私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

大型車のブレーキ

2011-03-27 | 技術系情報
 クルマ用ブレーキのことは過去何度も記して来ましたが、今回は大型車(貨物車やバスなど)のブレーキについて、私見ですが記してみたいと思います。
 クルマで山間地に出掛け、長く続く坂道を下って行くと、道路左側に接して急な上り傾斜を持つ砂地で、しかも路面をわざと波打つように施工された施設である緊急避難路というのを見掛けることがあります。これは、下り坂道での連続制動により、各輪のブレーキが加熱し過ぎることにより摩擦係数が低下して制動力が著しく失われるフェード現象に備えるものです。
 ところで、現在の乗用車では、制動力の多くを受け持つ前輪用ブレーキはディスクブレーキが標準装備です。従って、余程の過酷な連続使用でもしない限りフェード現象から著しく制動力が失われ、事故にまで至ることは稀なことでしょう。一方、中・大型貨物車や大型バス、路上走行可能な建設用車両(クレーン車など)では、ディスクブレーキの採用も増えては来ましたが、未だドラム式ブレーキの採用車が多くを占めています。
 ご存じの通り、ブレーキ装置というのは、車両の持つ運動エネルギー(m・v)を熱エネルギーに変換して吸収し減速するものです。そこで、吸収した熱エネルギーを如何に素早く放熱するかが重要となって来る訳です。従って、ブレーキ摩擦体が外部に露出しているディスクブレーキより、ドラム式ブレーキは放熱の点で不利なことが判ります。しかも、大型車の積車状態では乗用車の数十倍も車重が大きく運動エネルギーが大きいですから、ブレーキにとっては非常に厳しい条件に曝されフェードを生じ易いといえます。
 実際過去には、山梨県だったと思いますが、下り坂で大型トレーラー車が暴走状態に陥り、多数の乗用車などに衝突押しのけながら数キロ暴走し何らかの構築物に衝突してやっと停止したという事故があったことを記憶しています。また、5年前後前だったと思いますが、熱海市近くの下り坂で、大型バスがフェード現象から路肩の立木に衝突し、乗客が死亡した事故もありました。
 なお、ブレーキの耐フェードの能力としてもっとも厳しいのは、最近の大型トラックでやや増えつつあると感じられる低床4軸車ではないでしょうか。低床4軸車では小径タイヤの使用により、荷台高さを下げ、荷室容積の拡大とか荷積み性を向上させたものです。しかし、小径タイヤは小径ホイールとなり、ドラムブレーキにしてもディスクブレーキにして、その径の大きさに制約を受けてしまいます。ブレーキ力としてはトルクレンチと同じで腕の長さ(半径)が長い程小さい力で効く訳ですから。なお、この様な小径ブレーキでも十分なブレーキ容量確保のためには、ドラムの奥行きやディスクの厚さを増すと共に、各摩擦板(シューやパット)の押し付け力を増していることでしょうが、耐フェード性としてのポテンシャルが低下するのは否めないことと想像されます。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。