車両火災の他損保からの求償案件の棄却
この事案は、拙人が損害保険会社所属時代のこととなるが、ある車両火災が生じ、それがある工場で車検整備を行い約2ヶ月後、その間の走行距離数が僅か31kmであったという理由を主因に据えた鑑定書だったか意見書が添えられて、いわゆる求償が該当車検実施工場になされたという案件だった。該当の車検整備実施工場では、この様な整備作業の瑕疵による損害賠償に備え、生産物賠償保険に加入しており、拙人の所属する保険会社に相談がもたらされたという案件である。
今日(5/1)昼過ぎに元損害調査員として現象をある意味嘆く「損保調査員の守備範囲を思う」にも関連することだが、この様な求償を行う意見書を作成し保険会社としての正当な求償に協力することも損害調査員(アジャスター)の守備範囲であろう。その点では、この某社の求償に関わる意見書は損害調査員名で作成されており、正に守備範囲をまっとうしているのだ。
一方、受ける拙人もその求償が自動車工学とか整備実務の実態などから妥当なものかを専門家として判断し、妥当でないと判断した場合は、逆意見書としてまとめ、求償を行った損保に対向する場合が本事例で、これも専門家たる損害調査員の守備範囲だと認識している。本案件は、求償書類を受け取った女性担当者から、こんなのが来ましたがと相談を受け、拙人がその内容を精査して、某損保の担当者には悪いが、こういう浅い理論付けなら、打ち負かせると確信しつつ逆意見書を提出したという案件だ。爾来、再度の求償がなされることはなかった。
※保険会社の求償(もしくは代位求償)とは
第三者の加害行為などによる事故で保険会社が保険金を支払った場合、被保険者の第三者に対する損害賠償請求権を保険会社が代位取得し、被保険者に代わって第三者に請求し、保険金を返還してもらうことをいう。
ここで、拙人の作成した意見書「車検整備と火災事故の因果関係について」については別添するが、ここに至るまでの拙人の思考は以下の様な事柄を整理したメモが残っている。
1.事故の概要
該当車は使用者により車両保険が****損害保険に付保されており、同社の立会調査が実施されている。そして、車検整備完了納車後、僅かの期間で出火したとして、その原因が車検整備の瑕疵にあるとする意見が、同社より提示されているものである。
****損保社の意見
・車検整備完了から火災発生まで、僅か31kmしか走行していないこと。
・車検整備完了(5月22日)から火災発生(7月18日)まで、2ヶ月弱の期間で発生していること。
・火災の原因はエンジンルーム内のフューエルラインからの燃料漏れ断定されるとしている。
・記録簿によると「燃料装置」の燃料漏れを点検済みの記載となっているが、十分な点検が行われていないとしている。
・以上の内容から、整備施工者として一定の責任が生じることをとするもの。
2.生産物賠償保険としての対応
本件事故は、納車後の事故であり、生産物賠償保険の範囲となる。そして、本件事故原因が****損保の説明の通り、フューエルラインからの燃料漏れだと仮定すれば、該当部位は黙視点検のみであり、何らか整備作業や加工に類する施工なされていない。従って、生産物賠償保険の対象事故とはならない。
3.本件事故に内在する問題点
・事故原因が果たして****損保社のいう通りのものか?
・仮にフューエルホースの亀裂等による燃料漏れが生じたことを本件火災の原因としても、車検整備および同完成検査時点で、異常が生じていなかったものであり、そこから距離数は31kmと僅かにしても、数ヶ月を経た車両の責任を問えるのか?
・該当車のような輸入車の場合、燃料ホースの使用部位も多く、その一部はエンジン等の一部分解しない限り黙視できない部位に装着されている等、そのすべてについて確実な点検を行うことは実態として困難なことが容易に伺われる。このような中、整備施工者の責任を問える問題だろうか?
