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【書評】 焼かれる前に語れ

2021-05-04 | 論評、書評、映画評など
 本書の著者は解剖医だ。人の死は、病院で医師の看護の中で死亡しており病死などの原因が明確になっている場合と、病院外の死因が必ずしも明確でない、いわゆる不審死についてがある。この不審死については、法令では解剖などの検死を行うことになっているのだが、日本の現実はあまりに杜撰な現実であることを警鐘する内容が書き綴られている。

 不審死の場合、解剖だとかCTスキャンによる断層撮影を通して、極力明確な死因を追求しようと云うもので、そこにウィルスなどの伝染性病変だとか隠された犯罪だとか、場合によっては冤罪をも防止するものとして、期待されている死後遺体の処置だ。

 この解剖には、司法解剖と呼ばれるものと行政解剖と呼ばれるものがあるが、その内容の詳細はここでは割愛する。何れにしても、この解剖は、司法も行政も原則、国費(税金)で行われるのだが、遺族などがどうしても解剖とその見解を望む場合は、有償のこともある。

 ここで、2006年とちょっとデータが古いが、我が国の都道府県別の解剖率を集計したのが、別表1(写真1)だ。この表で、右最下部に全国の解剖率が集計されているが、9.4%と比較的低いものだ。しかし、表の順列は、解剖率が高い順となっているが、最上位は神奈川の31%から、最下位は埼玉の1.5%と、そのバラツキは大きい。

 もっとも、神奈川の数値は高い行政解剖がその理由だが、しかも遺族個人負担の有償ということが内在しているらしい。

 ここで、日本と、米国、英国、ドイツ、オーストリアの、いわゆる不審死について5カ国の法医学調査実施率を比べると、オーストリアは100%、ドイツ80%、英国46%、米国22%と主に欧州が圧倒的に高いという調査結果が別表2(写真2)の如く集計されている。

 これらを知ると、日本の現状は異様に低く、隔世の感を持ってしまう。




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