ルポルタージュ・損害調査員 その2【免許・資格の欠落】
私は損保に所属する元損害調査員(技術アジャスターと云われる)だった(現在でも資格は保持している)が、断じて見積専門屋の意識はない。これは拙人が損保所属になってからの教育だとか自己の読む書籍から確信していることなのだが、損害保険とは営利企業ではあるものの、多数の善良な契約者を前提にして、妥当な保険料を集め、ある確率で存在する不幸な事故が生じた時、その契約者の損失をカバーするという性質の商品なのだ。だから、そもそも保険を詐取しようとしたり者や、保険約款で支払えないとした要件を虚偽もしくは欠落した者に対し不適当な処理するとは、善良な契約者への裏切り行為であり、保険制度が持つ社会的な公益性から許されざる問題と認識している。このことを最近はあまり聞かなくなった様に思えるが、業界の損害調査に関わる者は「査定正義」と呼んでいるのだ。
今回紹介する実例事案は、拙人が損害調査員になって、未だ半年程度の時期だったと思えるが、契約者は女性で20代後半くらいの年齢層だったと記憶している。案件は車両の単独自損事故で、比較的細い路地の左折路で、左側面を電柱に擦りつけた様な事故だった様に思える。損害状況などは問題なく、後は事故現場との整合性はどうかと云うことで、この際は契約者に連絡を取ったところ、自宅の近くなので現場を案内しますと云うことで、予め時間を打ち合わせておき、事故現場で落ち合い事故現場状況を確認したのだった。事故現場の状況は契約車両の損傷に何の疑問もなく一致し、契約者の説明に何の不自然さもない。
そんな中、私から「○○(相手の名)様、運転免許証を確認させてもらえますが」と問いかけると、「はい」と提示された。私は、その免許証を素早く接写すると共に、改めて免許証を眺めると、公布日が事故発生日の後日になっており、しかも免許番号(12桁)の最末尾桁が"1"になっていることに気付き。「○○様、免許を○日に再公布受けてますね、どうされたのですか?」と問うた。その回答は「実は、免許の有効期限を失念して失効させてしまったのを事故後に知り再発行したのですが・・・」と説明されたのだった。こりゃ気の毒だなと思いつつ「それでは、事故時は免許が失効状態ということですから無免許運転という判断になってしまうのですよ」と説明したのだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/46/5065984db8f7dc88b163969906b4fb1f.jpg)
この際は、契約者に涙を浮かべて「なんとかなりませんか」などと訴えられたので、なんとも後味悪く帰社したのであったが、その様なレポートを作成し提出することになった。これは、私が知らなかったとして報告すれば、案外気が付けれずスルーした可能性も想定できたが、知ったからにはそうはできないという、契約者はさほど悪意があった訳ではないだろうが、思い出される案件の一つだ。
#損害調査員ルポルタージュ #免許・資格の欠落
私は損保に所属する元損害調査員(技術アジャスターと云われる)だった(現在でも資格は保持している)が、断じて見積専門屋の意識はない。これは拙人が損保所属になってからの教育だとか自己の読む書籍から確信していることなのだが、損害保険とは営利企業ではあるものの、多数の善良な契約者を前提にして、妥当な保険料を集め、ある確率で存在する不幸な事故が生じた時、その契約者の損失をカバーするという性質の商品なのだ。だから、そもそも保険を詐取しようとしたり者や、保険約款で支払えないとした要件を虚偽もしくは欠落した者に対し不適当な処理するとは、善良な契約者への裏切り行為であり、保険制度が持つ社会的な公益性から許されざる問題と認識している。このことを最近はあまり聞かなくなった様に思えるが、業界の損害調査に関わる者は「査定正義」と呼んでいるのだ。
今回紹介する実例事案は、拙人が損害調査員になって、未だ半年程度の時期だったと思えるが、契約者は女性で20代後半くらいの年齢層だったと記憶している。案件は車両の単独自損事故で、比較的細い路地の左折路で、左側面を電柱に擦りつけた様な事故だった様に思える。損害状況などは問題なく、後は事故現場との整合性はどうかと云うことで、この際は契約者に連絡を取ったところ、自宅の近くなので現場を案内しますと云うことで、予め時間を打ち合わせておき、事故現場で落ち合い事故現場状況を確認したのだった。事故現場の状況は契約車両の損傷に何の疑問もなく一致し、契約者の説明に何の不自然さもない。
そんな中、私から「○○(相手の名)様、運転免許証を確認させてもらえますが」と問いかけると、「はい」と提示された。私は、その免許証を素早く接写すると共に、改めて免許証を眺めると、公布日が事故発生日の後日になっており、しかも免許番号(12桁)の最末尾桁が"1"になっていることに気付き。「○○様、免許を○日に再公布受けてますね、どうされたのですか?」と問うた。その回答は「実は、免許の有効期限を失念して失効させてしまったのを事故後に知り再発行したのですが・・・」と説明されたのだった。こりゃ気の毒だなと思いつつ「それでは、事故時は免許が失効状態ということですから無免許運転という判断になってしまうのですよ」と説明したのだった。
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この際は、契約者に涙を浮かべて「なんとかなりませんか」などと訴えられたので、なんとも後味悪く帰社したのであったが、その様なレポートを作成し提出することになった。これは、私が知らなかったとして報告すれば、案外気が付けれずスルーした可能性も想定できたが、知ったからにはそうはできないという、契約者はさほど悪意があった訳ではないだろうが、思い出される案件の一つだ。
#損害調査員ルポルタージュ #免許・資格の欠落