子力も含むのだろうが大半は石油もしくは天然ガスなど、炭化水素系(HC)エネルギーが元だ。それを直接燃焼させて動力を取り出すのが内燃機関自動車で、一旦電気という媒介に変えバッテリーに充電して、取り出しモーターを駆動するのがEV車だが、真のエネルギーを動力に変える熱効率は、内燃機関で直接燃やして取り出す方が高いという説がある。それは、一旦電力という媒介に変えるロス、送電ロス、充電によるロス、バッテリーの劣化によるロスなど、エネルギーを返還する際のロスが付きまとうからと云うことになるのだろう。また、CO2や排気ガスの問題も多く云われることだが、私見だが果たしてCO2が直接温暖化に結び付くのか、また地球が温暖化しているのか、様々な説がある様だが、何か恣意的な力学も働いている様に思えてならない。
さて、やっと本論だが、現在中国には100を越える新興自動車メーカーがあるらしい。そんな中、まともな量産車を作っているのは、日欧米の車両メーカーが進出し、中国企業と合弁で車両製造を行っている企業がほとんどの様だ。それでも、BYDだとか幾つかのEVメーカーがある程度名前を知られてる。ここで、中国だけの内燃機関のメーカーはない。つまり、高性能の内燃機関は中国単独では作れないことを示している。ロケットやICBMなどの一品物は作れても、たかが自動車でも量産品となると作れないのが彼の国の実力だ。おまけに内燃機関だと、その出力特性故に、オートマチックトランスミションも必用だが、こんなの到底出来ないのが実力だろう。だが、EVだとトランスミッションも不要で、日本製のパワー半導体さえ調達すればインバーター回路でモーターの出力制御やエネルギー回収程度は出来るだろう。ただし、トヨタがやってるような、ブレーキバイワイヤーと協調した、回生ブレーキ制御までは出来ないだろう。
この様な現状の中、元BMW出身の操業者が立ち上げ、中国初の車両メーカー「第一汽車」の出資を得ているメーカーが「バイトン」だった。計画では2019年中に1号車を発売する予定だったが未達の状態であったが、以下記事に様に既に崩壊寸前の様だ。
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8億ドルを一瞬で溶かした中国新興EV「バイトン」、その崩壊の舞台裏(上)
7/24(金) 8:00配信 Kr Japan
中国の新興電気自動車(EV)メーカー「BYTON(拜騰)」(以下、バイトン)のダニエル・カーチャート(Daniel Kirchert)CEOは6月29日、中国本土での事業を7月1日から一時的に停止すると従業員に通達し、一部の従業員以外に自宅待機を求めた。
このニュースに驚く人はいなかった。バイトンは86億元(約1300億円)の負債を抱え、すでに北京と上海のオフィスを閉鎖、北米とドイツのオフィスは破産を申請、南京本社も事業を停止。全従業員数を約1500人から約100人まで激減させていた。
中国新興自動車メーカーの生存競争は想像以上に過酷だった。バイトンは初の市販EV「M-Byte」の量産を実現することなく競争から脱落していった。
多額の資金調達をするも新型車の発売に至らず バイトンの経営層たち
バイトンの経営幹部には、BMWでプラグインハイブリッド車「i8」の開発を率いたカルステン・ブレットフィールド(Carsten Breitfeld)氏や日産自動車の高級車ブランド「Infiniti」の中国法人総経理を務めたカーチャート氏をはじめとする豪華な顔触れが並び、彼らの下にはアップルやグーグル、BMW、フォード、マツダ、テスラなどから優秀な人材が集まった。
バイトンは2018年、シリーズBで車載電池最大手の「寧徳時代(CATL)」から5億ドル(約540億円)を調達。シリーズCでの資金調達以前に累計8億ドル(約860億円)を調達したことが明らかになっている。
同社初の市販モデル「M-Byte」は、ダッシュボードに搭載した48インチの大型ディスプレーや回転可能なフロントシートなど、先進的なデザインで注目を集めていた。
高級ブランドを目指したバイトンは、サプライヤーの選定において「最も高価なものが最も良い」とする原則を崩さなかった。情報筋によると、1億元(約15億円)近くを投じ、自動車部品世界最大手の独「ボッシュ(Bosch)」に車両制御ユニット(VCU)の開発を委託している。VCU開発費の相場は数百万元(数千万円)であるにもかかわらずだ。
バイトンの高級志向はこれにとどまらなかった。上海初のショールームを開設した際は、従業員の制服をドイツ製のオーダーメードとした。中国エリアの従業員の名刺も輸入エコ材料にこだわり、1箱1000元(約15000円)のコストをかけた。ちなみに中国国内の相場は1箱約300元(約4500円)だ。従業員数約300人の北米オフィスでは、軽食代だけで年間700万ドル(約7億5000万円)をかけた。従業員1人が年間2万ドル(約210万円)分の軽食を食べたことになる。
