欧州車のヘッドライニング剥がれと内装ベタ付き
国産車しか振れない者には案外知られていないが、欧州車の多くで共通する不具合としてヘッドライニング剥がれと内装(コンソール)などの塗装のベタ付きがある。この理由と補修について述べてみたい。
➀ヘッドライニング剥がれ
元来ヘッドライニングは吊り天式と成型天井式の2種類があり、昔は吊り天式が大勢を占めていたのだ。この吊り天式とは、一枚の大きなビニールクロスがあり、それに30cm感覚程度で、ルーフ棒という天井の梁となる外径4、5mmの鋼棒を通す袋状部が縫い込まれもしくは接着されていて、これに鋼棒が貫通する構造になっていた。ヘッドライニング装着時は、この鋼棒の左右エンドを、ボデーのルーフサイドインナーの該当穴に突き刺して天井を吊り下げることで、天井を構成していたのだ。なお、ビニールクロスの淵は、外側にシワができない程度に引っ張り、余分な部位は切り取り、ルーフサイド下端の外周部に接着して処理していたのだ。さらにルーフサイドの下端には、最終的にボデーウェルトという溶接端部を隠すトリミング部品が嵌め込まれてフィニッシュされるので、これで押さえ込むという処置がなされる方式だった。
ここで、先に大きなビニールクロスがと記したが、高級車の場合はファブリック(織布)や薄く柔らかいレザー(皮革)が使用される場合もあった。主にビニールクロスの場合だが、シワが生じる場合には、局部的にドライヤーの温風でシワを伸ばしたりという手間があったりしたものだ。そもそも自動車工業が、車両メーカーでシャシ時計盤程度まで作られ、その後のリヤボデーを、家内工業的な街のボデー工場で木枠でボデー骨格を組み立て、それに鋼板を張り付ける様な時代には、内装屋というジャンルの仕事があったのだが、シートの製作だとかドア内張の製作と共に、ヘッドライニングの製作も、業務の一つであったのだ。今では自動車内装屋として看板を上げている業社は少ないが、シート屋だとか云われる商店の軒先シートやトラック荷台のシートカバー、はたまた新車シートが布製の商用車だったりすると傷まないように透明厚ビニールで包むシートカバーなどを採寸して工業用ミシンで接合して作ってくれる業種が幾らか残っていることを、知る方はいるだろう。
さて、吊り天井式の話しが長くなったが、クルマの変革の中で、何時からか吊り天井方式は絶滅し、ほとんど成型天井方式になった。これの先駆けはおそらくサンルーフの登場にあったと思える。それと比較的屋根の低いクーペスポーティスタイル車では、室内の有効ヘッドクリアランスを保つ目的で、成型天井を採用する車種が増えて来た。
この成型天井とは、ルーフ内側の形におそらく金型上下で繊維状の高圧縮ダンボールを接着剤で固めて心として成型したもので、その下面となる室内側に表面が布でその内側に3、4mm厚のスポンジ層を接着したモノだ。
これの装着は、新車製造の前後ウインドガラスなどは付いていない状態ではきわまて簡単で、成型天井の真ん中部分は特に固定はなされれず、前部はルームミラーとか左右サンバイザーなどで固定され、後部はボデーウェルトで固定、左右サイドはアシストグリップで共締めされ、端部はボデーウェルトで固定される。この成型天井が大きく普及したのは、この新車艤装でのタクトタイム(作業員1名が担当する単純作業の1工程)が恐ろしく短時間でできることにあるのだろう。
さて、表題のルーフの剥がれだが、間違いなく成型天井の問題であり、剥がれと聞くと素人は接着剤が剥がれていると想像するかもしれないが、実は原因は異なっていてスポンジ層が分解しておよそ結合力がなくなることで剥がれてくるのだ。局部的なものなら接着剤で補修できる場合もあるかもしれないが、多くの場合剥がれ始めると、全面的に剥がれ天井のファブリック全体が垂れ下がってしまう。この場合は、一度ヘッドライニング全体を車外に抜き出して、剥がれたスポンジ層をすべて除去して、新しいスポンジ付きの布を張り替える必用がある。
