逆走乗用車と大型ダンプの正面衝突事故の分析
先月26日に三重県鈴鹿市内の国道で、逆走した乗用車と大型ダンプカーがまともに正面衝突する事故があり、この一部始終を収めたビデオが公開されていた。筆者が当初見た、何処かのメディアと若干異なるが、恐らく同じ動画ソースを未だYoutubeで見ることはできる。
この動画は、ある程度広い画角で定点撮影されたもので、典型的な正面衝突事故で、しかも双方の重量差が13倍と大きな差異がある実例として、大変参考になる部分があり、若干分析染みたことを行ってみた。
その分析の要点は、次の様点を求めてみたいということだ。
①衝突前の双方の車両速度は何キロだったのか?
②車両の衝突においては、単に何キロでぶつかったという視点でなく、有効衝突速度という概念が欠かせない訳だが、この事故のそれぞれ車両の有効衝突速度は何キロだったのか?
※有効衝突速度は、イコール対バリア衝突速度であると云われている。つまり、バリアはその重量は無限大に等しい程重いので、衝突車の全運動量はすべて衝突車の塑性変形とか極一部は熱や音となって吸収される。この逆に、衝突相手物が極軽いものだったらどうか思考して見れば、衝突による速度変化(⊿V)はほとんど変化をしない場合も容易に想像できるだろう。
と云うことで、件の動画をフレーム単位でを観察できるアプリでコマ送りしつつ、画像内の明かな距離が判る部位との対比において、所要フレーム数が幾つかで時間が判り、そして距離も判ると云うことで、速度が算出できると云うことなのだ。今回の動画は、誠に都合の良い画角で、しかも通行区分線の破線に平行に双方車両が移動しているが、この破線は実線長が8m、空白長が12mという規格であることが判ったので、特に衝突前の速度はかなり精度が高い速度値が検証できたと思える。
この結果は、衝突前速度はダンプが48km/h、乗用車が96km/hとかなりの高速で実際にはさらに加速している様にも見える。
衝突前の双方車両速度が判り、しかも衝突形態が一次元衝突の場合は、運動量保存の法則が適用できることで、本件は正にその様な衝突形態なのだ。あと、反発係数(0から1の値)を考慮する必用があるが、ゴルフボールのクラブヘッドとのインパクトでボールの初速がどのようになるかという場合は、極めて大きなファクターとなるが、車両の一定以上高速度の場合、その塑性変形により運動エネルギーを吸収してしまうことで、ほとんど反発係数はゼロと見なせるとして除外した。
この計算過程は、添付図の3、4、5に分析1、2、3として記してあるが、それぞれの有効衝突速度は以下の値が求められた。
・ダンプの有効衝突速度 10km/h
・乗用車の有効衝突速度 134KM/h
新聞報でも、乗用車の乗員は死亡と記されているが、JNCAP対リジットバリアテスト(55km/h)の倍以上の高速度では、幾ら生存空間が残されていても生存は難しいのはムリないところだろう。ただし、正確な乗用車の車名は判別できないが、大まかにフロントドアとかフロントピラーの極端な後退が生じていない様に見えることから、このボデーはかなり対衝突安全性能は良いと見るべきだろう。
【動画ソースYoutube】
https://www.youtube.com/watch?v=IML3JRGCvX4
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【新聞報】
ダンプカーと正面衝突 鈴鹿の国道、乗用車の男性死亡
伊勢新聞 2021-12-27
【鈴鹿】26日午前9時45分ごろ、鈴鹿市磯山一丁目の国道23号で、同市内、職業不詳***(37)の乗用車と同市津賀町、アルバイト男性(68)のダンプカーが正面衝突。乗用車運転車は搬送先の病院でまもなく死亡した。ダンプ運転車男性にけがはなかった。
鈴鹿署によると、現場は片側2車線で見通しの良い直線道路。同署は現場の状況などからアラキさんの乗用車が逆走していたとみて死因や事故原因を調べている。
#ダンプと逆走乗用車のまともな正面衝突
先月26日に三重県鈴鹿市内の国道で、逆走した乗用車と大型ダンプカーがまともに正面衝突する事故があり、この一部始終を収めたビデオが公開されていた。筆者が当初見た、何処かのメディアと若干異なるが、恐らく同じ動画ソースを未だYoutubeで見ることはできる。
この動画は、ある程度広い画角で定点撮影されたもので、典型的な正面衝突事故で、しかも双方の重量差が13倍と大きな差異がある実例として、大変参考になる部分があり、若干分析染みたことを行ってみた。
その分析の要点は、次の様点を求めてみたいということだ。
①衝突前の双方の車両速度は何キロだったのか?