結果は見ての通り。資金は底をついた。けれども車は未だに出来上がらない。
資金繰りに窮したバイトンは、スタンダードチャーター銀行の担当者に出資者との調整を依頼した。だが、すでにタイミングを逸しており、好ましい結果は得られなかった。バイトンの幹部社員は「公表していたシリーズCでの調達額は5億ドル(約540億円)だったが、実際に契約に至ったのは2億ドル(約210億円)未満、入金があったのは5000万ドル(約54億円)未満だった」と明かした。
バイトンが公表したシリーズCの出資者のうち、丸紅はバイトンと資本業務提携し、EVバッテリー事業などを推進するとしていたが、出資額は数百万ドル(数億円)だった。韓国の自動車部品メーカー「MS Autotech」の子会社「Myoung Shin」は、予定していた出資額の1割を入金した後、出資を中断している。
カーチャート氏は6月1日の社員総会の席上、中国エリアの従業員約1400人の給与、総額9000万元(約14億円)の遅配を認めた。消息筋によると、北米オフィスの従業員は500人未満だが、今年3月の人件費は中国エリア全体の3倍だったという。
バイトンをむしばんだ「大企業病」と幹部同士の不和
輝かしい経歴を持つ経営幹部らは、バイトンという新興企業に「大企業病」を持ち込んだ。
ブレットフィールド氏にもカーチャート氏にも創業者としての使命感と緊張感が欠けていた。外国籍の経営幹部らは最前線で何が起きているか全く理解していなかった。仕事のペースは緩く、週末にはほとんど出勤せず、一部の経営幹部は新型コロナウイルスの感染拡大期間に「所在不明」になっていた。
早期に入社した従業員の多くは当時を振り返り「本当の意味で会社のために責任を取ろうとする幹部はいなかった」と述べている。より深刻な問題は、ブレットフィールド氏とカーチャート氏の摩擦が日増しに激しくなったことだった。両者の関係は当初は良好だった。だが、立場も性格も異なる両者の矛盾が徐々に明らかになり、最終的には足の引っ張り合いにまで発展した。
2018年の春節、並んで取材を受けるカーチャート氏(右)とブレットフィールド氏(左)(バイトンの「微信(WeChat)」公式アカウントより)
ブレットフィールド氏は、中国国外における自身の勢力拡大を狙っていた。バイトンのCEO就任後は米国の人員を急速に増員し、同社の自動車に関する技術や研究開発、サプライチェーン、製造など中心的な事業を掌握した。
野心的なブレットフィールド氏とは対照的に、カーチャート氏はためらいがちで温和な性格のため、権力を手にすることはなく、当初は中国エリアにおける市場・求人・財務関係の業務のみを担当していた。バイトンの社員によると、2018年6月に開かれたエレクトロニクス製品の見本市「CES ASIA」の準備期間中、両者はセダンタイプのコンセプトカー「K-Byte」の世界初披露における発言時間の長さや発言の順番で争い、互いに一歩も引かなかったという。
ブレットフィールド氏とカーチャート氏の争いの過程では多数の派閥ができ、社内の求心力は低下した。正常な組織運営が妨げられ、部門間の協力も難しくなった。
両者の争いはブレットフィールド氏の敗走で幕を閉じた。昨年1月25日付けの社内文書でカーチャート氏のCEO就任が発表され、ブレットフィールド氏に近い複数の幹部が数カ月以内に離職することが明らかになった。当然の結果としてブレットフィールド氏もバイトンを離れることとなった。
残念なことに、同年4月にブレットフィールド氏が離職して以降、バイトンは管理職の人事刷新や管理制度を再構築するチャンスを逃してしまった。カーチャート氏が以前にも増して中国籍以外の社員を信任するようになったため、外国人管理職の割合が高くなり、中国人社員の発言力が弱まった。しかも、各部門同士や上司と部下の間の意思疎通を図るためのチャネルや有効なメカニズムも欠けていた。
ここで、工学系でない方向けに、EVカーというと、さも先進的で高度な技術力がないと製造できないという思いの方がいたなら、大きな考え違いなので補足しておきたい。そもそも、自動車の歴史を紐解くと、なかなか性能の良い内燃機関が出来ない初期の頃(80年位前)、一時EVカーというのが市場を占有したことがあるのだ。つまりモーターを使って走るだけなら、燃費や廃ガスの高性能ガソリンエンジンを作るより、より低コストで簡易に自動車を作ることが出来るのだ。だたし、内燃機関並みの航続距離だとかを得るには、高性能なバッテリーが多数必要になるなど、EV車のコストはバッテリーのコストが要になる。