私の思いと技術的覚え書き

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保険の矛盾 その2

2020-08-26 | 問題提起
 今回は自動車保険に特約として付帯できる弁護士特約について記して見る。
 この特約も、前回記した対物超過保険の追加から程なくして採用されたと記憶するので、比較的新しい制度であろう。何れにせよ、保管会社がこの様な新しい制度を導入するのは、必ずしも世の社会潜在的なニーズ(要求)があるからというより、車両登録台数が8千万台で頭打ちとなる中、少しでも保険料の底上げを図りたいとか、損害調査費を圧縮したいということが背景にあると想像できる。ここで、弁護士費用が追加になるなら、損害調査費が増えると思われる方もいるかもしれないが、保険契約者の中で実際に弁護士特約を利用する場合をそれ程多く見込んでいないと思われるからです。

 ここで弁護士費用特約のおおよそを記して見る。この特約の対象としては、記名被保険者と家族、同居の親族、別居の未婚の子、契約車両に搭乗していた者、契約車両の所有者となっている。

 どの様な事故が対象かだが、契約車両だけでなく、さまざまな車両を運転中もしくは搭乗中の事故、自転車運転中の事故、歩行中の事故とされている。

 なお、使えない場合として、この保険の説明には「(特約の対象者が)もらい事故などで損害を受けた」とあり、特約の対象者の飲酒、故意、粗暴な行為など、明らかに対象者の過失が大きい場合は利用できない。また、過失割合が明らかに対象者の方が大きい場合も使えないとされているが、何れにしても使う場合は保険会社の同意を得た場合という規定になっている。

 ということから、例えば支払い保険会社に損害認容とか支払を求める交渉に利用しようとしても、保険会社は同意しないだろう。また、明らかに過失が大きい者が、弁護士を通じて相手方を精神的に圧迫するという社会正義に反することも防いでいるのは理解できる。

 ところで、弁護士特約など関係なく、保険会社では自社で解決が困難とか、ある程度の高額損害などになると顧問として要する弁護士に案件解決を委嘱することは予てより行われてきた。この場合の費用は、損害調査費として保険会社が負担する訳だ。こんな中で、保険会社や、それぞれの部署の担当者にもよるのだろうが、こんな軽微な、しかも善良な被害者に対し、大した話し合いをしないまま弁護士を介入させる妥当性があるのだろうかという実態も垣間見てきた。こういうのは、例えて見れば過剰防衛というか権力の濫用というものに近いと思っている。

 ただし、これを見ている方で、もし相手方損保が弁護士を立ててきたからどうしようと不安になる必用はない。弁護士は、訴訟の話しを楯に取って話すかもしれないが、訴訟になったところで時間が十分取れる方なら自分で対応できるので、自ら弁護士を立てるまでもない。そもそも、本音としては相手弁護士も、こんな小訴額(要求受ける額)の案件で、手間暇掛けたくない(弁護士報酬は概略着手金10%、完結しての成功報酬10~20%というところ)だから、手の打てるところで早期の決着を目指して来るのは見えている。

 補足として記すが、交通事故の99%以上は訴訟でなく示談で解決されている。つまり民事事件として訴訟で解決されているのは1%に満たない。ただ話し合いの示談の解決ができない場合も、訴訟外紛争解決を行っている機関がある。一つは損保ADRという機関であり、もう一つは裁判所が行っている民事調停だ。最近聞くところによると、弁護士特約が販売されて以来、民事調停に弁護士が持ち込む数が増えているという。これは想像だが、弁護士も自分で説明するのがめんどくさいとか裁判所の権威を利用して妥協点を見つけたいというところだろう。

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