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損保は何故自賠責保険を欲しがるのか(ビッグモーター事件の深層に潜むもの)

2023-06-05 | コラム
損保は何故自賠責保険を欲しがるのか(ビッグモーター事件の深層に潜むもの)
 自賠責保険は別称強制保険とも呼ばれ、自動車損害賠償保障法により、道路運送車両法に規定された自動車を運行の用に供する場合自賠責保険または自賠責共済が締結されていなければならないとする強制性を持つ保険である。一方、自賠責は国(国土交通省)が管理する保険であり、その保険料率には要する経費を除いて利益は発生しないことを原則に保険料は定められている。(ノーロス・ノープロフィット)

 自賠責の加入は通常の保険代理店で扱っているが、その代理店マージンは1件1,700円余と対して美味しい利益が得られるものではない。しかし、自賠責は多くの損害保険会社や共済保険会社が扱うのだが、扱う損保などは利益が生じない前提だが、以外とこの自賠責保険を欲しがるという性向を持つのだ。

 なぜ、こんな基本的に利益の生じない自賠責保険を欲しがる損保のことを記したのは、例のビッグモーター社(以下同社)の保険金過剰請求事件のことから、同社の年間保険料収保(収入保険料)は200億と一般の損保代理店とか一般的なディーラーを上回る程の高収保だというが、そもそもモーター系代理店は、自賠責保険の比率が極めて高く、一般代理店の様に、自動車任意保険はともかく、火災保険とか傷害保険と云った損害保険の収保比率は小さいと考えて良いだろう。

 それでも、代理店として扱い損保は、指定工場に認定し、同社に入庫誘導を一説には年間2万件も行っていたと云うのだから、確かに収保の年間200億は魅力だが,その半分を越えるものが自賠責だとて、扱い損保には欲しがる魅力があったと云うことなのだろう。

 これは何故かだが、自賠責保険は、その保険設計理念に経費を除いて利益を生まないと云うことで、収入保険料は損保に取って別会計で管理されるのだが、収入と支払い清算の間にはある程度のスパンがあり、この間に資産運用などで運用益を生み出せることがある。この運用益は後刻、損保協会がまとめて、自賠責運用益拠出事業として交通事故防止対策などの事業を行っているのだが、それが必ずしも運用益の全額ではない様だ。つまり自賠責扱い損保にとっては、資金繰りや資産運用として活用できる資金源として欲しいということがあるのだ。

 しかし、従前のブログでも述べたが、モーター系の代理店を保険代理店とすることは、その代理店に事故車が入庫する場合を考慮すると、利害関係が相反する、もっと云えば今回の同社の事件の様な、代理店だからこそムリ筋高額修理費が通ってしまう事態になったということだろうと思える。今回の同社の事件ほどではないが、元損保調査員としては、例えばディーラー代理店と修理内容で揉めると、そのリアクションは支社長(個別損保店)もしくはもっと大きければ支店長(母店)に入り、そこから損害サービス長に、何とかならないかというごり押し話となる事例があったことは事実としてあった。従って、扱い損害調査員としては、そのことの見通しも見詰め、予め手配りするなど手当をしておかなければ、ケンカに負けるという事案を経験して来たものだ。それと、必ずしも損保に限らないが、営業と損調(査定)、これはディーラーなど小売店で云えば、営業とサービスと対比すれば、多くの場合で社内の役職序列では同格であったり、マニュアル上は同格とされてはいても、発言力としては営業の方が強いという場合がほとんどだろう。そもそも、営業と技術職でどちらが社長になるかを多くの企業で比べてみれば、技術職で最上位に上り詰める企業は希かもしれない。

 ここからは、想像も含むが、現在のセクショナリズムが著しい損保業界にあっては、損害調査員(アジャスター)にしても損調社員にしても同じことだが、無用のトラブルを怖れると云う事態が、著しく進行している様に想像されるところだ。


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