また大企業の不祥事・日立アスティモ
日立Astemo(アステモ)で、また検査が正しく行われていなかったことが報じられている。
しかし、過去からこの様な必ずしも製品不良でなくても、正しい検査がおこなわれいなかったり、検査データが偽装されていたという案件は近年目立ち過ぎる様に感じている。
この20年近くで記憶に残るものとしては、マンションの耐震データ偽装、免震装置のデータ偽装、神鋼のデータ改竄、日産その他の新車完成検査の偽装、三菱自動車のリコール隠し、燃費データ改竄などなど、名だたる大企業の不祥事が次々思い出される。そして、最近では、国交省の統計データ不正だとか、各種省庁であえて記録を残さないとか都合の悪い記録を破棄したと言い張る案件も多い。そして今回は、日立Astemoという、日立オートモーティブ系から派生した自動車部品サプライヤでの検査不正だ。
なぜ、近年この様な企業もしくは官庁などの組織不祥事が目立つのだろうか。
考えてみれば、この様な不祥事は、コンプライアンス運動という問題が社会的規範として意識される様になった以降に生じている様に思えてくる。このコンプライアンスとは、法令遵守と訳される場合が多いが、組織体が活動において、単に法令を守るだけでなく、道徳的な公明正大な活動を求めていると解している。
そもそも、このコンプライアンスというテーゼが立ち上げられたのは、役人主導のものだったのだが、バブル崩壊以後右肩上がりの経済成長が限界を迎え、企業や組織の合併とか、省庁の独立行政法人化が進んだ頃からだったと思える。つまり、これら組織の合併や省庁の独立行政法人化により、心ならずも組織体を追い出されることになった、云うなれば不満分子が増え、そこからの内部通報(不正リーク)がこの様な不祥事が露わになり報じられる機会が増えている一つの要因となっている様に思える。
それと、自らの職歴だとか経験から思うのは、企業および団体などの組織活動においては、種々の矛盾だとか部門間における評価の優劣というものが生じて来るのだが、右肩上がりの時代には、優劣に差異はあれども、総てが何らかの向上をしていたものが、個人所得の分布と同じで、中間層がなくなり一部の優績者と多くの劣後者に分離され、その多くの劣後者には不満のマグマたる圧力が、組織を貶めるリークとして噴出していると解されるのではないだろうか。
そもそも論となるのだが、我が国は民主主義国家と云うことになっていて、あらゆる問題を民主主義的に解決し、国家や組織の構成員に公平感を醸成しなければならないことになっている。しかし、世の動きの変化が目まぐるしく変動し、社会的市場競争が激しい時代に入り、ある意味民主主義という手続きを捨て去り、独裁主義とか権威主義という民主主義とは正反対の、素早いレスポンスが求められることが企業や組織体の生存条件となりつつあり、そのことが企業や組織の謳い上げる理念との乖離を大きくしてしまっているというところに根源がある様に思えてならない。
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日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから
12/23(木) 6:25配信 MONOist
日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた試験や検査がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。
抜き取り試験(定期試験)が正しく行われていなかったのは、山梨工場(山梨県南アルプス市)で生産するブレーキ部品5製品(9社に納入)と、福島工場(福島県桑折町)で生産するサスペンション部品の2製品(5社に納入)だ。福島工場では14社に納入していた4つのサスペンション部品について、出荷検査にも問題があった。いずれの部品も乗用車向けで、日系自動車メーカーなど合計16社に納入した。山梨工場と福島工場はどちらも旧トキコの拠点だった(トキコは2004年に日立Astemoの前身の1社である日立オートモティブシステムズが買収)。
現時点で日立Astemoが把握している範囲では、ブレーキ部品は2003年10月から、サスペンション部品は2000年ごろから不適切行為があった。その件数は、ブレーキ部品で5万7000件、サスペンション部品では少なくとも合計1010万件に上る。
