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パイプ銃の実験を米国銃マニアが試みたという記事からタカタエアバッグの破綻の理由

2022-07-30 | コラム
パイプ銃の実験を米国銃マニアが試みたという記事からタカタエアバッグの破綻の理由
 以下の記事で『Youtubeにて「“日本の総理大臣” を殺したパイプ銃の実験」と題する動画を公開する人物が現れた。』とある。なお、『この動画は、本誌が確認した時点で50万回以上再生されていたが、規約違反を理由に現在は削除されている。』ということだ。

 ところで私自身は、前首相に哀れみを感じることは為してきた所業からさほどさしてないが、デモクラシー国家が破壊されつつ、この様なテロ事件がもしも続くとしたら、恐ろしいことだと思う。

 この記事で判るところだが、火薬の量とかバレル(パイプ)とか尾栓の構造や強度によっては、それらが破壊される暴発により、射手自身が負傷することもあり得る訳だが、実際の犯行は2バレルから発射し、射手は現行犯逮捕されており特に負傷もしていないのだから、この山上被告は、相当緻密な工学的素養のある者と想像する。

 ところで、大企業たる世界最大のエアバッグメーカーである「タカタ」が倒産した原因が、正にこの暴発にあることが種々の情報で明らかになっているので、そこことを知る限り書き留めておきたい。

 タカタの欠陥は運転席用もしくは助手席用エアバッグインフレーターが、設計値を越えるチッ素ガス爆発(燃焼速度)により、本来インフレーター外周に加工されたガス噴出ホールでの排出量を超えるインフレーター内圧力となり、インフレーターの厚板(2mm程度か)を吹き飛ばして、金属片が運転者もしくは助手席搭乗者の顔面とか首に射出され死亡もしくは重傷を負うというものだった。

 エアバッグインフレーターの構造は、添付図を参照してもらいたいが、電気着火のスクイブがあり、それで少量の火薬類を燃焼させ、その周辺に配置したチッ素ガス生成薬剤を200-300℃に至らせることにより、運転席用であれば約70Lのチッ素ガスを発生させるというものだ。

 ところが、タカタの使用していたチッ素ガス生成剤は「硝酸アンモニウム」であったが、他メーカーでは「硝酸グアニジン」を使用していた。このタカタ使用の「硝酸アンモニウム」だが、季節による室内温度の上下とか湿度による吸湿性により、膨らんだり縮んだりを繰り返すと、薬剤ペレット(粒状物)がひび割れて表面積を増大させてしまうということがあるそうだ。この表面積が増大することで、発生するチッ素ガスの総量は変わらないが、発生するガスの拡張速度が設計値を上回る状態になると想定できる。つまり、インフレーター外周に用意されたガスデフェーザーノズル(排出ホール)からガスが排出しきれない時間が高まり、インフレーター内圧が設計値を超え、破壊されてはいけないインフレーター上面が破壊されて、その破片が運転者もしくは助手席搭乗者に射出されてしまうという現象が起きてしまったと想定できるのだ。




 なお、運転席用および助手席用エアバッグは、最大に膨らんだところで人体を受け止め、その後排出ホールでガスが抜けることで、受け止めた人体を反発させることなくソフトランディングさせる様に計算され設計されている。一方、エアバッグに関連するその他のシートベルトプリテンショナーとかサイドエアバッグはガス排出ホールは設けられておらず、数秒以上の間、膨らんだままになるそうだが、これらはガス発生剤の量を緻密に計算しているからできることの様だ。つまり運転席や特に助手席の様な大容量エアバッグ並みのチッ素ガス発生剤を使用したとすると、サイドやルーフエアバッグは、それ自体が破裂してしまう可能性だとか、ベルトテンショナーであれば、バレル自体が破壊されてしまう暴発現象が生じるだろう。


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山上徹也容疑者の “パイプ銃” をアメリカ人が再現実験…材料費210ドルで銃身ごと吹き飛ぶ結果に
SmartFLASH 7/30(土) 17:08配信
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ソースURL:https://news.yahoo.co.jp/articles/eef3a9ce5ea0a62817dfc0d3868ebe7ff26917b6
 7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件。逮捕された山上徹也容疑者は、自作した銃を使用して凶行におよんだ。火薬を調合するためにわざわざ倉庫を借り、何度も試射をおこなったと供述しているが、はたして一般人が銃を自作することなど可能なのだろうか。

 疑問に思う人は多いようで、「“日本の総理大臣” を殺したパイプ銃の実験」と題する動画をYouTube上に公開する人物が現れた。

 動画をアップロードしたのは、アメリカ人のブランドン氏。普段からさまざまな銃火器を紹介しているYouTuberで、登録者は200万人を超える。

 動画の冒頭でブランド氏は、「あくまで教育目的、実験目的で山上容疑者の銃を再現する。決してマネしないように」と注意喚起したうえで、報道された山上容疑者の銃の写真を元に、通販サイト・Amazonでわずか210ドルで材料をそろえた。

 火薬を調合し、電気式の雷管をセット。木の板に鉄パイプを2本ならべてビニールテープで固定すると、山上容疑者のものとそっくりの “銃” が完成した。弾薬は大小さまざまなボールベアリングだ。

 ブランドン氏は、その銃を持って「シンゾーがここに立っているとして……」と事件現場の様子にも触れながらその威力をテスト。

 1度めの実験では、銃口の反対側にある留め具が吹き飛び、銃を固定していた土嚢すら吹き飛ぶ結果に。火薬量を抑えた2度めの実験でも、銃身が爆発の反動で後方へ吹き飛んだ。いずれも、ターゲットのボトルや缶は粉々になった。

「決して完璧ではないが、少なくとも “目的” を果たすことはできました。どんなに銃を規制したところで、邪悪な人々はこの “銃” のように、その手段を見つけ出すことができるんです」とブランドン氏は締めくくった。

 この動画は、本誌が確認した時点で50万回以上再生されていたが、規約違反を理由に現在は削除されている。

「実際に山上容疑者が使用した銃は、吹き飛ぶこともなく、2度も真っすぐ発射できました。“銃のプロ” が挑戦して失敗したわけですから、山上容疑者がどれほど緻密に研究していたかわかる内容です。

 山上容疑者は10回以上も山中で試射を重ねたと証言しています。ブランドン氏のような事態にならないよう、火薬量を微調整し、パイプの強度も確認してきたのでしょう」(社会部記者)

 銃を自作することへのあまりに強い執念。その実行力をもっと健全な道で活かすことはできなかったのだろうか。


#自作銃 #タカタ欠陥エアバッグ


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