電子制御燃料噴射の昔話 その5
今回は、昔語りと現代の双方について、より実務的な内容としてガソリン用燃料噴射のインジェクター関連のことを記して見たい。
まず、昭和40年代後半からトヨタ、日産、いすゞなどで、ガソリンエンジン用電子制御エンジン機構が取り入られ始めたが、これらはほぼ独ボッシュ社のライセンス生産品だった。このパテントライセンスは既に失効している想像できるのだが、インジェクターのコネクタ形状とか、水温センサーやエアフローの接続コネクタで、当時のボッシュ社のパテント形状が今でも引き続いて残されているの見る機会がある。
フューエルインジェクターは、ガソリンポート噴射式では、通常ソレノイドコイル式が使用されるが、応答性を改善する目的で、コイル巻き数を減じ、外部レジスタ(抵抗)を経由した電源供給されるものもある。このインジェクターは通常シリンダー数毎に接地される場合が多いが、過去にキャブレターの様に集合された部位で、シングルもしくはダブルインジクターで燃料噴射を行う機種もあったが自然消滅したという感だ。これは、給気管ポート長とかその長さを合わせ込んで、吸気慣性を積極的に利用したり、個別気筒の噴射量のバラツキを防止するというところで、メリットなしと判断されたのだろうと想像する。
このインジェクターに共通の燃圧を与えるマニホールド機構のことを、フューエルデリバリパイプと呼んでいる。当初は正に金属配管を加工したり接続部はろう付けしたりして作られていたが、登場後5年ぐらい以降から、フューエルデリバリパイプは、交換引き抜き材とかアルミキャスト材の剛性的にもしっかりしたものが使用される様になり、インジェクターは吸気ポートとこのフューエルデリバリパイプの固定された間で保持される構造になった。この方式のインジェクターとデリバリパイプ接続部の機密はOリングで確保されるようになっている他、インジェクターの吸気ポート側もゴムシールが使用されており機密が保たれ、エアやエンジン上に水が掛かったとしても吸い込まれることない様にされている。この件で、最近トヨタのリコール(届け出5153:シエンタ・2022/4/13付け)で報知された、「カウルルーバーの水密が不良でエンジン上部雨水が掛かり、エンジン内に吸い込まれる場合がありコンロッドが変型したりエンジン損壊する場合がある」というものがあったが、何かおかしいリコールだなと思うところだ。
このフュエールインジェクターとデリバリチューブの旧・新の違いを添付写真で示す。なお、ここで旧型となる、およそ輸入車でも国産車でもEFIやEGIと呼ばれて登場した初期のインジェクターでは、短いホースがインジェクター側はカシメられて装着されラバー製のホースの交換ができない構造とされているのだが、長期間の経年でこの短いホース部の亀裂などで燃料もれがあり、記憶ではトヨタの場合も、最初のEFI搭載車であった18R-Eというエンジンで、生産後6,7年してからリコールが出されていたと記憶する。この初期のDもしくはLジェトロのインジェクターカシメの短いホース構造は、国産旧車だけでなく欧州輸入旧車でも使用されている場合があるので、要確認の部位だと認識している。(該当亀裂写真を添付)
また、フューエルデリバリチューブが高剛性のものに変更された頃から、同チューブにはパルセーションダンパーというのが接地される様になった。これは、添付図に示す様にダイヤフラムとスプリングで、個別インジェクターが作動した際のデリバリーチューブ内の燃圧微震圧を吸収するもので、大して大きな容量を持つアキュームレーターを意味する様なものでない。エンジン作動中は、インジェクターの作動音は、聴音機で聞くとカチカチと聞こえるのだが、このパルセーションダンパーの端末部に指を当てると微振動が感じられる。この機能は、燃圧変動により噴射量のバラツキを押さえると云うより、この燃圧変化による微振動が、特定回転域で共振して比較的大きく響くというのを抑制しているのだろうとは私見たる推察だ。