説明会に出席した日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏は「定期試験や検査の重要性が意識されていなかった。人材や投資が不十分で、風通しや透明性にも欠けていた。また、定期試験のマニュアルの品質にも問題があり、適正に行うための説明が不十分だった。不適切だと認識した上で意図的に行われていたのか、不適切であると認識されないまま引き継がれてきてしまったのか、現時点ではまだ解明できていない」と語った。
対象となる部品は安全性や性能に問題はないとしている。不適切行為は、いずれも日立Astemoの社員から日立製作所の品質保証部門に情報提供があったことをきっかけに発覚した。日立製作所の品質保証部門の調査を経て、それぞれの部品の不適切行為は是正された。
また、グローバルで同様の不適切行為が起きていないか監査を実施した結果、現時点ではこの他の不適切行為は報告されていないという。自主監査の他、他の工場やルーツの異なる会社同士での相互監査を実施した。日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業という異なる企業を統合した環境を生かしながら、人材交流を活性化させるという。
事実関係や発生した原因を調査するため、日立Astemoと利害関係のない社外弁護士による特別調査委員会を設置した。調査結果を踏まえた事実の全容や、具体的な再発防止策は後日公表する。
山梨工場で起きていたこと
山梨工場では、ブレーキキャリパー、マスターシリンダー、ブースター、電動制御ブレーキ、マスターシリンダーとは別にブレーキ液を貯留する「分離型リザーバタンク」の5つの製品について、定期試験を実施していないにもかかわらず、取引先への報告書にデータを記載していた。
2020年12月に日立製作所の品質保証部門が品質コンプライアンス監査を実施した際に、日立Astemoの社員が不適切行為について情報を提供。2021年1月にかけて日立製作所の品質保証部門が調査を実施し、不適切行為を確認した。定期試験は2021年1月から実施し、人員の増強など対策を進めて2021年3月までに是正したという。今後、試験データを保管して改ざんを防止する新たな試験機の導入を進めるとしている。
対象となる製品では、安全性や性能を確認する工程検査や出荷検査については適切に実施されていた。
福島工場では出荷検査に不適切な行為
サスペンション部品を生産する福島工場では、2000年ごろから出荷検査や定期試験の不適切行為が続いていた。
出荷検査では、フロントストラット、リアショックアブソーバー、ステアリングダンパー、セミアクティブショックアブソーバーの4製品について、「減衰力を規格値に収めるため、減衰力測定時の判定温度設定を変更」「減衰力規格要求値に対して、適合出力の許容範囲を取引先の指定を超えて設定」「取引先が要求する減衰力規格値から外れた製品を出荷」という不適切行為が確認された。
検査結果データが残っている2018年4月から不適切行為が是正されるまでの期間だけでも、対象は1010万本に上る。社内に残っていた試験データと取引先への報告書の食い違いから、2000年ごろまでさかのぼって発覚した。
フロントストラットとリアショックアブソーバーの2製品(5社に納入)の定期試験では、取引先と決めた規定値から外れた減衰力の実測値を、規定内の数値に書き換えて報告していた。記録が残っている2019年1月~2021年10月の間に259件発生している。
出荷検査の不適切行為は、2021年7月に日立Astemoの品質保証部門の社員から日立製作所の品質保証部門と日立Astemoのコンプライアンス部門に情報提供があった。調査を経て出荷検査の不適切行為を確認するとともに、その後の調査で2021年10月に定期試験の不適切行為が発覚した。2021年10月までに、出荷検査と定期試験の不適切行為は是正されているという。
「安全性や性能に問題なし」
不適切行為の発覚を受けて、管理データ記録の解析を基にした強度や耐久性の再評価や、各部品の性能確認などを社内で行った結果、製品の安全性や性能に問題はないとしている。
サスペンション部品の減衰力に関する出荷検査が適切に行われていなかった件について、CEOのコッホ氏は「FMEA(故障の影響解析)の結果、減衰力がドライバーに及ぼす危険の影響は大きくはない」と述べ、安全性が保たれていることを強調した。性能面については、取引先の自動車メーカーとともに「再確認中」(コッホ氏)だという。
また、十分に余裕を持ったレベルに性能を設定して開発、生産しており、不適切行為に関連して安全性や性能に問題が発生したケースは確認されていないという。
事実関係や発生した原因を調査する特別調査委員会は、委員長の貝阿彌 誠氏(大手町法律事務所)、委員の松山遙氏(日比谷パーク法律事務所)と山田広毅氏(東京国際法律事務所)がメンバーとなる。
