私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

昔のエンジンの話

2008-08-09 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険

 現在、毎日が日曜日状態ですので時間はありますので、今月中のみ開館している原田コレクション(河口湖博物館・航空館)を、前倒して訪問してみました。

 前回見学から3年ぶりでの見学ですが、前回レストア途Taypezero52上であったゼロ戦52型も完成していました。従来からある21型と両方が展示されていましたが、両機を見比べると、好みもあるでしょうが、私にはオリジナルとなる21型の方がすっきりした魅力ある機体と感じます。

 さて、私の興味は航空機そのものより、エンジンに興味を持ってしまいます。ここにはゼロ戦に搭載の星形エンジンも多種類か展示され、分解した部品も展示されています。しかし、空冷星形はクルマ用とは無縁のもので、私が興味を持つのは水冷エンジンの方です。大戦中の日本軍用機のエンジンは、ほとんどが星形空冷ですが、極一部に水冷エンジンがありました。この水冷V12エンジンは、独ダイムラーベンツ社のオリジナルエンジンであるDB601型をライセンス生産したという、愛知機械製と川崎重工製のそれぞれのエンジンがありま す。愛知機械製は海軍の「彗星」(すいせい)に、川崎重工製は陸軍の「飛燕」(ひえん)に搭載されていました。ゼロ戦等の空冷エンジン搭載機はどうしても機首が太くずんぐりとしたスタイルとなりますが、水冷エンジンの機体では、機首のプロAtuta1ペラスピナーから機体後方へ細心でスムーズなスタイルの機体となります。当然、空力的な有利さもあり、最高速度も同出力であれば高くなると思います。そんなこともあり、ここで展示の愛知機械製・熱田エンジンに私の興味は集中してしまったのです。

 ネットで知るDB601エンジンのスペックですが、倒立V12気筒(ヘッドが下側)、総排気量34リットル、ボア・ストローク150mm×160mm、最大出力約1,100HP/2,500rpm、シリンダー直接燃料噴射、ツインイグニッション、機械式過給器付き、ドライサンプ潤滑等と云うものです。展示場内にある、熱田エンジンは2機ありましたが、何れもエンジン内部は伺えません。ところ が、展示場の外に破損した同エンジンが3機がなかば放置してありました。これらエンジンは、腐蝕し割損等していますから、内部が一部ですが伺えるのです。それとオイルパン(というか上部のフタ)もありませんから、クランクケース内が観察できます。繁々と私が見ていますと、やはり似たような思いのある年配の方がいるものです。この方と、あれやこれやと暫く同エンジンの談義を行ってしまいました。Atuta2

 この観察で気づきましたが、展示場内の着色された状態では同エンジンはヘッドおよびブロック共に鋳鉄製と思っていましたが、両方ともアルミ製と判断できました。しかもヘッドとシリンダー部はアルミ鋳造製の一体もので、鋼製のライナーがねじ込まれる構造と見ました。また、クランクケース内を除くと各クランクピン部に、交差する左右のバンクからコンロッドが組み付けられているのが観察できました。現在のエンジンで、V6であれV8であれ、V型エンジンでは同一クランクピン部に2本のコンロッド組み付けられますが、左右バンクのシリンダーは、このコンロッド部の厚さ分だけオフセットされるのです。しかし、同エンジンでは、一方のコンロッド部がコの字型になっており、対向するもう一方のコンロッド部を挟むように組み付けられているのです。従って同エンジンでは、左右バンクのシリンダーオフセットは生じていないものと見ました。何故にこんな、手間の掛かる作りとするのか不思議にも感じます。

 その他、クランクキャップやコンロッドを止めるナット部に通常のヘキサゴン形状を取らず、細かい山のセレーション状のものが使用されていますが、これでは使用工具に相当に精度の高い専用レンチを使用しないと、あっという間になめてダメにしてしまうな等と思います。それと、同エンジンではバルブ駆動にギヤトレインが利用されていることや、機械式過給器の駆動のためと思いますが、多数のギヤが使用されていることに感心します。また、今回の観察ではそこまで見えませんでしたが、ネット記事等によればクランクやコンロッド部を含め、それら軸受け関係は現在のプレーンベアリングでなくローラーベアリングが多用されている様です。そんなことから、凄く凝ったというか、複雑な構造のエンジンであると感じます。このエンジンは、その構造故に故障率も高く整備製も良好ではなかったことが伺われます。そして、そもそも当時の日本にあった工作機械の精度の限界もあり、設計スペック通りの性能や信頼性を生み出すことができなかったものと想像します。彗星にしても飛燕にしても、後期型では空冷エンジンに換装されてしまい、本来の流麗な姿ではなくなった様です。こんなところも、日本が負けた小さいことでしょうが原因の一端があるのだと感じます。

 

追記

 今日の所感として記します。皆が自らが置かれた現状に疑問を感じてはいないのでしょうか。それとも疑問は感じつつも、云うだけ無駄なことと達観もしく諦観しているのでしょうか。しかし、誰かがそのことに意見し伝えていかなければ、将来に渡り現状が改善なされることは決してあり得ず、むしろ悪化して行くことには自明のことです。


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