それと、最近はダウンサイジングターボ付き車が流行であるが、このターボ付きは見掛けの圧縮比を下げて加給を行う場合が多かったのだが、現代エンジンではターボ付きでも11:1程度の高圧縮エンジンが出ている。これの最大の功労システムが、直噴インジクターだろう。この直噴インジェクターは、燃焼室側面もしくは上面からシリンダー内に直接噴射するが、噴射が目指すのはスパークプラグ付近の位置だ。これにより、ポート噴射で混合気の圧縮行程中盤で早期着火するのをギリのタイミングで噴射することで早期着火やノックを防止しているのだ。ただし、これの効用を認めない訳にはいかないが副作用もあることを意識しなければならない。つまり、シリンダー内に点火直前に噴射された燃料は、そのすべてが混合気として空気と混じり合わず、噴射燃料粒が燃焼室壁面に張り付いた状態で燃焼が行われると、そもそも燃焼の中心部は1千度を遙かに超える高温となるが、燃焼室壁面との間には温度境界層という膜が生成されることで、僅か融点が660℃程度(実態は400℃以上で強度はなくなる)のアルミ製ヘッドやピストンが溶けることはないのだ。この場合、壁面に張り付いた燃料粒は酸素がないので燃えず炭(カーボン粒)になるのだ。これが、シリンダー壁を垂れ下がりオイルを黒化させ、ピストントップやオーバーラップ中に吹き返したガスで吸気ポートだとかクールドEGR機構に堆積するのだ。こういうエンジンを適切なオイル管理だけでは、長期使用に耐えられる素養は著しく阻害されるとは拙人の思いだ。
なお、ガソリンエンジン用直噴システムは、燃料フィードポンプとか燃料のリターン回路はポート噴射用とほぼ同様だ。違いは、より強化されたフューエルデリバリチューブに与える燃圧を、既存の市販車ではカムシャフト後端もしくは中間のカムとプランジャー機構で大幅に増圧(80MPa程度)しているのだ。これは、ディーゼルで云えば、現在のコモンレールと旧来の列型噴射ポンプ時代の中間にユニットインジクターという噴射ノズル直前で、カム軸で噴射圧を増圧している機構を持つエンジンが主にUD社などで多用されていたが、それに近いシステムだと云えるだろう。
さて、デリバリチューブに直付けか別体になっている場合もあるが、付近にはプレッシャーレギュレターという装置が付く。これにより燃圧は約200KPa程度の燃圧に保たれる仕組みになっている。従前の記事に記したと思うが、当初は絶対圧で制御するものだったが、途中から給気管負圧をスプリング室に導くことで給気管圧に応じた圧力に応じた差圧に調圧される仕組みが取り入られた。これにより、主に高地での気圧差で、フューエルリッチ傾向を補正できる様に改善されている。
なお、プレッシャーレギュレターで調圧された余分な燃料はフューエルタンクリターンホースおよびパイプを通ってタンク内に戻る。また、タンク内に設置した燃料フィードポンプにより圧送される燃料は、プレッシャーレギュレターまで導かれると云うことで、エンジン運転中は多くの燃料はプレッシャーレギュレターでリターン側に戻されることになる。この様な働きにより、エンジンルーム内のある程度温度が高い環境でも、燃料が循環することで、沸点の比較的低い(35-180℃)のガソリンのベーパーロックを防止している。ところで、EFI機構で燃圧系までを付けて点検するケースは少ないのだが、拙人は若きディラー時代に2度ばかり、この燃圧計でトラブルを発見した記憶が甦るので、若干触れたい。➀は夏期などでエンジン止めて30分とか1時間後に再始動しようとすると異様に長いクランキング時間を要するというものだ。これは燃圧系の動作を見て、即座に判明した。プレッシャーレギュレターは、エンジン稼働中の燃圧を一定に保つ他、エンジン停止時に保持する働きがある。この場合、不良のプレッシャーレギュレターは、エンジン停止で燃圧がスーと下がってしまうということで内部弁の密着が悪いと云うことだ。そうなると、走行後のエンジンルームは停止して温度が高い状態で維持されるので、走行風が当たる場所などは走行中より温度が上がる部位もあるだろう。こうなると、燃圧が作用していない燃料は沸点に達しベーパーロックを起こしていて、なかなか燃圧が上昇し難く、エンジン始動が困難になると云うものだ。②は高負荷運転で息付きを起こすと云うもので、状態は前回加速を行えば容易に症状は確認できた。され、これは高圧火花の失火か燃料かということだが、高圧火花の失火は、こうも連続的に起きるなら、そもそも高負荷でなくとも軽い加速でも起きることから、燃圧臭いなと、燃圧系を装着し、ゲージをボンネット隙間からフロントガラス下端に室内側から見える様にガムテープで留め、走行テストすると、フル加速で燃圧低下が著しい。配管途中にある金属ケースの燃料フィルターを交換したら、燃圧低下は解消した。なお、この場合燃料ポンプの供給不足と云う場合もあるだろう。
