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交渉事案の思い出(その3)・ベンツ修理費2

2021-11-07 | 賠償交渉事例の記録
交渉事案の思い出(その3)・ベンツ修理費2
初稿2002/11/3
 修理費の攻防を巡る交渉事例として、またまた紹介するものだ。今回もベンツだが、Eクラス(210型だが当時は現行販売車)となる。

 先回もお伝えしたところだが、正しい交渉とは、損傷車や修理環境等をよく見て、修理者の意見を良く聞き、その上で自らの意見を表明することであると思っている。

 なお、今回の事案は、自損保の損害調査ではなく、関係他社からの損害調査依頼(協定まで)という事案で、最近は旧来損保が自社資本で通販系の損保を作ったり、異業種からの損保参入とか、いわゆる共済と云われるべき損保相当の事業を行っている組織体など、損害調査員(アジャスター相当)が居ないとか、居ても要員が少なく十分な教育体制が取れないなどの理由から、高額案件、疑義案件、協定困難工場などを中心に依頼を受ける場合があるのです。このことは現在でも引き続き行われていると思える。

1.交渉経緯
①立会調査の元請け保険会社からの受託(10/18)
 受託時点で、相手車の損傷部位には別事故分の損傷の懸念ありとのコメントを受けた。

②立会調査を実施(10/18)
 担当者により立会調査が実施された。右Frフェンダーおよび前後バンパーの損傷は、同一事故でない可能性が大きいとの報告がなされた。

③別事故の範囲について打合せ(10/21)
 元請け工場、外注工場、元請け損保担当者(経由で相手契約者)と繰り返し連絡を取り、本件事故の損傷部位として、前後バンパーおよび右Frフェンダーは除外とせざるを得ないことを打ち合わせた。なお、同打合せの中で、Frフェンダーについては、同一事故による損傷も一部伺えることより塗装費用は負担とすることを了解とした。

④入庫工場より見積提示(10/24)
 別事故分の損害は除かれた見積として提出されたのであるが、取替部品関係は大方問題はないものの、一見して工賃関係に相当の問題点が内在しているものと判断された。

⑤再立会と見積内容の打合せ(10/30)
 再立会を実施した。交渉に入る前に、作業内容の確認および取替部品について一通り確認し説明を受けた。そして、提示見積の各項目について交渉を以下の通り進めたのであった。以下は交渉のポイントを記す。(交渉時間2h程)

(1)前後バンパーの脱着について、除外を申し入れるが、塗装に必要との説明があり、作業実態として実施の事実も確認されること等より容認とした。

(2)ヘッドランプの工数(2.0)について片側であり減額を申し入れるが、OPのウォッシャーが装着されていることより容認とした。

(3)F r フェンダーの部品費は除外してあり問題はないが、工賃として取替(3.9)ではなく脱着(2.4)として計上することを申し入れし了解を得た。

(4)右Frドア取替の付帯作業(付属品)として、ミラー(0.5)およびアウトサイドハンドル(1.0)の別計上があり、重複計上として除外を申し入れた。ミラーはAssyではなく、カバーのみの分割部品で組み替えの作業の実態があることより、ミラー部分のみ容認として了解を得た。

(5)右Frドアロック&ヒンジ修正(0.6)としての計上について、不要として除外を申し入れ了解を得た。

(6)右Rrドアヒンジ修正(0.3)として計上について、不要として除外を申し入れ了解を得た。

(7)右クォーター付属品脱着(0.8)としての計上について、過剰なものとして除外を求めるが、減額して脱着(0.5)として了解を得た。

(8)右フードレッジ修正(2.0)として計上について、フロントフェンダーの大部分の損傷は別事故であり、フードレッジの損傷があたっとしても別事故であり除外を申し入れ了解を得た。

(9)右Frピラー修正(1.2)について、不要として除外を申し入れ了解を得た。

(10)Rrガラスモール脱着(2.4)について、先程の再立会において一部脱着の作業であることの確認に基づいて減額を申し入れ、脱着(1.8)として了解を得た。

(11)フロアマット脱着(0.6)およびインナートリム脱着(1.0)について、過剰なものととして減額を申し入れ、両方合わせて脱着(0.8)として了解を得た。

(12)配線・配管および付属品脱着(2.0)について、過剰なものとして減額を申し入れ脱着(1.0 )として了解を得た。

(13)防錆処理(1.0)について、作業内容をたずねた上、通常のエアゾールタイプでの防錆剤塗布であり過剰なものとして減額を申し入れ処理(0.5)として了解を得た。

(14)アンダーコート(材料2,500 +工数0.6)について、本件該当部位なしとして除外を申し入れ了解を得た。

(15)シーリング処理(1.2)について、新品ドアパネルは施工済みであること、そしてヤナセ塗装工数には外板等含まれていると解されることから、本件では該当部位はごく少ないとして減額を申し入れ、処理(0.6)として了解を得た。

(16)塗装費については、当初より相当な差額が伺えることから、本件交渉の山場となることを意識して望んだ。相手方主張の根拠を問い掛けた返答としては、2液プラサフ処理を実際に行っていること、そして上塗りは水性塗料を使用しているからという程度のものであった。しかし、相手方の塗装関係の計上合計は458千円余(53.9 )ともなり、ここで間を取った金額協定を行うことは不利と判断。帰社して社内で十分検討後に返事をするとして協定保留とした。

⑥塗装費の打合せ・最終協定(10/31)
 再立会の翌日、交渉に入る前に別添の内容をFAXにて送信した。(当方主張は塗装関係費計として313千円)そして、折衝の結果として協定結果は329,800円(38.8)となった。

3.結果
 本件の交渉結果としては決して満足は出来ないが、以下の様な減額効果となった。
 ①別事故除外(右Fr フェンダー部品代)   41,200円
 ②  〃  ( 前後バンパー塗装費用)  100,000円
 ④提示見積減額              222,700円
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  合 計                363,900円

4.補足・雑感
 工場は、ISO9002取得しているという素晴らしい作業環境と設備を有した立派な企業である。

 そして、提示を受けた見積は、まったく隙がないばかりか、過剰と判断される多数の項目を内在した大変自己主張の強いものであった。(別添)

 この様な提示見積に接し、個別に文句は言えないとして、ええいグロスで負けてよ方式での交渉とすることは相手の思う壺というべきだろう。この様な交渉では、決して満足できる様な戦果は得られないことを、幾多の過去の経験で学んで来たつもりである。ここでは、本件交渉が決して満足は出来ないものの、まあまあのレベルで着地した要因等として以下に記してみる。

①再立会を実施したこと
 再立会のタイミングとして決して最良ではなかったが、実施の価値は十分にあったと考えている。十分な時間を掛け見積と作業内容の相違を確認、そして交換部品等も確認した。そして、他の車の作業も含め該当工場の仕事ぶり等を中心に見学しつつ工場担当者への質問、といった感じで30分以上の時間を掛けた。これは、このような行動が対峙する相手方への牽制や自己の勉強にもなるのだということを十分意識してのものである。

②相手との交渉でポイントとなる項目を文書中心で行ったこと
 先にも記したが、本件では塗装関係費について極めて乖離が大きく、簡単に間を取るような決め方では決して満足できる結果とはならないと考えた。従って、再立会当日に協定を促す工場に対し、考えている数字と大きくかけ離れており社内で十分再検討するとして協定保留とした。そして、翌日相手方には社内検討した結果であるとして文書にまとめFAX提示したのであった。





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