・現在、車齢の高齢化が進んでいるが、そのような背景の中、本件事故のような問題は、今後増加する懸念が持たれるのである。
#損害調査員の守備範囲 #損害調査員は事故の専門家たれ
この事案は、拙人が損害保険会社所属時代のこととなるが、ある車両火災が生じ、それがある工場で車検整備を行い約2ヶ月後、その間の走行距離数が僅か31kmであったという理由を主因に据えた鑑定書だったか意見書が添えられて、いわゆる求償が該当車検実施工場になされたという案件だった。該当の車検整備実施工場では、この様な整備作業の瑕疵による損害賠償に備え、生産物賠償保険に加入しており、拙人の所属する保険会社に相談がもたらされたという案件である。
今日(5/1)昼過ぎに元損害調査員として現象をある意味嘆く「損保調査員の守備範囲を思う」にも関連することだが、この様な求償を行う意見書を作成し保険会社としての正当な求償に協力することも損害調査員(アジャスター)の守備範囲であろう。その点では、この某社の求償に関わる意見書は損害調査員名で作成されており、正に守備範囲をまっとうしているのだ。
一方、受ける拙人もその求償が自動車工学とか整備実務の実態などから妥当なものかを専門家として判断し、妥当でないと判断した場合は、逆意見書としてまとめ、求償を行った損保に対向する場合が本事例で、これも専門家たる損害調査員の守備範囲だと認識している。本案件は、求償書類を受け取った女性担当者から、こんなのが来ましたがと相談を受け、拙人がその内容を精査して、某損保の担当者には悪いが、こういう浅い理論付けなら、打ち負かせると確信しつつ逆意見書を提出したという案件だ。爾来、再度の求償がなされることはなかった。
※保険会社の求償(もしくは代位求償)とは
第三者の加害行為などによる事故で保険会社が保険金を支払った場合、被保険者の第三者に対する損害賠償請求権を保険会社が代位取得し、被保険者に代わって第三者に請求し、保険金を返還してもらうことをいう。
ここで、拙人の作成した意見書「車検整備と火災事故の因果関係について」については別添するが、ここに至るまでの拙人の思考は以下の様な事柄を整理したメモが残っている。
1.事故の概要
該当車は使用者により車両保険が****損害保険に付保されており、同社の立会調査が実施されている。そして、車検整備完了納車後、僅かの期間で出火したとして、その原因が車検整備の瑕疵にあるとする意見が、同社より提示されているものである。
****損保社の意見
・車検整備完了から火災発生まで、僅か31kmしか走行していないこと。
・車検整備完了(5月22日)から火災発生(7月18日)まで、2ヶ月弱の期間で発生していること。
・火災の原因はエンジンルーム内のフューエルラインからの燃料漏れ断定されるとしている。
・記録簿によると「燃料装置」の燃料漏れを点検済みの記載となっているが、十分な点検が行われていないとしている。
・以上の内容から、整備施工者として一定の責任が生じることをとするもの。
2.生産物賠償保険としての対応
本件事故は、納車後の事故であり、生産物賠償保険の範囲となる。そして、本件事故原因が****損保の説明の通り、フューエルラインからの燃料漏れだと仮定すれば、該当部位は黙視点検のみであり、何らか整備作業や加工に類する施工なされていない。従って、生産物賠償保険の対象事故とはならない。
3.本件事故に内在する問題点
・事故原因が果たして****損保社のいう通りのものか?
・仮にフューエルホースの亀裂等による燃料漏れが生じたことを本件火災の原因としても、車検整備および同完成検査時点で、異常が生じていなかったものであり、そこから距離数は31kmと僅かにしても、数ヶ月を経た車両の責任を問えるのか?
・該当車のような輸入車の場合、燃料ホースの使用部位も多く、その一部はエンジン等の一部分解しない限り黙視できない部位に装着されている等、そのすべてについて確実な点検を行うことは実態として困難なことが容易に伺われる。このような中、整備施工者の責任を問える問題だろうか?
・現在、車齢の高齢化が進んでいるが、そのような背景の中、本件事故のような問題は、今後増加する懸念が持たれるのである。
#損害調査員の守備範囲 #損害調査員は事故の専門家たれ