それと。フューエルポンプ制御のことで若干触れたいが、EFIなど燃料噴射エンジンでは、事故などでエンジン停止時に燃料ポンプが止まる電気回路が採用されている。これはLジェトロのフラップ式エアフローの時代は、フラップが僅かに開くとフューエルポンプ接点が閉じ、サーキットオープニングリレーがONになると云う回路と、スターターモーターS接点の信号でもサーキットオープニングリレーはONになる様になっていた。
現在は、フラップ式エアフローは使われないが、エンジン回転信号とか使用しエンジンECUからの信号でフューエルポンプリレーを作動させている。なお、一般の車では、IGスイッチONで数秒間はフューエルポンプが廻るし、スターターモーター作動中もフューエルポンプは廻る。なお、細部は未確認ながら、最近のクルマでは、フューエルポンプを常時定常回転させているのではなく、二段階程度に回転制御している(低負荷運転ではLo、高負荷運転ではHi~ものもある様だ。
昨年からデンソーのフューエルポンプが全世界で1千万台を超えるリコールを出しており、未だすべてのリコール対策は完了していないと思うが、この件でデンソーはフューエルポンプ部門を関連企業に譲渡してしまった。この件は、フュエールポンプモーターは正常なのだが、ポンプ部の樹脂製インペラとケーシングが樹脂成形中の温度管理が悪く、燃料で膨潤してインペラがケーシングに接触廻らなくなると説明されている。この件もそうだが、とかくフューエルポンプの不具合でエンジン始動不能のケースというのは今でも時々見ることがあるが、こういう場合、小さなハンマーで軽く打撃する(インタンク式の場合は、ポンプ上部の樹脂部をゴムハンマーで打撃すると、案外始動に成功する場合がある。この場合、これは応急処置であり、ポンプは交換しなければならないが、クルマが動くのと動かないのでは、積載車に積み込むにしても労力は大違いだ。
#燃料噴射の昔話と最新話 #フューエルインシクタ #フューエルデリバリパイプ #プレッシャーレギュレター #フューエルポンプ
今回は、昔語りと現代の双方について、より実務的な内容としてガソリン用燃料噴射のインジェクター関連のことを記して見たい。
まず、昭和40年代後半からトヨタ、日産、いすゞなどで、ガソリンエンジン用電子制御エンジン機構が取り入られ始めたが、これらはほぼ独ボッシュ社のライセンス生産品だった。このパテントライセンスは既に失効している想像できるのだが、インジェクターのコネクタ形状とか、水温センサーやエアフローの接続コネクタで、当時のボッシュ社のパテント形状が今でも引き続いて残されているの見る機会がある。
フューエルインジェクターは、ガソリンポート噴射式では、通常ソレノイドコイル式が使用されるが、応答性を改善する目的で、コイル巻き数を減じ、外部レジスタ(抵抗)を経由した電源供給されるものもある。このインジェクターは通常シリンダー数毎に接地される場合が多いが、過去にキャブレターの様に集合された部位で、シングルもしくはダブルインジクターで燃料噴射を行う機種もあったが自然消滅したという感だ。これは、給気管ポート長とかその長さを合わせ込んで、吸気慣性を積極的に利用したり、個別気筒の噴射量のバラツキを防止するというところで、メリットなしと判断されたのだろうと想像する。
このインジェクターに共通の燃圧を与えるマニホールド機構のことを、フューエルデリバリパイプと呼んでいる。当初は正に金属配管を加工したり接続部はろう付けしたりして作られていたが、登場後5年ぐらい以降から、フューエルデリバリパイプは、交換引き抜き材とかアルミキャスト材の剛性的にもしっかりしたものが使用される様になり、インジェクターは吸気ポートとこのフューエルデリバリパイプの固定された間で保持される構造になった。この方式のインジェクターとデリバリパイプ接続部の機密はOリングで確保されるようになっている他、インジェクターの吸気ポート側もゴムシールが使用されており機密が保たれ、エアやエンジン上に水が掛かったとしても吸い込まれることない様にされている。この件で、最近トヨタのリコール(届け出5153:シエンタ・2022/4/13付け)で報知された、「カウルルーバーの水密が不良でエンジン上部雨水が掛かり、エンジン内に吸い込まれる場合がありコンロッドが変型したりエンジン損壊する場合がある」というものがあったが、何かおかしいリコールだなと思うところだ。