日立Astemo(アステモ)で、また検査が正しく行われていなかったことが報じられている。
しかし、過去からこの様な必ずしも製品不良でなくても、正しい検査がおこなわれいなかったり、検査データが偽装されていたという案件は近年目立ち過ぎる様に感じている。
この20年近くで記憶に残るものとしては、マンションの耐震データ偽装、免震装置のデータ偽装、神鋼のデータ改竄、日産その他の新車完成検査の偽装、三菱自動車のリコール隠し、燃費データ改竄などなど、名だたる大企業の不祥事が次々思い出される。そして、最近では、国交省の統計データ不正だとか、各種省庁であえて記録を残さないとか都合の悪い記録を破棄したと言い張る案件も多い。そして今回は、日立Astemoという、日立オートモーティブ系から派生した自動車部品サプライヤでの検査不正だ。
なぜ、近年この様な企業もしくは官庁などの組織不祥事が目立つのだろうか。
考えてみれば、この様な不祥事は、コンプライアンス運動という問題が社会的規範として意識される様になった以降に生じている様に思えてくる。このコンプライアンスとは、法令遵守と訳される場合が多いが、組織体が活動において、単に法令を守るだけでなく、道徳的な公明正大な活動を求めていると解している。
そもそも、このコンプライアンスというテーゼが立ち上げられたのは、役人主導のものだったのだが、バブル崩壊以後右肩上がりの経済成長が限界を迎え、企業や組織の合併とか、省庁の独立行政法人化が進んだ頃からだったと思える。つまり、これら組織の合併や省庁の独立行政法人化により、心ならずも組織体を追い出されることになった、云うなれば不満分子が増え、そこからの内部通報(不正リーク)がこの様な不祥事が露わになり報じられる機会が増えている一つの要因となっている様に思える。
それと、自らの職歴だとか経験から思うのは、企業および団体などの組織活動においては、種々の矛盾だとか部門間における評価の優劣というものが生じて来るのだが、右肩上がりの時代には、優劣に差異はあれども、総てが何らかの向上をしていたものが、個人所得の分布と同じで、中間層がなくなり一部の優績者と多くの劣後者に分離され、その多くの劣後者には不満のマグマたる圧力が、組織を貶めるリークとして噴出していると解されるのではないだろうか。
そもそも論となるのだが、我が国は民主主義国家と云うことになっていて、あらゆる問題を民主主義的に解決し、国家や組織の構成員に公平感を醸成しなければならないことになっている。しかし、世の動きの変化が目まぐるしく変動し、社会的市場競争が激しい時代に入り、ある意味民主主義という手続きを捨て去り、独裁主義とか権威主義という民主主義とは正反対の、素早いレスポンスが求められることが企業や組織体の生存条件となりつつあり、そのことが企業や組織の謳い上げる理念との乖離を大きくしてしまっているというところに根源がある様に思えてならない。
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日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから
12/23(木) 6:25配信 MONOist
日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた試験や検査がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。
抜き取り試験(定期試験)が正しく行われていなかったのは、山梨工場(山梨県南アルプス市)で生産するブレーキ部品5製品(9社に納入)と、福島工場(福島県桑折町)で生産するサスペンション部品の2製品(5社に納入)だ。福島工場では14社に納入していた4つのサスペンション部品について、出荷検査にも問題があった。いずれの部品も乗用車向けで、日系自動車メーカーなど合計16社に納入した。山梨工場と福島工場はどちらも旧トキコの拠点だった(トキコは2004年に日立Astemoの前身の1社である日立オートモティブシステムズが買収)。
現時点で日立Astemoが把握している範囲では、ブレーキ部品は2003年10月から、サスペンション部品は2000年ごろから不適切行為があった。その件数は、ブレーキ部品で5万7000件、サスペンション部品では少なくとも合計1010万件に上る。
