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ルーフブレージング接合が流行るか?

2021-12-26 | 技術系情報
ルーフブレージング接合が流行るか?
 車両の一体式サイドパネルが、ホンダで採用されだした40年前から、ABC各ピラーとか、下部のロッカーアウター、上部のルーフサイドアウターの応力負担に応じた異なる板厚の鋼板を接合しておきそれをブランクする、いわゆるテーラードブランク鋼板の使用が一般的になって20年余を過ぎた。

 このテーラードブランク鋼板のプレス製品となる左右サイドパネルと、ルーフパネルは糊代となる上部左右の凹部でスポット溶接され、その後にカチオン電着後にシーリングされ、凹部をフタするモールディングを嵌め込むというのが現在までの乗用車のデファクトスタンダードな生産技術として世界に普及していた。

 それが、VW・アウディ連合が、従来のアークに変わり、さらに熱源を集中させたレーザービームを使用することで、ウェルディング(溶接)およびブレージング(ろう付け)に応用し始めて約10年を経る。


 しかし、筆者はレーザービームによる線溶接は、車体修理の際における補修性に従来のスポット溶接と比べ難があることから、生産性としてのコスト圧縮も含め利は薄いと見てきたのだが、近似、トヨタではレーザースクリューウェルディングという、レーザーでスポット同等の小さな円を描く様な溶接で、スポット溶接では隣接部位と至近となると無効分流のため十分な溶接強度が出ないという問題を解決したことで、補修性にもさほど難が生じることもなく、単位長さ当りの接合部位を増すことで接合強度を高めるというところで、薄板鋼板用のレーザー接合の解は決定したと考えている。

 一方、VW・アウディが行う、左右ルーフサイドとルーフのレーザーブレージングだが、確かに生産プラントでは、的確なジグと溶接ロボットの使用により、ほとんど仕上げの手間もいらず、別部品としてのモールディングも不要とし、シーリング工程も不要となることで、生産性を上げるという思考は理解するところだ。しかし、事後の車体修理で該当部位パネルを変えるという場合、そもそも生産ラインの様なジグが用立てることはできず、しかも補修用のレーザービーム溶接機はない、またあったところで、その極小ビームを的確にぶらさず的確な速度で送ることは人の能力を超える世界だからして、同工法での復元は困難だと結論付けて来た。

 ところが、VW・アウディに続き、近年ホンダの軽自動車にも採用され出し、既に発表済みで生産開始が立ち上がっている日産アリアのルーフにも採用されだしたという事象を眺める時、原価1円をケチる車両メーカーとしては、これを次期の主流工法に引き上げる機運が生じて来たと見るべきではないかと思えるのだ。
 確かに、生産コストとしては圧縮できる余地はあり、何事もなければルーフ上面のモールも廃してスッキリ感も増す。従来からモール付きでも、ここが錆の原因となる事例はなかったが、防錆内在性としても高まるだろう。

 ただし、一部のモデルで行われているルーフパネルのアルミパネルについては異種金属であるが、ろう材の適用などで成立する可能性もあるが、カーボンパネルなどの樹脂基材のものは、ろう付けはムリで、従来同様の接着工法を行うことから相応の糊代としての凹部が必要となり、ルーフモールを廃することはできないだろう。


【過去記事】
レーザーブレージング工法ルーフ取替事例
2020-02-11 | 車両修理関連
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/7ee81561f12e32dc7b0536dd53547a01

【再掲】ホンダの大発明のこと
2021-10-29 | 技術系情報
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/730b6c83f4dbe24952126cf5f1ade9c4


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