【書評】四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日(石塚 健司著)
猛暑が続くが中、引き籠もり気味で読書にいそしむ毎日が続いている。このところ読み続けている本は検察関係の本だ。先回の書評でも記した「捜査官」は元検事の自分史たる検事肯定論だが、その前の「私は負けない」は完全に検察否定話しだ。こういうジャンルの本を読んで来て、どちらかと云えば検察を非難する本が圧倒的に多いのは事実だろう。
今回記す「四〇〇万企業が哭(な)いている」も、東京地検特捜部の完全否定論というべき批判内容を書き記した内容だ。なお、著者は現役産経新聞の記者だ。
そもそも検察の特に特捜部が存在する意義は何処にあるのだろうかという疑問を今も抱き続けている。記憶に残る過去の政官民が絡む汚職など経済事件として大きく報道された事件の多くが、特捜部が動いた事件なのだが、この本で描かれてる被告は、中小企業の経営者と経営コンサルタントという、正直って犯罪の実態はさほど大きな事件ではない。
事件の概要は、事件は2011年のことの様だ。まず、切っ掛けとなったのは大手銀行の若手がたちまち融資成績としてトップの業績を上げるのだが、そこには融資先中小企業としてほとんど経営実態のない様な企業までも含んで、企業決算書を粉飾する指南をするなどして勤める銀行の融資審査を通し、融資が成功すると、多額のリベート(融資額を折半とか)で大金をせしめていたのが発覚するのだ。これは、その30代の前半の若手銀行マンが2つの顔を持つ男で、1つは多数の融資審査を通し業績をを上げる優秀な銀行マン、2つめは自分が代表をなるコンサル法人を立ち上げ、銀行での融資先からの還流金で豪華で派手な散財を続けたことで、東京国税局査察部(通称マルサ)により摘発され、巨額の脱税と共に不正融資と還流という犯罪が察知されたことに始まる。国税局では脱税だけなら、その時点では検察に告訴までしないが、別の犯罪も絡むとなると、地検特捜部へ報告し共同で事件解明に当たる。
ここで、この浅はかな虚偽融資と脱税という犯罪は直ぐさま解決したが、ここで特捜部が目を付けたのが、コンサルタントを運営し中小企業に虚偽の決算書を作る指南をし、通常なら望めない多額の融資を得て、そこからリベートを取るその他のコンサルタント業がいるはずだというストーリーが生まれたことだ。こういう思考の中から、この本で主人公となるコンサル業Z社・佐藤真言(実名)、衣料品販売業A社B社長達がその疑いで目を付けられる切っ掛けとなったのだ。
ここで、特捜部は、佐藤およびBを個別に呼び出しさかんに事情聴取を取り、途上で逮捕拘留しつつ、互いの連絡を取らせず、互いに相手の罪をなすりつけ合う様に仕向けるが、そもそも佐藤のコンサル料が20万とかぜんぜん少ないし、A社Bへの融資総額も数千万程のものだった。しかも、佐藤もBも粉飾決算自体は認めており、ただし実在の企業として、返済の目処もあった故での、そもそも赤字経営だとか銀行の規定に沿わない場合に融資が受けられない実情を訴えるのだが、検察は粉飾は犯罪だの一点張りなのだ。
ここで、著者は日本の企業数はおよそ420万社あるが、この99.7%が中小企業であり、雇用の7割を支えているのが実態なのだと説く。この中小企業の内、融資を受けるには必ずしも悪意のあるとはいえない何らかの粉飾決算をしている企業は7割程度はあるのではあるのではないかと云う。これは、国税庁が集計している法人企業の実態調査で、黒字と申告している企業は27%、赤字と申告している企業は73%にあることから推定できるとしている。つまり、税の申告は実態決算に近時するが、赤字では銀行融資が受けられないので、そこに粉飾決算の入りこむ余地があり、コンサルどころか銀行自体が案に粉飾を促している場合も多いという。確かに極端な粉飾とか返すつもりがない、もしくは返せる余地のない融資要請などは明かな犯罪だろうが、赤字だとか決算内容次第で、銀行は融資しないし、貸し剥がしを強引に行うが、銀行自体が粉飾決算を促している側面もあるのだと佐藤は検事に訴えるが、検事は銀行を責め立てるつもりはまったくない。あくまで、佐藤の主導で粉飾が行われ、過大なリベートを取っているいうストーリーに沿う様に供述調書をまとめ上げられ、佐藤およびBは起訴され、それぞれ実刑(2年なにがし)になる。控訴も棄却。
この起訴から控訴までの間に、高名なヤメ検弁護士でMという男のことが出て来て、この本では白馬の騎士の如く検察を抑えたかの如く記されているのだが、Mが執行猶予を取る前提で認めるべきは認めよと指南したのだが、判決は実刑で終わり、その後Mは代理人を辞任してしまう。
この元検察大物ヤメ検Mのことは、以下の郷原氏のブログで、とんでもないクワセ者だという評価が記されている。
郷原信郎が斬る 佐藤真言氏の著書『粉飾』で明らかになった「特捜OB大物弁護士」の正体
投稿日: 2013年4月8日 作成者: nobuogohara
https://nobuogohara.com/2013/04/08/%E4%BD%90%E8%97%A4%E7%9C%9F%E8%A8%80%E6%B0%8F%E3%81%AE%E8%91%97%E6%9B%B8%E3%80%8E%E7%B2%89%E9%A3%BE%E3%80%8F%E3%81%A7%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%8C%E7%89%B9/
