ふじあざみラインの道路傾斜ぶり
昨年10月のふじあざみラインの下り坂でのバス事故に対する関心は高く、今年5/21には事故現場に赴いて改めて事故現場のカーブの曲率とか路面の状態などの実際を観察しレポートを記している。(下記記事参照)
【過去記事】
ふじあざみラインバス事故現場に立つ
2023-05-21 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/e8d0da49fee1c595881b1b9e8db7c95e
今回、国土地理院の地図だと、全国各地の標高が捕捉できるので、今回のバス事故の出発地である5合目と事故場所をそれぞれマークして、その道順を大まかにトレースすると、総延長距離約6,000m、標高差600mであることが判った。この間のカーブ数は総計30カ所、平均斜度を計算すると5.7°であることが計算できる。
この平均斜度5.7°は大したことない様に感じるかもしれない。例えば、伊豆半島地区だと熱海市内の住宅街などに入り込むと、凄い坂だなあと感じる場所があり、おそらく30°近い場合もあるのだろう。しかし、これが極短距離であれば大した問題ではない。しかし、距離6kmに渡って30程のカーブが続き、平均斜度が5°を越えると云うことは、6kmをブレーキ踏み続ければ、重量車ではブレーキフェードを起こしてしまう。
ちなみに、あざみラインの前半部には、約2kmのほぼ直線部があるが、この間の平均斜度は5.2°であるが、帰りに実験してみるとATレンジをDでアクセル離していても、みるみる加速し100km/hに近づく。これが、カーブが連続する道路だと、当然旋回しきれないので、その度にブレーキで減速を繰り返したのだろうが、そもそもこういうつづら折れの下り坂道では速度を上げてはいけない。
5/21の検分時の登りでも、前方に積車したダンプに追い付いたのだが、およそそのダンプの速度は30km/h程度、すなわちMTシフトは2速位置であったろう。重量車では、2速で登った道は、帰りの下り坂を2速で下るのが常識とされている。さすれば、つづら折れカーブでの更なる減速でも、減速度は少なくて済むし多頻度ブレーキとなることもない。
もう一つ、フェードというのはブレーキ摩擦体が高温(400℃以上)となって摩擦係数が下がり制動効果が失われる現象だが、通常の乗用車などのバキュームサーボ+油圧式ブレーキでは、フェード気味になると同じ減速感を得る時のペダル踏力が増えることで察知し易い。ところが、大型車に使用されるエアブレーキ(これには純エア式とエア、油圧複合式の2種類がある)だが、バキュームサーボが真空と大気との圧力差だけでアシストするのに対し、エア式は圧縮空気(800kPa)程度で加圧してアシストするので、ペダル踏力が非常に軽くて良いために、軽いタッチで踏み過ぎない様にアクセルの様なオルガン式ペダルにしているのだ。この場合、ペダルタッチの反力でフェードを感じ取るのは難しい。あくまで、同程度のペダルタッチで、車体の減速度がどうかという様子を通してしかフェードの前兆を捉えることが困難ということがありそうだ。
余録
ゴムタイヤを使用する自動車において、5°程度の傾斜は大したことないのだが、鉄道においてはパーミルという表示がなされている。これは1000m進んで何m上がるかという主に登り傾斜を示すものとして使用されるのだが、鉄道一般路線では25パーミルが一定の限界だという。つまり1000mで25m上がる傾斜だが、これ角度に変換すると1.4°に相当するそうだ。鉄道の場合はレールと車輪がそれぞれ鋼製であり、摩擦係数がおそらく0.2程度しかない故の問題であろう。ちなみに、アスファルトとゴムタイヤの摩擦係数は0.7-0.8程度と鉄路に比べると格段に大きい。
昨年10月のふじあざみラインの下り坂でのバス事故に対する関心は高く、今年5/21には事故現場に赴いて改めて事故現場のカーブの曲率とか路面の状態などの実際を観察しレポートを記している。(下記記事参照)
【過去記事】
ふじあざみラインバス事故現場に立つ
2023-05-21 | 事故と事件
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/e8d0da49fee1c595881b1b9e8db7c95e
今回、国土地理院の地図だと、全国各地の標高が捕捉できるので、今回のバス事故の出発地である5合目と事故場所をそれぞれマークして、その道順を大まかにトレースすると、総延長距離約6,000m、標高差600mであることが判った。この間のカーブ数は総計30カ所、平均斜度を計算すると5.7°であることが計算できる。
この平均斜度5.7°は大したことない様に感じるかもしれない。例えば、伊豆半島地区だと熱海市内の住宅街などに入り込むと、凄い坂だなあと感じる場所があり、おそらく30°近い場合もあるのだろう。しかし、これが極短距離であれば大した問題ではない。しかし、距離6kmに渡って30程のカーブが続き、平均斜度が5°を越えると云うことは、6kmをブレーキ踏み続ければ、重量車ではブレーキフェードを起こしてしまう。
ちなみに、あざみラインの前半部には、約2kmのほぼ直線部があるが、この間の平均斜度は5.2°であるが、帰りに実験してみるとATレンジをDでアクセル離していても、みるみる加速し100km/hに近づく。これが、カーブが連続する道路だと、当然旋回しきれないので、その度にブレーキで減速を繰り返したのだろうが、そもそもこういうつづら折れの下り坂道では速度を上げてはいけない。
5/21の検分時の登りでも、前方に積車したダンプに追い付いたのだが、およそそのダンプの速度は30km/h程度、すなわちMTシフトは2速位置であったろう。重量車では、2速で登った道は、帰りの下り坂を2速で下るのが常識とされている。さすれば、つづら折れカーブでの更なる減速でも、減速度は少なくて済むし多頻度ブレーキとなることもない。
もう一つ、フェードというのはブレーキ摩擦体が高温(400℃以上)となって摩擦係数が下がり制動効果が失われる現象だが、通常の乗用車などのバキュームサーボ+油圧式ブレーキでは、フェード気味になると同じ減速感を得る時のペダル踏力が増えることで察知し易い。ところが、大型車に使用されるエアブレーキ(これには純エア式とエア、油圧複合式の2種類がある)だが、バキュームサーボが真空と大気との圧力差だけでアシストするのに対し、エア式は圧縮空気(800kPa)程度で加圧してアシストするので、ペダル踏力が非常に軽くて良いために、軽いタッチで踏み過ぎない様にアクセルの様なオルガン式ペダルにしているのだ。この場合、ペダルタッチの反力でフェードを感じ取るのは難しい。あくまで、同程度のペダルタッチで、車体の減速度がどうかという様子を通してしかフェードの前兆を捉えることが困難ということがありそうだ。
余録
ゴムタイヤを使用する自動車において、5°程度の傾斜は大したことないのだが、鉄道においてはパーミルという表示がなされている。これは1000m進んで何m上がるかという主に登り傾斜を示すものとして使用されるのだが、鉄道一般路線では25パーミルが一定の限界だという。つまり1000mで25m上がる傾斜だが、これ角度に変換すると1.4°に相当するそうだ。鉄道の場合はレールと車輪がそれぞれ鋼製であり、摩擦係数がおそらく0.2程度しかない故の問題であろう。ちなみに、アスファルトとゴムタイヤの摩擦係数は0.7-0.8程度と鉄路に比べると格段に大きい。