私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

スローなステアリング

2015-07-13 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 フロントタイヤの切れ角(ターニングラジアス)は、一般に前輪内側で30°ちょっとというクルマが多いのではないでしょうか。BMWミニみたいにおそらく20°程度しかないというクルマもある訳ですが、最小回転半径をなるべく小さくし機動性を高めるために、この程度の切れ角が必用となります。そして、この前輪切れ角に対して、ステアリングホイールの回転角(ロックツウロック)は、900°(2周半)から1400°(4周)程度と、車種や味付けにより異なる設計がなされています。昔はパワーアシストなしが普通だったので、操舵力の観点からステアリングのギヤ比を考慮せざるを得ないという理由がありましたが、現在ではパワーアシスト付きが当たり前ですので、操舵力への考慮というよりスタビリティとか車両の味付けを主旨とした設計がなされているのでしょう。

 ところで、ステアリングギヤ比のスローな(ギヤレシオが高い=ロックツウロックが大きい)車両は、左右のタイトコーナーが連続するワインディング路などで、忙しくステアリングを回し続ける必用があります。一方、スポーティ車では、クイックなステアリングで操舵量を減らし、その分を他のドライビィングに集中することが可能となります。

 最近では、BMWのアクティブステアリングやトヨタのVGSなどというステアリングギヤ比を可変化させるデバイスを搭載した車両もあります。しかし、ステアフィールが不自然だとか、前輪が直進状態に戻っているのに、ステアリングホイールが直進位置に戻らないなどと云うリコールを生じたりと、市場ではあまり良い評価を受けず、モデルチェンジで旧来のステアリングに戻されたりしているのを見聞きします。

 貨物車などでは、路面キックバックも考慮しつつ、ステアリングの切りすぎによるスタビリティの悪化を防ぐという意味で、ある程度スローなステアリングレシオとなるのは理解されます。しかし、乗用車でも普段ロックツウロック2.5程度のクルマに馴染んでいる者にとって、ロックツウロック3.5の乗用車に乗ると、なんてダルで忙しいステアリングなんだと感じる次第です。

追記
 前輪の切れ角は最小回転半径を小さくするために大きいに越したことはない訳ですが、小さくできない要素が幾つかあります。まず、昔のFF車ではドライブシャフトのCVジョイントの角度限界がありました。しかし、現在ではCVジョイントの改良も進み、FR車と遜色ない前輪切れ角を持つFF車が普通となっています。もう一つの側面は、前輪タイヤを包み込むホイールハウスの容積というか、左右フロントサイドフレームのスパンから切れ角の制限を受けてしまうということがあります。左右サイドフレームのスパンは、FF車であればエンジン+トランスアクスルの寸法がら制限を受けます。また、ねじり剛性上からはなるべく大きくしたい訳ですが、車両の全幅との関係もあり、無闇に広げられないというということもあります。BMWミニ(R50・R56)では、5ナンバーFF車ということから、エンジンルーム寸法との兼ね合いで、切れ角が制限されていたのは否めないことでしょう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。