しかし、スマホやデジカメなど、バッテリー機器で多く経験するように、バッテリーは繰り返し充電による劣化が著しく、カタログスペックの航続距離が得られるのは僅か数年というのが、現状のバッテリーの限界なのだ。そこで、性能をカタログスペックまで回復しようとすると、バッテリーユニットを交換することになるが、スマホやデジカメであれば数千円で単一バッテリーを買えれば済むが、これを何百本も詰め込んだ自動車用バッテリーパックは、100万円オーダーの費用となってしまうのだ。だから、日本でも過去に販売されたEVカーの中古車相場価は、哀れな程の低価格となってしまっているという現状があるのだ。この辺りは、技術革新により現状の最高性能小型バッテリーとしてのリチウムイオンバッテリーに代わる高性能なものが出来れば、様変わりする可能性はあるのかもしれない。しかし、EVの電気も原子力も含むのだろうが大半は石油もしくは天然ガスなど、炭化水素系(HC)エネルギーが元だ。それを直接燃焼させて動力を取り出すのが内燃機関自動車で、一旦電気という媒介に変えバッテリーに充電して、取り出しモーターを駆動するのがEV車だが、真のエネルギーを動力に変える熱効率は、内燃機関で直接燃やして取り出す方が高いという説がある。それは、一旦電力という媒介に変えるロス、送電ロス、充電によるロス、バッテリーの劣化によるロスなど、エネルギーを返還する際のロスが付きまとうからと云うことになるのだろう。また、CO2や排気ガスの問題も多く云われることだが、私見だが果たしてCO2が直接温暖化に結び付くのか、また地球が温暖化しているのか、様々な説がある様だが、何か恣意的な力学も働いている様に思えてならない。
さて、やっと本論だが、現在中国には100を越える新興自動車メーカーがあるらしい。そんな中、まともな量産車を作っているのは、日欧米の車両メーカーが進出し、中国企業と合弁で車両製造を行っている企業がほとんどの様だ。それでも、BYDだとか幾つかのEVメーカーがある程度名前を知られてる。ここで、中国だけの内燃機関のメーカーはない。つまり、高性能の内燃機関は中国単独では作れないことを示している。ロケットやICBMなどの一品物は作れても、たかが自動車でも量産品となると作れないのが彼の国の実力だ。おまけに内燃機関だと、その出力特性故に、オートマチックトランスミションも必用だが、こんなの到底出来ないのが実力だろう。だが、EVだとトランスミッションも不要で、日本製のパワー半導体さえ調達すればインバーター回路でモーターの出力制御やエネルギー回収程度は出来るだろう。ただし、トヨタがやってるような、ブレーキバイワイヤーと協調した、回生ブレーキ制御までは出来ないだろう。
この様な現状の中、元BMW出身の操業者が立ち上げ、中国初の車両メーカー「第一汽車」の出資を得ているメーカーが「バイトン」だった。計画では2019年中に1号車を発売する予定だったが未達の状態であったが、以下記事に様に既に崩壊寸前の様だ。
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8億ドルを一瞬で溶かした中国新興EV「バイトン」、その崩壊の舞台裏(上)
7/24(金) 8:00配信 Kr Japan
中国の新興電気自動車(EV)メーカー「BYTON(拜騰)」(以下、バイトン)のダニエル・カーチャート(Daniel Kirchert)CEOは6月29日、中国本土での事業を7月1日から一時的に停止すると従業員に通達し、一部の従業員以外に自宅待機を求めた。
このニュースに驚く人はいなかった。バイトンは86億元(約1300億円)の負債を抱え、すでに北京と上海のオフィスを閉鎖、北米とドイツのオフィスは破産を申請、南京本社も事業を停止。全従業員数を約1500人から約100人まで激減させていた。
中国新興自動車メーカーの生存競争は想像以上に過酷だった。バイトンは初の市販EV「M-Byte」の量産を実現することなく競争から脱落していった。
多額の資金調達をするも新型車の発売に至らず バイトンの経営層たち
バイトンの経営幹部には、BMWでプラグインハイブリッド車「i8」の開発を率いたカルステン・ブレットフィールド(Carsten Breitfeld)氏や日産自動車の高級車ブランド「Infiniti」の中国法人総経理を務めたカーチャート氏をはじめとする豪華な顔触れが並び、彼らの下にはアップルやグーグル、BMW、フォード、マツダ、テスラなどから優秀な人材が集まった。
バイトンは2018年、シリーズBで車載電池最大手の「寧徳時代(CATL)」から5億ドル(約540億円)を調達。シリーズCでの資金調達以前に累計8億ドル(約860億円)を調達したことが明らかになっている。
同社初の市販モデル「M-Byte」は、ダッシュボードに搭載した48インチの大型ディスプレーや回転可能なフロントシートなど、先進的なデザインで注目を集めていた。
