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【映画評】ウルフルズ・コール(潜水艦映画)

2023-04-24 | 論評、書評、映画評など
【映画評】ウルフルズ・コール(潜水艦映画)
 このウルフルズ・コールとの作品は1998年の仏映画だ。
 弾道核ミサイル搭載の攻撃型原潜は、世界でほとんど米国が保有するが、ロシア、そしてフランス、中国が保有している。潜水艦の核ミサイルが何故、軍事強国で保有されるかと云うことだが、固定サイロからの核ミサイル発射は、監視衛星により直ちに発射位置すなわち発射国が特定されるという問題があり、しかも弾道軌跡を持ち宇宙空間まで上昇しつつ最速速マッハ20程度で弾道飛行する核ミサイル(ICBM)は、発射後迎撃が困難というか不可能と云う問題がある。そこで、ICBM発射を察知した被目標国では、着弾以前い報復核を発射せざるを得なくなる訳だ。

 ところで、地上接地サイロからの報復発射は、互いの報復核発射の連鎖となり、互いの国が壊滅する事態になり得る訳だが、ここで潜水艦搭載核弾道ミサイルの発射だと、発射位置から発射国を特定できないことになり、報復核合戦となることを防げるという利点があり得る。また、相手の都市に接近してから核発射した場合は、極めて短時間に着弾でき、しかもその時点で、発射国が特定できないことにより報復核を防ぐ、限定核戦術を行い得るとして、軍事強国では核搭載攻撃型原潜の保有に固執しているのだろう。

 この潜水艦に限らず核兵器発射基地への核発射命令は、大統領の専権事項になっている訳で、この発射指令の中断を起因に、再確認を求めようとす良識派の副長と、命令は速時実行を意図する艦長の葛藤の葛藤を描いたのが、1995年の米映画「クリムゾン・タイド」であったのだが、このウルフルズ・コールは、自国に迫るICBMの迎撃に失敗し、大統領命令の反撃核発射をひたすら遵守しようとする仏原潜と、優秀ソナー担当員「ソックス」のICBMの重量が20%軽い、すなわち核未搭載のICBMだということと、発射原潜がロシア製だが、その後の情報で他国に売却されている罠だと判り、大統領命令の核発射を阻止するために、自国原潜を攻撃すると云うムチャな筋の映画だ。そもそも大統領命令の核発射は訂正の効かない最終命令だとなされていうこと自体が余りに異常だろう。核みたいに着弾する以前に報復核を撃たねばならない様な最終兵器で、命令後の取消ができない何て愚かな思想を持つとしたら、100%確実でない限り発射命令が下せるものだろうか。このことは、核に限らず通常の兵器だとかロケットでも、予定軌道を外れたとかで、誘導爆破というのは行われており、そんなアホなことはあり得ないという思いを終始思い続けた。

 それと、この映画では魚雷攻撃で室内艤装が相当程度にまで破壊され火災までが発生している状態で、浸水しないという不思議な情景が繰り返されるのも、誠に不自然と感じる。

 潜水艦映画は、過去、レッドオクトーバー、クリムゾンダイド、Uボートなど、好きなジャンルで見続けて来たが、この仏映画は余りにお粗末なB級映画だとう云うのが結論だ。



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