ＭＴにおけるギヤ抜け防止・チャンファとは？

　ＭＴのシフト操作において、シフトフォークの前後の動きはフォークシャフトに用意された３つの凹みと、その凹みにスプリングで押し付けられた鋼球（ディテントボール）により、節度感を生み出している。ただし、このディテント効果を過大に大きくするとシフト操作が大きくなり過ぎるため、適度な節度感を前提となる。

　従って、急加速したり急減速したりとギヤに大きな力が働き、しかもギヤ機構を構成する軸受けやスラストクリアランスが大きめになったりすると、ギヤ側はスリーブスプラインを押し戻す様な力が働きギヤ抜けが生じてしまう。

　ここにチャンファと云われる、溝を傾斜させる加工が行われているところは着目点だろう。一般にチャンファとは、機械工で外形角（すみやに施される面取り加工のことを呼ぶらしい。似た様なものに、内面の角（すみ）にＲ加工を施す角Ｒというものがある。外面の角は、その物体の破損だとか噛み合うギヤなど他物への加害性を防ぐもので、内面の角Ｒは応力集中による疲労破壊を防止する目的を持つと知る。ＭＴでは、この傾斜溝加工であるチャンファの働きにより、力が働いている程、スリーブが溝から押し戻されるのを防いでいる。