このフュエールインジェクターとデリバリチューブの旧・新の違いを添付写真で示す。なお、ここで旧型となる、およそ輸入車でも国産車でもEFIやEGIと呼ばれて登場した初期のインジェクターでは、短いホースがインジェクター側はカシメられて装着されラバー製のホースの交換ができない構造とされているのだが、長期間の経年でこの短いホース部の亀裂などで燃料もれがあり、記憶ではトヨタの場合も、最初のEFI搭載車であった18R-Eというエンジンで、生産後6,7年してからリコールが出されていたと記憶する。この初期のDもしくはLジェトロのインジェクターカシメの短いホース構造は、国産旧車だけでなく欧州輸入旧車でも使用されている場合があるので、要確認の部位だと認識している。(該当亀裂写真を添付)
また、フューエルデリバリチューブが高剛性のものに変更された頃から、同チューブにはパルセーションダンパーというのが接地される様になった。これは、添付図に示す様にダイヤフラムとスプリングで、個別インジェクターが作動した際のデリバリーチューブ内の燃圧微震圧を吸収するもので、大して大きな容量を持つアキュームレーターを意味する様なものでない。エンジン作動中は、インジェクターの作動音は、聴音機で聞くとカチカチと聞こえるのだが、このパルセーションダンパーの端末部に指を当てると微振動が感じられる。この機能は、燃圧変動により噴射量のバラツキを押さえると云うより、この燃圧変化による微振動が、特定回転域で共振して比較的大きく響くというのを抑制しているのだろうとは私見たる推察だ。
それと、最近はダウンサイジングターボ付き車が流行であるが、このターボ付きは見掛けの圧縮比を下げて加給を行う場合が多かったのだが、現代エンジンではターボ付きでも11:1程度の高圧縮エンジンが出ている。これの最大の功労システムが、直噴インジクターだろう。この直噴インジェクターは、燃焼室側面もしくは上面からシリンダー内に直接噴射するが、噴射が目指すのはスパークプラグ付近の位置だ。これにより、ポート噴射で混合気の圧縮行程中盤で早期着火するのをギリのタイミングで噴射することで早期着火やノックを防止しているのだ。ただし、これの効用を認めない訳にはいかないが副作用もあることを意識しなければならない。つまり、シリンダー内に点火直前に噴射された燃料は、そのすべてが混合気として空気と混じり合わず、噴射燃料粒が燃焼室壁面に張り付いた状態で燃焼が行われると、そもそも燃焼の中心部は1千度を遙かに超える高温となるが、燃焼室壁面との間には温度境界層という膜が生成されることで、僅か融点が660℃程度(実態は400℃以上で強度はなくなる)のアルミ製ヘッドやピストンが溶けることはないのだ。この場合、壁面に張り付いた燃料粒は酸素がないので燃えず炭(カーボン粒)になるのだ。これが、シリンダー壁を垂れ下がりオイルを黒化させ、ピストントップやオーバーラップ中に吹き返したガスで吸気ポートだとかクールドEGR機構に堆積するのだ。こういうエンジンを適切なオイル管理だけでは、長期使用に耐えられる素養は著しく阻害されるとは拙人の思いだ。
なお、ガソリンエンジン用直噴システムは、燃料フィードポンプとか燃料のリターン回路はポート噴射用とほぼ同様だ。違いは、より強化されたフューエルデリバリチューブに与える燃圧を、既存の市販車ではカムシャフト後端もしくは中間のカムとプランジャー機構で大幅に増圧(80MPa程度)しているのだ。これは、ディーゼルで云えば、現在のコモンレールと旧来の列型噴射ポンプ時代の中間にユニットインジクターという噴射ノズル直前で、カム軸で噴射圧を増圧している機構を持つエンジンが主にUD社などで多用されていたが、それに近いシステムだと云えるだろう。
さて、デリバリチューブに直付けか別体になっている場合もあるが、付近にはプレッシャーレギュレターという装置が付く。これにより燃圧は約200KPa程度の燃圧に保たれる仕組みになっている。従前の記事に記したと思うが、当初は絶対圧で制御するものだったが、途中から給気管負圧をスプリング室に導くことで給気管圧に応じた圧力に応じた差圧に調圧される仕組みが取り入られた。これにより、主に高地での気圧差で、フューエルリッチ傾向を補正できる様に改善されている。