この修理は、先のシート屋さんがあればそこに頼むこともできるし、以下の心材メーカーで素材を入手して自分で行うこともできる。
浅草ゆうらぶ(ルーフライナー素材)
http://www.youlove.co.jp/roof-lining-for-vehicle.html
なお、ルーフライニングを車外に出し入れする場合に、ハッチバック車だと、まず全シートを倒しておけば、引き出すこtができるし、多くのクルマで後部ドアから引き出すことができると思うが、中には後部ガラスを外さないと不可能なクルマがあるかもしれない。
【関連過去記事】
BMWミニ R50 ルーフライニング取替に挑戦
2016-06-08 | BMWミニ
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/b3582e470efbe3d6ccd4a4558f87b9b8
②内装のベタ付き
これは欧州車の内容に使用されている主に1液型塗料でのつや消しマット塗料の変質(先のスポンジの分解と類似)にあると見ている。この場合、完璧に直すには、旧塗膜を完全に剥がして塗り直すしかないのだが、ある程度簡易に直す方法を記して見たい。
まず、該当部品を外し車外に出し、塗料が付着したらまずい小物スイッチとかブーツ類を外す。極めて軽くサンディングする。元の塗料を落とさない様に剥がれが酷うぃ部分の出っ張りを取る程度に行う。なお、キズが目立つ部位で同色のカラースプレイがあれば、マトモに吹かないで離し気味でボカス様に塗りキズを目立たなくする。
この後、十分乾燥させ、全体の誇りをエアブローして、スプレイのつや消しクリアーを軽く全体にコートする。この場合、厚塗りしないで軽くコートする。これで、乾燥させて元通り取り付けることで、気になるベタ付きはなくなる。
#欧州車メンテナンス #DYI修理
国産車しか振れない者には案外知られていないが、欧州車の多くで共通する不具合としてヘッドライニング剥がれと内装(コンソール)などの塗装のベタ付きがある。この理由と補修について述べてみたい。
➀ヘッドライニング剥がれ
元来ヘッドライニングは吊り天式と成型天井式の2種類があり、昔は吊り天式が大勢を占めていたのだ。この吊り天式とは、一枚の大きなビニールクロスがあり、それに30cm感覚程度で、ルーフ棒という天井の梁となる外径4、5mmの鋼棒を通す袋状部が縫い込まれもしくは接着されていて、これに鋼棒が貫通する構造になっていた。ヘッドライニング装着時は、この鋼棒の左右エンドを、ボデーのルーフサイドインナーの該当穴に突き刺して天井を吊り下げることで、天井を構成していたのだ。なお、ビニールクロスの淵は、外側にシワができない程度に引っ張り、余分な部位は切り取り、ルーフサイド下端の外周部に接着して処理していたのだ。さらにルーフサイドの下端には、最終的にボデーウェルトという溶接端部を隠すトリミング部品が嵌め込まれてフィニッシュされるので、これで押さえ込むという処置がなされる方式だった。
ここで、先に大きなビニールクロスがと記したが、高級車の場合はファブリック(織布)や薄く柔らかいレザー(皮革)が使用される場合もあった。主にビニールクロスの場合だが、シワが生じる場合には、局部的にドライヤーの温風でシワを伸ばしたりという手間があったりしたものだ。そもそも自動車工業が、車両メーカーでシャシ時計盤程度まで作られ、その後のリヤボデーを、家内工業的な街のボデー工場で木枠でボデー骨格を組み立て、それに鋼板を張り付ける様な時代には、内装屋というジャンルの仕事があったのだが、シートの製作だとかドア内張の製作と共に、ヘッドライニングの製作も、業務の一つであったのだ。今では自動車内装屋として看板を上げている業社は少ないが、シート屋だとか云われる商店の軒先シートやトラック荷台のシートカバー、はたまた新車シートが布製の商用車だったりすると傷まないように透明厚ビニールで包むシートカバーなどを採寸して工業用ミシンで接合して作ってくれる業種が幾らか残っていることを、知る方はいるだろう。
