V8エンジンのクランクプレーンの話し
V8エンジンと聞いて一応理解する者は多いと思えるが、V8エンジンにそのクランクのプレーン(捻り形態)に2種類があり、同じV8エンジンでもまるで異なる性格を持つことまでを理解している者は少ないだろう。
そもそもV型エンジンとは、左右バンクの対象となる両シリンダーについて、クランクピンを共有しているのが特徴だ。そして、その共有クランクピンが4気筒エンジンと同様に180度位相でフラットになっているのが、俗にフラットプレーというもので、共有クランクピンが90度位相で捻れているのが、俗称クロスプレーンの2種があることまでは知らない者は多いのではないだろうか。
V8エンジンに限らずVバンク形状のエンジンは、Vバンクの角度が一つの大きな基本要素になる。そして、V8の場合、Vバンク角が90度で、クランクがクロスプレーンで90度捻れたクロスプレーンだと、俗にいうイーブンファイアリング(等間隔爆発)が得られるのだ。つまり、クランクシャフトは同一回転数と云っても、その回転角速度は速まったり遅くなったりといういわゆる回転振動を生じるのだが、イーブンファイアリングにおいて、一番回転振動が抑えられるということになる。
このクランクの回転振動(ねじり振動)はできれば小さいに超したことはない。でないと、駆動系の各ギヤの歯面を伝える力が大きくなったり小さくなったりが代表例だが、その振動数がそのギヤだとか付属物の持つ固有振動に一致すると共振という現象から、いわゆるこもり音だとか、うなり音として認識され、評価が低下すると云う問題になるからなのだ。
その様な点では、6気筒なら直列6気筒が、120度位相のクランク捻れで、完璧なイーブンファイアリングが達成できるし、さらにその倍数となる120度V12なら、さらに同じイーブンファイアリングでも、さらに細密化なされるということになるのだが、V12までにすると、そもそも大排気量だとか個別シリンダー数が多いことによる摩擦損失が増えるとかいう副次的な不具合も生まれて来る。
さて、V8の話しに戻すが、2種のクランク形状において、一般的な乗用車では、間違いなく騒音上の利点からクロスプレーンを用いる例が多いのだが、レーシングエンジンとなると、回転系のマス(重量)は、すなわちフライホイールと同様に加速時の抵抗になる。そこで、なるべく軽く仕上げたいということになるが、クロスプレーンとフラットプレーンを比べた場合、その形状剛性から、形状が単純なフラットプレーンの方が有利となる。すなわち、フラットプレーンの方が、要求剛性に耐えるために、よりクランクを軽く仕上げることができるということになる。このことが、騒音とか関係ないレーシング指向のエンジンでは、クロスでなくフラットプレーンを使う理由となる。
このクロスプレーンとフラットプレーンでは、排気脈動音がまるで異なることから、同じ排気量でもまるでエキゾースト音が異なる。一般に、市販車ではマフラーを強化することで、排気脈動音をなるべく押さえているが、ストレートなレーシングエンジンとか、それに近づけた市販車でもチューニングマフラーを使用した場合は、エンジンの素の排気脈動音が聞こえる様になる。この場合、クロスプレーンでは、ドロドロという低い周波数成分の音となるが、フラットプレーンでは、そういう低い周波数より一段高いトーンでの排気脈動音となるで、知識のある者には聞いて直ぐ判る。
レーシングV8は、間違いなくフラットプレーンを使うが、一般的な市販車では、ほぼクロスプレーンを使い、多少クランクが重くなろうが、十分な剛性を剛性を確保している。もう少し具体例を記せば、アメリカ車とかレクサスのV8では、クロスプレーンだが、フェラーリのV8ではフラットプレーンを使っていると云うことだ。
以下の過去記事は、フォードGT40のことを記したものだが、オリジナルの乗用車用V8はクロスプレーンだが、レーシング化したGT40ではフラットプレーンを使用しているので、まるで排気音が異なることが判ってもらえると思う。
映画レビュー 男と女(2015年5月20日再レビュー)
2020-01-23 | 論評、書評、映画評など(回顧録)
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9b4b3000446076ed3968cbed902407eb
V8エンジンと聞いて一応理解する者は多いと思えるが、V8エンジンにそのクランクのプレーン(捻り形態)に2種類があり、同じV8エンジンでもまるで異なる性格を持つことまでを理解している者は少ないだろう。
