私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

ホウ素(ボロン)のこと

2011-03-27 | 技術系情報
 今次、原発大事故において、数日前から注入水にホウ素を混入されていることが報じられています。このホウ素の混入は、実際には報道前より行われていたと思われます。この、原発事故とホウ素のことは、チェルノブイリ事故の際、大きく開放されてしまった原子炉上部から、危険を冒してホウ素材を散布するヘリコプターでの作業映像を見た記憶がありました。ホウ素は、核分裂の際に出される中性子の吸収作用がある物質だそうで、核燃料体同士の間に挿入される制御棒にも使用されるそうです。今回の大事故でも、万一の再臨界(核分裂反応)を防止するために、冷却水に混入されるのでしょう。
 ところで、このホウ素ですが英名はボロン(Boron)となりますが、ボロン鋼での名称の方が、私にとっては馴染みがある様に感じられます。一般的な炭素鋼(鉄と炭素の合金で普通鋼と呼ばれる)は、焼き入れ、焼き戻し、焼き鈍しなどの熱処理を行うことで、機械的特性を変化させることができるのはご存じの通りです。この炭素鋼にボロンを混入することによって、焼き入れ性を著しく向上させたものを、ボロン鋼と呼ぶそうです。これは、私の想像も含めてのことですが、ボロン鋼は軍事用の耐弾(防弾)厚板鋼板として、例えば戦車の装甲や、軍艦の舷側防御用に積極的に使われてきた様です。
 なお、鋼に炭素だけでなく、ニッケルやクロムなどを異種金属を加えたものを特殊鋼と呼びますが、さらにボロンの追加することにより、ニッケル、クロムなどのコスト高素材の使用量を抑えるということもある様です。また、クルマの世界でも近年の衝突安全性の要求から、クラッシュスペースの少ない車両側面部のセンターピラー部などに関係する付属部品には、引っ張り強度が1000MPaを超える超高張力鋼板が使用される様です。これらは別名ホット・プレス材の名の通り、常温でプレス加工は不可能で、加熱された状態でプレス加工するというものですが、もしかするとボロンの併用もなされているのかもしれません。



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