さて、吊り天井式の話しが長くなったが、クルマの変革の中で、何時からか吊り天井方式は絶滅し、ほとんど成型天井方式になった。これの先駆けはおそらくサンルーフの登場にあったと思える。それと比較的屋根の低いクーペスポーティスタイル車では、室内の有効ヘッドクリアランスを保つ目的で、成型天井を採用する車種が増えて来た。
この成型天井とは、ルーフ内側の形におそらく金型上下で繊維状の高圧縮ダンボールを接着剤で固めて心として成型したもので、その下面となる室内側に表面が布でその内側に3、4mm厚のスポンジ層を接着したモノだ。
これの装着は、新車製造の前後ウインドガラスなどは付いていない状態ではきわまて簡単で、成型天井の真ん中部分は特に固定はなされれず、前部はルームミラーとか左右サンバイザーなどで固定され、後部はボデーウェルトで固定、左右サイドはアシストグリップで共締めされ、端部はボデーウェルトで固定される。この成型天井が大きく普及したのは、この新車艤装でのタクトタイム(作業員1名が担当する単純作業の1工程)が恐ろしく短時間でできることにあるのだろう。
さて、表題のルーフの剥がれだが、間違いなく成型天井の問題であり、剥がれと聞くと素人は接着剤が剥がれていると想像するかもしれないが、実は原因は異なっていてスポンジ層が分解しておよそ結合力がなくなることで剥がれてくるのだ。局部的なものなら接着剤で補修できる場合もあるかもしれないが、多くの場合剥がれ始めると、全面的に剥がれ天井のファブリック全体が垂れ下がってしまう。この場合は、一度ヘッドライニング全体を車外に抜き出して、剥がれたスポンジ層をすべて除去して、新しいスポンジ付きの布を張り替える必用がある。
この修理は、先のシート屋さんがあればそこに頼むこともできるし、以下の心材メーカーで素材を入手して自分で行うこともできる。
浅草ゆうらぶ(ルーフライナー素材)
http://www.youlove.co.jp/roof-lining-for-vehicle.html
なお、ルーフライニングを車外に出し入れする場合に、ハッチバック車だと、まず全シートを倒しておけば、引き出すこtができるし、多くのクルマで後部ドアから引き出すことができると思うが、中には後部ガラスを外さないと不可能なクルマがあるかもしれない。
【関連過去記事】
BMWミニ R50 ルーフライニング取替に挑戦
2016-06-08 | BMWミニ
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/b3582e470efbe3d6ccd4a4558f87b9b8
②内装のベタ付き
これは欧州車の内容に使用されている主に1液型塗料でのつや消しマット塗料の変質(先のスポンジの分解と類似)にあると見ている。この場合、完璧に直すには、旧塗膜を完全に剥がして塗り直すしかないのだが、ある程度簡易に直す方法を記して見たい。
まず、該当部品を外し車外に出し、塗料が付着したらまずい小物スイッチとかブーツ類を外す。極めて軽くサンディングする。元の塗料を落とさない様に剥がれが酷うぃ部分の出っ張りを取る程度に行う。なお、キズが目立つ部位で同色のカラースプレイがあれば、マトモに吹かないで離し気味でボカス様に塗りキズを目立たなくする。
この後、十分乾燥させ、全体の誇りをエアブローして、スプレイのつや消しクリアーを軽く全体にコートする。この場合、厚塗りしないで軽くコートする。これで、乾燥させて元通り取り付けることで、気になるベタ付きはなくなる。
#欧州車メンテナンス #DYI修理