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日本が「法治国家崩壊状態」になったウラ側にある「ヤバすぎる密約」

2024-07-29 | コラム
日本が「法治国家崩壊状態」になったウラ側にある「ヤバすぎる密約」
7/29(月) 7:05配信 現代ビジネス

日本には、国民はもちろん、首相や官僚でさえもよくわかっていない「ウラの掟」が存在し、社会全体の構造を歪めている。

そうした「ウラの掟」のほとんどは、アメリカ政府そのものと日本とのあいだではなく、じつは米軍と日本のエリート官僚とのあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としている。

『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』では、最高裁・検察・外務省の「裏マニュアル」を参照しながら、日米合同委員会の実態に迫り、日本の権力構造を徹底解明する。

*本記事は矢部 宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)から抜粋・再編集したものです。

国家は密約と裏マニュアルで運営する
第4章で、日米合同委員会という「リモコン装置」の役割は、

「米軍が「戦後日本」において、占領期の特権をそのまま持ち続ける」

ところにあると書きました。

では、米軍が持っていたその「占領期の特権」とは、いったいどんなものだったのでしょう。ここでもう一度整理しておくと、その代表的なものは、次のふたつになります。

⑴ 米軍関係者が日本の法によって裁かれないための「裁判権」

⑵ 米軍が日本の国土全体を自由に使用するための「基地権」

にわかには信じられないかもしれません。

「たしかに占領中は、そうした権利を米軍は持っていたかもしれないけれど、それを現在まで持ち続けているなんて、いくらなんでも、それはありえないでしょう?」

そう思われても当然です。

しかしそのことの裏付けは、とても簡単にできるのです。

なぜ米兵の犯罪は、いつもモメるのか
みなさんもよくテレビなどで、米兵による犯罪についてのニュースをご覧になると思います。

しかし、多くの方は、

「なんでいつも同じようなことでモメているのか、よくわからない」

と思われているのではないでしょうか。

「第一次裁判権」とか「公務中」といった耳慣れない言葉が飛び交い、逮捕された犯人についての続報もほとんどなく、結局何がどうなったのかわからない。

なぜ、そうした事態が繰り返されるのかといえば、それは現在の日米間の取り決め(「新安保条約+地位協定」)の条文に書かれている内容が、実際に運用されている取り決めの内容と、大きくズレているからなのです。

つまり、「新安保条約+地位協定」ではなく、安保改定(1960年)以前の取り決めである「旧安保条約+行政協定」の内容が、じつは密約によって現在も維持されているのです。しかし、見かけの条文は変わっているので、現実に起きている出来事の推移を、だれもスッキリと説明することができない。

そのため、大きな混乱が生まれてしまうのです。

そのカラクリについて、これからご説明します。

「逮捕したら、すぐに米軍に引き渡せ」
もともと、

「米軍関係者が日本の法によって裁かれない権利」(裁判権)も、

「米軍が日本の国土全体を自由に使用できる権利」(基地権)も、

最初は旧安保条約と行政協定のなかに、はっきりと書かれていました。

まず裁判権のほうから説明すると、行政協定には当初次のような条文があったのです。

「日本の当局は、米軍基地の外での犯罪については、米軍関係者を逮捕することができる。ただし逮捕したあとは、すぐにその身柄を米軍に引き渡さなければならない」

(第17条3項(a)要約)

つまり日本の警察は、犯人を逮捕することはできるが、その後、勾留したり、尋問したりする権利はないということです。

米軍関係者の犯罪が起こると、すぐに「第一次裁判権が云々」とよくわからない報道がされるのですが、基本的には現在でもまだ右の条文が生きていると考えると、事件の本質がとてもシンプルに見えてきます。

密約の方程式
ではなぜ、そんな理不尽な取り決めを結んでしまったのか。

その事情は次の通りでした。

裁判権については、まず行政協定をめぐる独立直前の日米交渉のなかで、当時アメリカとヨーロッパ諸国がすでに結んでいた「NATO地位協定」が発効したら、それにならって日本との行政協定も書きなおす。だからそれまでは、

「米軍関係者の犯罪の裁判権は、すべて米軍側がもつ」(第17条2項 要約)

ということにしてほしいとアメリカ側から言われ、その要望を受け入れていたのです。

つまり、完全な治外法権ということです。

しかし、もちろんそれでは植民地そのものですから、1953年8月にNATO地位協定が発効すると、翌9月、日本の行政協定の裁判権条項(第17条)も約束どおり改定されることになりました。