高級ブランドを目指したバイトンは、サプライヤーの選定において「最も高価なものが最も良い」とする原則を崩さなかった。情報筋によると、1億元(約15億円)近くを投じ、自動車部品世界最大手の独「ボッシュ(Bosch)」に車両制御ユニット(VCU)の開発を委託している。VCU開発費の相場は数百万元(数千万円)であるにもかかわらずだ。
バイトンの高級志向はこれにとどまらなかった。上海初のショールームを開設した際は、従業員の制服をドイツ製のオーダーメードとした。中国エリアの従業員の名刺も輸入エコ材料にこだわり、1箱1000元(約15000円)のコストをかけた。ちなみに中国国内の相場は1箱約300元(約4500円)だ。従業員数約300人の北米オフィスでは、軽食代だけで年間700万ドル(約7億5000万円)をかけた。従業員1人が年間2万ドル(約210万円)分の軽食を食べたことになる。
結果は見ての通り。資金は底をついた。けれども車は未だに出来上がらない。
資金繰りに窮したバイトンは、スタンダードチャーター銀行の担当者に出資者との調整を依頼した。だが、すでにタイミングを逸しており、好ましい結果は得られなかった。バイトンの幹部社員は「公表していたシリーズCでの調達額は5億ドル(約540億円)だったが、実際に契約に至ったのは2億ドル(約210億円)未満、入金があったのは5000万ドル(約54億円)未満だった」と明かした。
バイトンが公表したシリーズCの出資者のうち、丸紅はバイトンと資本業務提携し、EVバッテリー事業などを推進するとしていたが、出資額は数百万ドル(数億円)だった。韓国の自動車部品メーカー「MS Autotech」の子会社「Myoung Shin」は、予定していた出資額の1割を入金した後、出資を中断している。
カーチャート氏は6月1日の社員総会の席上、中国エリアの従業員約1400人の給与、総額9000万元(約14億円)の遅配を認めた。消息筋によると、北米オフィスの従業員は500人未満だが、今年3月の人件費は中国エリア全体の3倍だったという。
バイトンをむしばんだ「大企業病」と幹部同士の不和
輝かしい経歴を持つ経営幹部らは、バイトンという新興企業に「大企業病」を持ち込んだ。
ブレットフィールド氏にもカーチャート氏にも創業者としての使命感と緊張感が欠けていた。外国籍の経営幹部らは最前線で何が起きているか全く理解していなかった。仕事のペースは緩く、週末にはほとんど出勤せず、一部の経営幹部は新型コロナウイルスの感染拡大期間に「所在不明」になっていた。
早期に入社した従業員の多くは当時を振り返り「本当の意味で会社のために責任を取ろうとする幹部はいなかった」と述べている。より深刻な問題は、ブレットフィールド氏とカーチャート氏の摩擦が日増しに激しくなったことだった。両者の関係は当初は良好だった。だが、立場も性格も異なる両者の矛盾が徐々に明らかになり、最終的には足の引っ張り合いにまで発展した。
2018年の春節、並んで取材を受けるカーチャート氏(右)とブレットフィールド氏(左)(バイトンの「微信(WeChat)」公式アカウントより)
ブレットフィールド氏は、中国国外における自身の勢力拡大を狙っていた。バイトンのCEO就任後は米国の人員を急速に増員し、同社の自動車に関する技術や研究開発、サプライチェーン、製造など中心的な事業を掌握した。
野心的なブレットフィールド氏とは対照的に、カーチャート氏はためらいがちで温和な性格のため、権力を手にすることはなく、当初は中国エリアにおける市場・求人・財務関係の業務のみを担当していた。バイトンの社員によると、2018年6月に開かれたエレクトロニクス製品の見本市「CES ASIA」の準備期間中、両者はセダンタイプのコンセプトカー「K-Byte」の世界初披露における発言時間の長さや発言の順番で争い、互いに一歩も引かなかったという。
ブレットフィールド氏とカーチャート氏の争いの過程では多数の派閥ができ、社内の求心力は低下した。正常な組織運営が妨げられ、部門間の協力も難しくなった。
両者の争いはブレットフィールド氏の敗走で幕を閉じた。昨年1月25日付けの社内文書でカーチャート氏のCEO就任が発表され、ブレットフィールド氏に近い複数の幹部が数カ月以内に離職することが明らかになった。当然の結果としてブレットフィールド氏もバイトンを離れることとなった。
残念なことに、同年4月にブレットフィールド氏が離職して以降、バイトンは管理職の人事刷新や管理制度を再構築するチャンスを逃してしまった。カーチャート氏が以前にも増して中国籍以外の社員を信任するようになったため、外国人管理職の割合が高くなり、中国人社員の発言力が弱まった。しかも、各部門同士や上司と部下の間の意思疎通を図るためのチャネルや有効なメカニズムも欠けていた。