②車両の衝突においては、単に何キロでぶつかったという視点でなく、有効衝突速度という概念が欠かせない訳だが、この事故のそれぞれ車両の有効衝突速度は何キロだったのか?
※有効衝突速度は、イコール対バリア衝突速度であると云われている。つまり、バリアはその重量は無限大に等しい程重いので、衝突車の全運動量はすべて衝突車の塑性変形とか極一部は熱や音となって吸収される。この逆に、衝突相手物が極軽いものだったらどうか思考して見れば、衝突による速度変化(⊿V)はほとんど変化をしない場合も容易に想像できるだろう。
と云うことで、件の動画をフレーム単位でを観察できるアプリでコマ送りしつつ、画像内の明かな距離が判る部位との対比において、所要フレーム数が幾つかで時間が判り、そして距離も判ると云うことで、速度が算出できると云うことなのだ。今回の動画は、誠に都合の良い画角で、しかも通行区分線の破線に平行に双方車両が移動しているが、この破線は実線長が8m、空白長が12mという規格であることが判ったので、特に衝突前の速度はかなり精度が高い速度値が検証できたと思える。
この結果は、衝突前速度はダンプが48km/h、乗用車が96km/hとかなりの高速で実際にはさらに加速している様にも見える。
衝突前の双方車両速度が判り、しかも衝突形態が一次元衝突の場合は、運動量保存の法則が適用できることで、本件は正にその様な衝突形態なのだ。あと、反発係数(0から1の値)を考慮する必用があるが、ゴルフボールのクラブヘッドとのインパクトでボールの初速がどのようになるかという場合は、極めて大きなファクターとなるが、車両の一定以上高速度の場合、その塑性変形により運動エネルギーを吸収してしまうことで、ほとんど反発係数はゼロと見なせるとして除外した。
この計算過程は、添付図の3、4、5に分析1、2、3として記してあるが、それぞれの有効衝突速度は以下の値が求められた。
・ダンプの有効衝突速度 10km/h
・乗用車の有効衝突速度 134KM/h
新聞報でも、乗用車の乗員は死亡と記されているが、JNCAP対リジットバリアテスト(55km/h)の倍以上の高速度では、幾ら生存空間が残されていても生存は難しいのはムリないところだろう。ただし、正確な乗用車の車名は判別できないが、大まかにフロントドアとかフロントピラーの極端な後退が生じていない様に見えることから、このボデーはかなり対衝突安全性能は良いと見るべきだろう。
【動画ソースYoutube】
https://www.youtube.com/watch?v=IML3JRGCvX4
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【新聞報】
ダンプカーと正面衝突 鈴鹿の国道、乗用車の男性死亡
伊勢新聞 2021-12-27
【鈴鹿】26日午前9時45分ごろ、鈴鹿市磯山一丁目の国道23号で、同市内、職業不詳***(37)の乗用車と同市津賀町、アルバイト男性(68)のダンプカーが正面衝突。乗用車運転車は搬送先の病院でまもなく死亡した。ダンプ運転車男性にけがはなかった。
鈴鹿署によると、現場は片側2車線で見通しの良い直線道路。同署は現場の状況などからアラキさんの乗用車が逆走していたとみて死因や事故原因を調べている。
#ダンプと逆走乗用車のまともな正面衝突