私の思いと技術的覚え書き

歴史小説、映画、乗り物系全般、事故の分析好きのエンジニアの放言ブログです。

遅すぎた1万m迎撃機とエポック車開発者のこと

2019-08-26 | 車と乗り物、販売・整備・板金・保険
 Youtube を見ていて、「キ94・高々度戦闘機・・・若きエンジニア」というのを見ていて、先の大戦末期に次々と来襲し我が国を焦土と化して行くB29を迎撃せんとして、1万mという高高度戦闘機の開発に挑む若きエンジニアの話しを知りました。その名は、「長谷川龍雄」氏(故人)で、ゼロ戦開発の堀越次郎氏と同じ東京帝大・航空学科卒で立川飛行機に勤めた当時27才の若き主任エンジニアです。しかし、時既に遅く、ようやく試作機が完成し、試験飛行を行おうとする正にその日が8月15日となり、終戦を迎えることになったそうです。

 長谷川龍雄氏は、戦後トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)へ勤め、初代トヨエース(SKBトラック)を手始めに、初代パブリカ、S800、初代カローラ(KE10)、初代セリカ&カリーナ(TA12 & TA22)などの主査を歴任したことを、今更ながら知りました。同氏は、1972年同社常務に就任、最終的に専務取締役を経て退任されたという方です。2004年4月日本自動車殿堂入りを果たす。2008年4月29日に逝去、92才だったとのことです。

 初代カローラ、セリカとカリーナなど、ある意味トヨタ発展の基礎を固めるエポックなクルマを開発してこられたことに敬意を持つところです。

 ことほどかように航空機とクルマは関連性が高く、優秀な航空設計者が優秀なクルマの開発に関わる事例は、世界中に多くの事例があることが伺えます。ですから、私はクルマに大いなる関心を寄せると共に航空機にも関心を寄せ続けるのです。

 この長谷川龍雄氏ですが、幾つかの言葉と後継者に向けた指針としての10ヶ条を残していますので、以下に紹介してみます。

・何の不安もなく開発された製品はボンクラ製品だ。
・優秀なエンジニアとうのは一つのテリトリー(範囲)に長けていても威張れない。(広い知見が求められるということだろう)

後継者に向けた指針10ヶ条
①主査は常に広い知識、見識を学べ。
②主査は自分自身の方策を持つべし。
③主査は大きくかつよい網を張れ。
④主査はよい結果を得るために全知全能を傾注せよ。
⑤主査は物事を繰り返すことを面倒がってはならぬ。
⑥主査は自分に対して自信(信念)を持つべし。
⑦主査は物事の責任を他人のせいにしてはならぬ。
⑧主査と主査付は同一人格であらねばならない。
⑨主査は要領よく立ち回ってはならない。
⑩主査に必要な資質――知識、技術力、経験、洞察力、判断力、決断力、度量、感情的でなく、冷静であること、活力、粘り、集中力、統率力、表現力、説得力、柔軟性、無欲という欲(人格)。

※写真は愛知産業技術記念館で見た初代カローラ(KE10)のモノコックボデー下面


筆者注 
 クルマにおいてはフレームレスボデーをモノコック(一つの殻の意:仏語)と俗称するが、航空機の様な純粋なモノコックは成立しがたい。適宜、応力を受け止める平断面メンバー構造を組み合わせて、必要強度を生み出している。一方、衝突時の対応として、ある程度潰れることにより減速Gを加減し、しかも車室の生存空間を残すという思想も必要とされる。このKE10(1966年発売)では、既にそのことを意識した設計が見て取れる。
 車両前部は、フロントサイドメンバー根元をボデー車室の剛性の根幹を成す、サイドシル(ロッカーパネル)たるサイドメンバーに連続する工法を取っている。同じく、サイドフレーム前端に受けた衝突加重を、フロアに広く分散し伝える縦に連続するアンダーリインホースメント。フロントサイドフレーム上部のフェンダーエプロン部は、ストラットタワー前でアコーディオン状に潰れる狙いを持ち、凹凸の加工が入れられている。
 車両後部は、リヤサスペンションがリーフリジットであることもあるが、ほとんど縦の縦貫材はなく、正にモノコックとしてリヤボデーそのもので剛性を生み出す思想で、潰れ剛性としては弱くし、被突時の衝撃吸収性を高めている。なお、燃料タンクは、トランクルーム前方のシートバック裏に抱える、いわゆるランドセルタイプで、ボデーが潰れても、容易にタンクの変形が生じない位置に設定している。・・・などが見て取れる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。