私の思いと技術的覚え書き

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クランクプーリーのキー嵌合がないエンジンのこと

2018-03-08 | BMWミニ
 このことは、今や知ってる方も多いと思うが、偶に話す整備士でも「そんなのあるのかい!」と驚かれることが多いので、お節介ながら記すものだ。

 さて、クランクプーリー、その奥に位置するスプロケットとか、カムシャフト前端(後端もありですが)に付くスプロケットには、軸に設置されたキー溝にはまり込む”みかづき”状のキーにピッタリ嵌合する様に、キー溝が加工されている。何故なら、バルブタイミングを確実に合わせるためには必要だからのことは常識的だと思う。しかし、最近のエンジンの中には、キーもキー溝も一切ないというクルマがあるのだ。私も数年前に、この現実に遭遇したとき驚いたものだ。

 具体的なクルマはBMWミニ(R56)に搭載された、N12とかN14という、既に10年ほど経過したエンジンである。ちなみ、このエンジンはBMWとPSA(仏プジョーとシトロエン)とが共同開発したものであり、ミニ以外のPSA車にも搭載される。また、このキー無し構造は、以降のBMWミニや他のBMWエンジンでもあると想像するが明細は不知だ。

 BMWのN系エンジンの場合、どうやってバルタイを合わせるのか、もしくは点検するのかを、かいつまんで記してみる。

①クランクププーリーロックボルトを回して、全シリンダーのピストンを水平状態に合わせる。つまりTDCから90度回転させた状態。具体的な手法としては、全プラグを外し、1及び2番シリンダーに同長の割り箸でも入れて、その突き出し高さが一致した点ということ。

②この時、INおよびEXのカムシャフト上部に打刻(アルファベットと数値の文字列)があるかどうかを見る。もし、ない場合は、もう1周(360度)クランクプーリーを回して、①および②を行う。

③クランクロックツールを、エンジン後部下面(トランスアクス前部)にあるホール(10Φ)に挿入し、その先端凸径(8Φ)を合わせ挿入ロックする。このとき、正確に合わないと入らないので、ゆっくり微少にクランクを前後させながら行うと入り易い。

④この状態で、カムシャフト後部に設けられた平面(幅約31mm)が、ヘッド水平面に対し垂直であること。

※上記のクランクロック用具とカムシャフトの垂直を確認するSSTがアライメントゲージとして用意されている。(外品もあり。)

 と、いうような流れだが、最初に遭遇した際は驚いたが、そもそもキーがあっても、キーで力を支えている訳ではないのだと改めて思う。つまり、昔経験した、エンジンからゴトゴト音を発していて、調べたらクランクプーリーロックボルトの緩みであり、キーやキー溝までが摩耗し、機械工屋さんでキー溝の修正を行い修復したことがあるが、そんなことは確実にボルトを締め付けていればないということだ。メーカーとしては、この構造により以下の様な優位な点があると着目したのだと想像する。

①バルブタイミングを精度良く合わせられる。
 従来だとバルブタイミングを精度良く合わせるために、カム側のスプロケットにキーでなくロックピンを挿入する方式になってて、スプロケット側にスプロケット間隔の間を補完する複数以上の穴があって、なるべく一致する部位で嵌合させるとかの補助的な構造を持っていた。もしくは、チェーン方式よりコマ数の多いベルト方式では、多少の狂いはOKとしていたのだ。

②フロントカバーが不要にできる。
 従来だと、エンジン組み付け時に、チェーンの組み付けなどのため、フロントカバーを別体とせねばならなかった。しかし、先のN系エンジンでは、別体のフロントカバーはなくブロック一体である。この構造により、ヘッドカバーとカムスプロケットとクランクプーリーを外せば、上部からクランクスプロケット、チェーンおよびガイドをセットで、取り外し取り付けができる。

 最後に、ここが今回一番伝えたいところだが、先の内容を知らぬまま、「クランクフロントオイルシールからのオイル漏れか、簡単なものさ」と、インパクトでセットボルトを緩めた瞬間、当事者は知らぬがバルタイは狂ってしまうのだ。そして、再始動するが、上手く始動したとしても(最悪は破壊音だが)、何か調子がへんだなぁと途方に暮れる事態にだけはなって欲しくないと願い本件を記した次第なのだ。






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