説明会に出席した日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏は「定期試験や検査の重要性が意識されていなかった。人材や投資が不十分で、風通しや透明性にも欠けていた。また、定期試験のマニュアルの品質にも問題があり、適正に行うための説明が不十分だった。不適切だと認識した上で意図的に行われていたのか、不適切であると認識されないまま引き継がれてきてしまったのか、現時点ではまだ解明できていない」と語った。
対象となる部品は安全性や性能に問題はないとしている。不適切行為は、いずれも日立Astemoの社員から日立製作所の品質保証部門に情報提供があったことをきっかけに発覚した。日立製作所の品質保証部門の調査を経て、それぞれの部品の不適切行為は是正された。
また、グローバルで同様の不適切行為が起きていないか監査を実施した結果、現時点ではこの他の不適切行為は報告されていないという。自主監査の他、他の工場やルーツの異なる会社同士での相互監査を実施した。日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業という異なる企業を統合した環境を生かしながら、人材交流を活性化させるという。
事実関係や発生した原因を調査するため、日立Astemoと利害関係のない社外弁護士による特別調査委員会を設置した。調査結果を踏まえた事実の全容や、具体的な再発防止策は後日公表する。
山梨工場で起きていたこと
山梨工場では、ブレーキキャリパー、マスターシリンダー、ブースター、電動制御ブレーキ、マスターシリンダーとは別にブレーキ液を貯留する「分離型リザーバタンク」の5つの製品について、定期試験を実施していないにもかかわらず、取引先への報告書にデータを記載していた。
2020年12月に日立製作所の品質保証部門が品質コンプライアンス監査を実施した際に、日立Astemoの社員が不適切行為について情報を提供。2021年1月にかけて日立製作所の品質保証部門が調査を実施し、不適切行為を確認した。定期試験は2021年1月から実施し、人員の増強など対策を進めて2021年3月までに是正したという。今後、試験データを保管して改ざんを防止する新たな試験機の導入を進めるとしている。
対象となる製品では、安全性や性能を確認する工程検査や出荷検査については適切に実施されていた。
福島工場では出荷検査に不適切な行為
サスペンション部品を生産する福島工場では、2000年ごろから出荷検査や定期試験の不適切行為が続いていた。
出荷検査では、フロントストラット、リアショックアブソーバー、ステアリングダンパー、セミアクティブショックアブソーバーの4製品について、「減衰力を規格値に収めるため、減衰力測定時の判定温度設定を変更」「減衰力規格要求値に対して、適合出力の許容範囲を取引先の指定を超えて設定」「取引先が要求する減衰力規格値から外れた製品を出荷」という不適切行為が確認された。
検査結果データが残っている2018年4月から不適切行為が是正されるまでの期間だけでも、対象は1010万本に上る。社内に残っていた試験データと取引先への報告書の食い違いから、2000年ごろまでさかのぼって発覚した。
フロントストラットとリアショックアブソーバーの2製品(5社に納入)の定期試験では、取引先と決めた規定値から外れた減衰力の実測値を、規定内の数値に書き換えて報告していた。記録が残っている2019年1月~2021年10月の間に259件発生している。
出荷検査の不適切行為は、2021年7月に日立Astemoの品質保証部門の社員から日立製作所の品質保証部門と日立Astemoのコンプライアンス部門に情報提供があった。調査を経て出荷検査の不適切行為を確認するとともに、その後の調査で2021年10月に定期試験の不適切行為が発覚した。2021年10月までに、出荷検査と定期試験の不適切行為は是正されているという。
「安全性や性能に問題なし」
不適切行為の発覚を受けて、管理データ記録の解析を基にした強度や耐久性の再評価や、各部品の性能確認などを社内で行った結果、製品の安全性や性能に問題はないとしている。
サスペンション部品の減衰力に関する出荷検査が適切に行われていなかった件について、CEOのコッホ氏は「FMEA(故障の影響解析)の結果、減衰力がドライバーに及ぼす危険の影響は大きくはない」と述べ、安全性が保たれていることを強調した。性能面については、取引先の自動車メーカーとともに「再確認中」(コッホ氏)だという。
また、十分に余裕を持ったレベルに性能を設定して開発、生産しており、不適切行為に関連して安全性や性能に問題が発生したケースは確認されていないという。
事実関係や発生した原因を調査する特別調査委員会は、委員長の貝阿彌 誠氏(大手町法律事務所)、委員の松山遙氏(日比谷パーク法律事務所)と山田広毅氏(東京国際法律事務所)がメンバーとなる。