なお、プレッシャーレギュレターで調圧された余分な燃料はフューエルタンクリターンホースおよびパイプを通ってタンク内に戻る。また、タンク内に設置した燃料フィードポンプにより圧送される燃料は、プレッシャーレギュレターまで導かれると云うことで、エンジン運転中は多くの燃料はプレッシャーレギュレターでリターン側に戻されることになる。この様な働きにより、エンジンルーム内のある程度温度が高い環境でも、燃料が循環することで、沸点の比較的低い(35-180℃)のガソリンのベーパーロックを防止している。ところで、EFI機構で燃圧系までを付けて点検するケースは少ないのだが、拙人は若きディラー時代に2度ばかり、この燃圧計でトラブルを発見した記憶が甦るので、若干触れたい。➀は夏期などでエンジン止めて30分とか1時間後に再始動しようとすると異様に長いクランキング時間を要するというものだ。これは燃圧系の動作を見て、即座に判明した。プレッシャーレギュレターは、エンジン稼働中の燃圧を一定に保つ他、エンジン停止時に保持する働きがある。この場合、不良のプレッシャーレギュレターは、エンジン停止で燃圧がスーと下がってしまうということで内部弁の密着が悪いと云うことだ。そうなると、走行後のエンジンルームは停止して温度が高い状態で維持されるので、走行風が当たる場所などは走行中より温度が上がる部位もあるだろう。こうなると、燃圧が作用していない燃料は沸点に達しベーパーロックを起こしていて、なかなか燃圧が上昇し難く、エンジン始動が困難になると云うものだ。②は高負荷運転で息付きを起こすと云うもので、状態は前回加速を行えば容易に症状は確認できた。され、これは高圧火花の失火か燃料かということだが、高圧火花の失火は、こうも連続的に起きるなら、そもそも高負荷でなくとも軽い加速でも起きることから、燃圧臭いなと、燃圧系を装着し、ゲージをボンネット隙間からフロントガラス下端に室内側から見える様にガムテープで留め、走行テストすると、フル加速で燃圧低下が著しい。配管途中にある金属ケースの燃料フィルターを交換したら、燃圧低下は解消した。なお、この場合燃料ポンプの供給不足と云う場合もあるだろう。
それと。フューエルポンプ制御のことで若干触れたいが、EFIなど燃料噴射エンジンでは、事故などでエンジン停止時に燃料ポンプが止まる電気回路が採用されている。これはLジェトロのフラップ式エアフローの時代は、フラップが僅かに開くとフューエルポンプ接点が閉じ、サーキットオープニングリレーがONになると云う回路と、スターターモーターS接点の信号でもサーキットオープニングリレーはONになる様になっていた。
現在は、フラップ式エアフローは使われないが、エンジン回転信号とか使用しエンジンECUからの信号でフューエルポンプリレーを作動させている。なお、一般の車では、IGスイッチONで数秒間はフューエルポンプが廻るし、スターターモーター作動中もフューエルポンプは廻る。なお、細部は未確認ながら、最近のクルマでは、フューエルポンプを常時定常回転させているのではなく、二段階程度に回転制御している(低負荷運転ではLo、高負荷運転ではHi~ものもある様だ。
昨年からデンソーのフューエルポンプが全世界で1千万台を超えるリコールを出しており、未だすべてのリコール対策は完了していないと思うが、この件でデンソーはフューエルポンプ部門を関連企業に譲渡してしまった。この件は、フュエールポンプモーターは正常なのだが、ポンプ部の樹脂製インペラとケーシングが樹脂成形中の温度管理が悪く、燃料で膨潤してインペラがケーシングに接触廻らなくなると説明されている。この件もそうだが、とかくフューエルポンプの不具合でエンジン始動不能のケースというのは今でも時々見ることがあるが、こういう場合、小さなハンマーで軽く打撃する(インタンク式の場合は、ポンプ上部の樹脂部をゴムハンマーで打撃すると、案外始動に成功する場合がある。この場合、これは応急処置であり、ポンプは交換しなければならないが、クルマが動くのと動かないのでは、積載車に積み込むにしても労力は大違いだ。
#燃料噴射の昔話と最新話 #フューエルインシクタ #フューエルデリバリパイプ #プレッシャーレギュレター #フューエルポンプ