ごく簡単に言えばこのとき、NATO地位協定を見本として、米兵の「公務中〔=勤務中〕の犯罪」についてはこれまでどおり米軍が裁判権を持つが、その一方、「公務外〔=勤務外〕の犯罪」については基本的に日本側が裁判権を持つという、新たな取り決めが結ばれることになったのです。

けれども現在まで、米兵犯罪についての実態は基本的に変わっていません。たとえばレイプ事件を例にとってみると、よほど凶悪なケースか、沖縄などで県警や地元の新聞社がよほど頑張ったときだけ、犯人が勾留されて尋問され、裁判が行われることになる。

いったいそれはなぜなのか。

ここで覚えておいてほしいのが、「密約の方程式」という言葉です(私が考えました)。

つまりこの1953年の「行政協定の改定」のように、米軍の特権についての条文が、米軍側に不利な方向で変更されたとき、そのウラ側にはほぼ間違いなく、日米合同委員会などで結ばれた密約が存在する。そして、米軍の権利はほとんど損なわれないようになっているのです。

それを式のかたちであらわすと、

「古くて都合の悪い取り決め」=「新しくて見かけのよい取り決め」+「密約」

ということになります。米軍問題を考えるときに、これは非常に威力を発揮する方程式ですので、ぜひ覚えておいてください(ちなみに第2章で見た、米軍の「財産」についての治外法権を認めた密約も、最初は行政協定の条文にそのまま書かれていたものでした。それがこの1953年の改定で同じく正規の条文からは消え、代わりに密約として新たに結ばれることになったのです)。

裁判権放棄密約と身柄引き渡し密約

米軍関係者の犯罪について、なぜ行政協定の条文が改善されても実態が変わらなかったかというと、そのウラ側で、日米合同委員会の秘密協議によって、次のふたつの密約が結ばれていたからでした。

○ 「裁判権放棄密約」〈日本側はいちじるしく重要な事件以外は、裁判権を行使しない〉(1953年10月28日)

○ 「身柄引き渡し密約」〈米軍関係者による犯罪が、公務中に行われたものかどうかわからないときは、容疑者の身柄を米軍に引き渡す〉(1953年10月22日)

このふたつの密約が日米合同委員会で結ばれたことで、行政協定の裁判権条項(第17条)について、

「もとの条文」=「改定された条文」+「裁判権放棄密約」+「身柄引き渡し密約」

という「密約の方程式」が完成し、米兵犯罪の多くが以前と同じく、見逃がされることになったのです。

裁判権放棄密約とは、「米軍関係者の犯罪については、いちじるしく重要な事件以外は裁判をしない」ことを密室で合意したものですが、実際に何が「いちじるしく重要か」「重要でないか」を決めるのは、米軍側が決定権を持つ日米合同委員会なわけですから、ほとんどの犯罪が立件されなくなるのは当然です。

一方、身柄引き渡し密約のほうも、本当にひどい取り決めです。

「公務中か」「公務外か」の決定は、基本的に米軍側が行います。そして公務中だった場合は、日本には裁判権がない。だからその時点で米軍にとって、すでに圧倒的に有利な取り決めのはずなのに、それに加えて、はっきり「公務中」といえないケースまで、容疑者の身柄を米軍側に引き渡すというのですから、もうメチャクチャです。

その結果、米軍関係者の犯罪を日本の警察に通報しても、先に米軍側が身柄を引き取りにきたら渡さなければならない。日本の警察が先に逮捕したときでも、確実に「公務外」だと証明できない限り、引き渡しを拒否することはできないのです。

私が最近おどろいたのは、日米合同委員会を取り上げた「報道ステーション」の特集(前出)のなかで、外務省(北米局日米地位協定室)の担当者がこの裁判権放棄密約について、

「否定するものがないので、いまも効力がある」

というコメントを出していたことです。

日本の裁判権を事実上放棄するこの密約について、外務省が真正面からそれを認めるとは、もはや隠すつもりもない、完全な「法治国家崩壊状態」ということなのでしょうか。

さらに連載記事<なぜアメリカ軍は「日本人」だけ軽視するのか…その「衝撃的な理由」>では、コウモリや遺跡よりも日本人を軽視する在日米軍の実態について、詳しく解説します。矢部 宏治

#日本が「法治国家崩壊状態」になったウラ側にある「ヤバすぎる密約」


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