#【書評】四〇〇万企業が哭いている #中小企業の7割は何らかの粉飾決算の実態にある #正義の味方?ヤメ検M
猛暑が続くが中、引き籠もり気味で読書にいそしむ毎日が続いている。このところ読み続けている本は検察関係の本だ。先回の書評でも記した「捜査官」は元検事の自分史たる検事肯定論だが、その前の「私は負けない」は完全に検察否定話しだ。こういうジャンルの本を読んで来て、どちらかと云えば検察を非難する本が圧倒的に多いのは事実だろう。
今回記す「四〇〇万企業が哭(な)いている」も、東京地検特捜部の完全否定論というべき批判内容を書き記した内容だ。なお、著者は現役産経新聞の記者だ。
そもそも検察の特に特捜部が存在する意義は何処にあるのだろうかという疑問を今も抱き続けている。記憶に残る過去の政官民が絡む汚職など経済事件として大きく報道された事件の多くが、特捜部が動いた事件なのだが、この本で描かれてる被告は、中小企業の経営者と経営コンサルタントという、正直って犯罪の実態はさほど大きな事件ではない。
事件の概要は、事件は2011年のことの様だ。まず、切っ掛けとなったのは大手銀行の若手がたちまち融資成績としてトップの業績を上げるのだが、そこには融資先中小企業としてほとんど経営実態のない様な企業までも含んで、企業決算書を粉飾する指南をするなどして勤める銀行の融資審査を通し、融資が成功すると、多額のリベート(融資額を折半とか)で大金をせしめていたのが発覚するのだ。これは、その30代の前半の若手銀行マンが2つの顔を持つ男で、1つは多数の融資審査を通し業績をを上げる優秀な銀行マン、2つめは自分が代表をなるコンサル法人を立ち上げ、銀行での融資先からの還流金で豪華で派手な散財を続けたことで、東京国税局査察部(通称マルサ)により摘発され、巨額の脱税と共に不正融資と還流という犯罪が察知されたことに始まる。国税局では脱税だけなら、その時点では検察に告訴までしないが、別の犯罪も絡むとなると、地検特捜部へ報告し共同で事件解明に当たる。
ここで、この浅はかな虚偽融資と脱税という犯罪は直ぐさま解決したが、ここで特捜部が目を付けたのが、コンサルタントを運営し中小企業に虚偽の決算書を作る指南をし、通常なら望めない多額の融資を得て、そこからリベートを取るその他のコンサルタント業がいるはずだというストーリーが生まれたことだ。こういう思考の中から、この本で主人公となるコンサル業Z社・佐藤真言(実名)、衣料品販売業A社B社長達がその疑いで目を付けられる切っ掛けとなったのだ。
ここで、特捜部は、佐藤およびBを個別に呼び出しさかんに事情聴取を取り、途上で逮捕拘留しつつ、互いの連絡を取らせず、互いに相手の罪をなすりつけ合う様に仕向けるが、そもそも佐藤のコンサル料が20万とかぜんぜん少ないし、A社Bへの融資総額も数千万程のものだった。しかも、佐藤もBも粉飾決算自体は認めており、ただし実在の企業として、返済の目処もあった故での、そもそも赤字経営だとか銀行の規定に沿わない場合に融資が受けられない実情を訴えるのだが、検察は粉飾は犯罪だの一点張りなのだ。
ここで、著者は日本の企業数はおよそ420万社あるが、この99.7%が中小企業であり、雇用の7割を支えているのが実態なのだと説く。この中小企業の内、融資を受けるには必ずしも悪意のあるとはいえない何らかの粉飾決算をしている企業は7割程度はあるのではあるのではないかと云う。これは、国税庁が集計している法人企業の実態調査で、黒字と申告している企業は27%、赤字と申告している企業は73%にあることから推定できるとしている。つまり、税の申告は実態決算に近時するが、赤字では銀行融資が受けられないので、そこに粉飾決算の入りこむ余地があり、コンサルどころか銀行自体が案に粉飾を促している場合も多いという。確かに極端な粉飾とか返すつもりがない、もしくは返せる余地のない融資要請などは明かな犯罪だろうが、赤字だとか決算内容次第で、銀行は融資しないし、貸し剥がしを強引に行うが、銀行自体が粉飾決算を促している側面もあるのだと佐藤は検事に訴えるが、検事は銀行を責め立てるつもりはまったくない。あくまで、佐藤の主導で粉飾が行われ、過大なリベートを取っているいうストーリーに沿う様に供述調書をまとめ上げられ、佐藤およびBは起訴され、それぞれ実刑(2年なにがし)になる。控訴も棄却。
この起訴から控訴までの間に、高名なヤメ検弁護士でMという男のことが出て来て、この本では白馬の騎士の如く検察を抑えたかの如く記されているのだが、Mが執行猶予を取る前提で認めるべきは認めよと指南したのだが、判決は実刑で終わり、その後Mは代理人を辞任してしまう。
この元検察大物ヤメ検Mのことは、以下の郷原氏のブログで、とんでもないクワセ者だという評価が記されている。
郷原信郎が斬る 佐藤真言氏の著書『粉飾』で明らかになった「特捜OB大物弁護士」の正体
投稿日: 2013年4月8日 作成者: nobuogohara
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#【書評】四〇〇万企業が哭いている #中小企業の7割は何らかの粉飾決算の実態にある #正義の味方?ヤメ検M