そもそもV型エンジンとは、左右バンクの対象となる両シリンダーについて、クランクピンを共有しているのが特徴だ。そして、その共有クランクピンが4気筒エンジンと同様に180度位相でフラットになっているのが、俗にフラットプレーというもので、共有クランクピンが90度位相で捻れているのが、俗称クロスプレーンの2種があることまでは知らない者は多いのではないだろうか。
V8エンジンに限らずVバンク形状のエンジンは、Vバンクの角度が一つの大きな基本要素になる。そして、V8の場合、Vバンク角が90度で、クランクがクロスプレーンで90度捻れたクロスプレーンだと、俗にいうイーブンファイアリング(等間隔爆発)が得られるのだ。つまり、クランクシャフトは同一回転数と云っても、その回転角速度は速まったり遅くなったりといういわゆる回転振動を生じるのだが、イーブンファイアリングにおいて、一番回転振動が抑えられるということになる。
このクランクの回転振動(ねじり振動)はできれば小さいに超したことはない。でないと、駆動系の各ギヤの歯面を伝える力が大きくなったり小さくなったりが代表例だが、その振動数がそのギヤだとか付属物の持つ固有振動に一致すると共振という現象から、いわゆるこもり音だとか、うなり音として認識され、評価が低下すると云う問題になるからなのだ。
その様な点では、6気筒なら直列6気筒が、120度位相のクランク捻れで、完璧なイーブンファイアリングが達成できるし、さらにその倍数となる120度V12なら、さらに同じイーブンファイアリングでも、さらに細密化なされるということになるのだが、V12までにすると、そもそも大排気量だとか個別シリンダー数が多いことによる摩擦損失が増えるとかいう副次的な不具合も生まれて来る。
さて、V8の話しに戻すが、2種のクランク形状において、一般的な乗用車では、間違いなく騒音上の利点からクロスプレーンを用いる例が多いのだが、レーシングエンジンとなると、回転系のマス(重量)は、すなわちフライホイールと同様に加速時の抵抗になる。そこで、なるべく軽く仕上げたいということになるが、クロスプレーンとフラットプレーンを比べた場合、その形状剛性から、形状が単純なフラットプレーンの方が有利となる。すなわち、フラットプレーンの方が、要求剛性に耐えるために、よりクランクを軽く仕上げることができるということになる。このことが、騒音とか関係ないレーシング指向のエンジンでは、クロスでなくフラットプレーンを使う理由となる。
このクロスプレーンとフラットプレーンでは、排気脈動音がまるで異なることから、同じ排気量でもまるでエキゾースト音が異なる。一般に、市販車ではマフラーを強化することで、排気脈動音をなるべく押さえているが、ストレートなレーシングエンジンとか、それに近づけた市販車でもチューニングマフラーを使用した場合は、エンジンの素の排気脈動音が聞こえる様になる。この場合、クロスプレーンでは、ドロドロという低い周波数成分の音となるが、フラットプレーンでは、そういう低い周波数より一段高いトーンでの排気脈動音となるで、知識のある者には聞いて直ぐ判る。
レーシングV8は、間違いなくフラットプレーンを使うが、一般的な市販車では、ほぼクロスプレーンを使い、多少クランクが重くなろうが、十分な剛性を剛性を確保している。もう少し具体例を記せば、アメリカ車とかレクサスのV8では、クロスプレーンだが、フェラーリのV8ではフラットプレーンを使っていると云うことだ。
以下の過去記事は、フォードGT40のことを記したものだが、オリジナルの乗用車用V8はクロスプレーンだが、レーシング化したGT40ではフラットプレーンを使用しているので、まるで排気音が異なることが判ってもらえると思う。
映画レビュー 男と女(2015年5月20日再レビュー)
2020-01-23 | 論評、書評、映画評など(回顧録)
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/9b4b3000446076ed3968cbed902407eb
ただ単に市販車ではやらないようなエキマニの取り回しで排気干渉を避けていたと記憶してますが。。。
フラットプレーンであれば左右ごとに片側4気筒で集合させられるものをクロスプレーン故にエキマニの管長を伸ばしてまで左右の1気筒分をわざわざクロスさせて集合させている。
検索すると結構こういった内容が散見されますね。